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第一章 雑魚テイマーの嘆き
第22話 仮説
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「ねぇマー坊。モコちゃんと出会ったって言う洞窟ってどこなの?」
道案内する為に先導する僕に叔母さんがそう尋ねて来た。
僕が封印の間で光に包まれて意識を失った後に目覚めた場所はなんと森の東側、グレイスの街道の近くだったみたいだ。
だから森を横断して西側に向けて森の中を進んでいる。
「あれ? お姉さんには話したよね? ほら、山の西側にある崖になってる所の洞窟だよ」
初めてモコを連れて帰った時、夜遅くまで出会いから契約までの顛末を最後は叔母さんが引くぐらいのテンションで何度も叔母さんに話したんだ。
だから場所は知ってるはずなんだけど……?
「そうなんだけどねぇ、実は私が現役時代ここには何度も足を運んだ事が有るんだけど、そこに洞窟が有ったなんて記憶が無いのよ」
「えぇっ? 本当?」
「西側の崖……? う~む……。それ間違い無いのか?」
「えぇ? サンドさんまで? 入り口は大人が楽々入れるくらい大きいのに。中だって結構広いよ」
「いやな? 俺も小さい頃からこの森や山は遊び場みてぇなものだったが、崖ん所にそんな洞窟があるなんてのは知らねぇんだよ」
「えーーー? そんなぁ~。じゃあ最近出来たのかな? あっそうか! きっとライアの両親が掘ったんだよ」
「あ~それはあるかもな。なら俺達が知らなくてもおかしくねぇのか」
きっとそうだよ。
だってモコはそこの洞窟の奥に隠されてたんだから。
確かコボルトって穴掘り名人なんだよね。
有名な天然ダンジョンの幾つかは実は昔コボルトの巣だったなんて話もあるくらいだ。
「う~ん。そうなんだけどね~。モコちゃんが……」
「ライアでち」
「あぁごめんなさい。つい癖で。ライアちゃんがずっと成長しない事が気になってね。なにか生まれた環境に原因が有るのかもって思って先月辺りに助手に巣を調べて来て貰おうと頼んでみたのよ」
そう言えば、叔母さんも最近ライアの成長の遅さに首捻ってたな。
魔物学者として調べたくなったのか。
しかし、生まれた場所の環境が影響するかもなんて思った事も無かったな。
さすが学者先生だ。
だって僕なんて契約主の僕が弱すぎるから成長しないのかもって思ってたもん。
「で、どうだったの? 何か分かった?」
「どうもこうもないのよ。そんな洞窟なんて見つからなかったって報告だったわ」
え? 見つからなかった? そんな馬鹿な。
僕達なんて何回も行っているのに。
「西側の崖だよ? 大人が楽々入れるくらい大きな穴なのに見つからなかったの?」
「えぇ、崖は有ったけど洞窟なんて無かったって。それで近い内にマー坊と一緒に行こうと思ってたの。こんな形で叶うとは思ってなかったけどね」
う~ん、その助手さん本当にこの森まで来たのかな?
もしかしてサボってたんじゃないの?
「分かった。僕が案内するよ」
僕は叔母さんにモコの生まれた場所。
そして、従魔術の封印の祭壇への入り口を見せてあげるべく森の中先頭を切って歩く。
◇◆◇
「あ、あれ?」
西側の崖に到着した僕は目の前の光景に思わず固まってしまった。
道を間違えたのかな?
いやいや、そんな筈は……。
「マー坊どうしたの? 洞窟は何処?」
後ろから叔母さんが不思議そうな声を出して僕に尋ねてくる。
『洞窟は何処?』?
それは僕も知りたいよ。
「ない……。確かにここに洞窟が有ったのに……」
道を間違えたのかと思ったけど、何度も来た場所だから見間違う筈もない。
だって……。
「う~む。ここに有る足跡はマーシャルのか? しかし、こりゃ一体どう言う事だ?」
サンドさんが洞窟の入り口が有った筈の場所にしゃがみ込んで首を捻っている。
それもその筈。
だって目の前の壁に向かって雨の中、泥濘んだ地面を走った証が残っているんだもん。
「あら本当ね。足跡が崖まで続いてる。この凹み具合はかなりのスピードで走ってる踏み込みだわ。このスピードなら壁に激突しちゃうわね。しかも最後なんて足跡半分崖に埋まってる……? どう言う事なの?」
職業柄なのか、叔母さんはまるで斥候の様に地面に残った僕の足跡の痕跡から当時の状況を推測していた。
最後の言葉には僕も驚いて駆け寄ったけど、確かに僕の足跡は半分くらい目の前の崖の中に埋まっていた。
こんな事物理的に有り得ない。
「ここは綺麗ぇな一枚岩の岩壁だ。こりゃ崖崩れや誰かが埋めたって線は無ぇな。周囲にマーシャル以外の足跡も無ぇし、もしかして離れた場所から土魔法で塞いだか? 封印の間のテレポートを隠す為に? いや、残留魔力の痕跡は感じない……か。少なくともここ数日中に魔法で穴を塞いだって事はないだろうな」
そう言ってサンドさんは崖を叩いて奥に空洞が無いかを一応確かめている。
しかし、その音は鈍くその向こうに空洞が有ったとは思えない。
僕も記憶からあの洞窟の入り口の幅付近に継ぎ目が無いか調べたけど、そんな形跡など微塵もなかった。
「お姉さん、どうしたの? ずっと考え込んで」
暫くサンドさんと一緒に崖を調べていたけど、いつの間にか僕達の後ろに立ったまま俯いている叔母さんに気付き話し掛けてみた。
どうやら考え事をしているみたいで左手を顎に当てブツブツと何かを喋っているようだ。
声を掛けたのに気付かないほど集中している。
「お姉さん? どうしたのってば」
「え? あっ、どうしたのって……ど、どうしたの?」
少し大きめの声で呼びかけるとピクンと叔母さんが顔を上げて目を丸くしている。
いつもなら僕と喋りながらでも他の事を出来る人なのに、まるで気付かないなんて。
余程深く考え事をしていたんだろうか?
「もう、それはこっちのセリフだよ。声を懸けたのにずっと反応無いんだもん」
「ごめんごめん。ちょっと頭の中で組み立てていたのよ」
「組み立ててた? なにを?」
「勿論仮説をよ」
叔母さんは人差し指をピンと立てウィンクしながらそう言った。
なんだか少し興奮気味だ。
仮説? 僕とサンドさんとライアは叔母さんの言葉と態度に首を捻る。
「どう言う事だ。ティナ? 何か知ってるのか?」
サンドさんが興味深そうに叔母さんに尋ねた。
その言葉に叔母さんはふふんと鼻を鳴らした。
「今言った様にまだ仮説よ。それを証明するにはマー坊に幾つか確認を取らなきゃいけないの」
「確認ってなにを?」
良い笑顔を浮かべ立てた指でビシッと僕を指さした叔母さんに問い掛けた。
叔母さん、指で人を差しちゃいけないよ?
「まず最初に仮説の元となった話をするわね。マー坊のその赤く光る契約紋。これは従魔術の奥義が封印されたって言う伝承には出て来ないの」
「出て来ないってどう言う事?」
僕は皆に見えるように左手の甲を向けた。
相変わらず赤く光っている。
「要するにそれまでのテイマーの手が赤く光ってたって記述が無いって事よ」
叔母さんの言葉に僕は自分の左手の甲を見詰める。
封印した伝承に出て来ないってどう言う事?
わざわざ書く必要が無かったとかじゃないの?
「数多の有名テイマー。そう呼ばれる前の従魔術師達の活躍譚でも、一切その赤い契約紋の記述は出て来ない。これっておかしくない? だって赤く光ってるのよ? そんな一目で分かる様な目立つモノ、私が物語を書くんなら話を盛ってでも前面に押し出して描写するわよ」
た、確かに……。
僕もそれなりに小さい頃から従魔術の英才教育を受けて来たけど、こんなの見た事も聞いた事もないや。
天才と言われる母さんでさえ、その形や色に違いは無いし。
契約紋……、これは魔力が手に浮き上がったモノで、別に手に入れ墨や落書してる訳じゃないんだ。
魔法使いと呼ばれる者達は、それぞれ自身の適性に応じて進む道を決めるんだけど、その際に自身の魔力を使い身体に穴を開ける。
穴と言っても物理的にじゃないよ。
概念的にって事。
その穴を通して魔力を外に放出し魔法を発動させるんだ。
魔力が有れば誰でも使える初歩魔法はその必要はないけど、黒魔術、治癒魔術、精霊魔術、付与魔術、そして従魔術。
それを極めようとする場合には、それぞれの魔術毎に決まった形の紋章を決まった身体位置に穴として開通させる必要がある。
これが結構大変で、魔力が有っても穴を開けられない人も大勢居るんだ。
こんな落ちこぼれの僕でも自分の身体に契約紋を開通で来たのは、それなりに才能が有ったって事なんだよね。
また従魔術の場合は契約紋って呼ばれているけど、他の魔術の紋章にはそれぞれ別の名前が有ったりする。
あと一度に開ける事が可能な紋章は一人に一つだけ。
御伽噺には複数開けた人が出てくるけどそれは御伽噺だからだ。
叔母さんが言っていたように話を盛ってるんだろう。
紋章は変更する事も出来るけど、一度固定した概念を変えるってのは実は失敗のリスクが高く、下手したら元の紋章まで開く事が出来なくなるみたい。
それで魔術師廃業したって言う話も何度か冒険者からの噂話で聞いたっけ。
そして叔母さんの話の中で重要なのが、その紋章はどれだけ優れていようともどれだけ劣っていようともその姿形に違いはないって事なんだ。
「じゃあ、なんで僕の手は赤く光ってるの?」
「私ね、一度赤い契約紋について書かれた文献を見た事が有るのよ」
「えぇっ! なんだって? でも今さっき見た事が無いって言ってたじゃないか」
「あら? さっきは従魔術師達の活躍譚でって言ったのよ?」
え? そうだっけ……? あっそうだった。
あくまで叔母さんが言ったのはそう言う活躍するお話に出て来ないのはおかしいって話だったか。
複数の紋章持ちの御伽噺の様に話を盛るなら形や色が違う紋章が出てきても良いのに、従魔術以外の魔法使いでもそんな描写は聞いた事無いもんね。
けど、叔母さんはそれを見たって事だけど、どう言う事だろう?
「ならどこに書いてあったの?」
僕の問い掛けに叔母さんは少し得意気な顔をして目を瞑った。
そして目を開いたかと思うと嬉しそうに口を開いた。
「それはね。うちの家に代々伝わる禁書に載っている従魔術の始祖に関する記述よ」
道案内する為に先導する僕に叔母さんがそう尋ねて来た。
僕が封印の間で光に包まれて意識を失った後に目覚めた場所はなんと森の東側、グレイスの街道の近くだったみたいだ。
だから森を横断して西側に向けて森の中を進んでいる。
「あれ? お姉さんには話したよね? ほら、山の西側にある崖になってる所の洞窟だよ」
初めてモコを連れて帰った時、夜遅くまで出会いから契約までの顛末を最後は叔母さんが引くぐらいのテンションで何度も叔母さんに話したんだ。
だから場所は知ってるはずなんだけど……?
「そうなんだけどねぇ、実は私が現役時代ここには何度も足を運んだ事が有るんだけど、そこに洞窟が有ったなんて記憶が無いのよ」
「えぇっ? 本当?」
「西側の崖……? う~む……。それ間違い無いのか?」
「えぇ? サンドさんまで? 入り口は大人が楽々入れるくらい大きいのに。中だって結構広いよ」
「いやな? 俺も小さい頃からこの森や山は遊び場みてぇなものだったが、崖ん所にそんな洞窟があるなんてのは知らねぇんだよ」
「えーーー? そんなぁ~。じゃあ最近出来たのかな? あっそうか! きっとライアの両親が掘ったんだよ」
「あ~それはあるかもな。なら俺達が知らなくてもおかしくねぇのか」
きっとそうだよ。
だってモコはそこの洞窟の奥に隠されてたんだから。
確かコボルトって穴掘り名人なんだよね。
有名な天然ダンジョンの幾つかは実は昔コボルトの巣だったなんて話もあるくらいだ。
「う~ん。そうなんだけどね~。モコちゃんが……」
「ライアでち」
「あぁごめんなさい。つい癖で。ライアちゃんがずっと成長しない事が気になってね。なにか生まれた環境に原因が有るのかもって思って先月辺りに助手に巣を調べて来て貰おうと頼んでみたのよ」
そう言えば、叔母さんも最近ライアの成長の遅さに首捻ってたな。
魔物学者として調べたくなったのか。
しかし、生まれた場所の環境が影響するかもなんて思った事も無かったな。
さすが学者先生だ。
だって僕なんて契約主の僕が弱すぎるから成長しないのかもって思ってたもん。
「で、どうだったの? 何か分かった?」
「どうもこうもないのよ。そんな洞窟なんて見つからなかったって報告だったわ」
え? 見つからなかった? そんな馬鹿な。
僕達なんて何回も行っているのに。
「西側の崖だよ? 大人が楽々入れるくらい大きな穴なのに見つからなかったの?」
「えぇ、崖は有ったけど洞窟なんて無かったって。それで近い内にマー坊と一緒に行こうと思ってたの。こんな形で叶うとは思ってなかったけどね」
う~ん、その助手さん本当にこの森まで来たのかな?
もしかしてサボってたんじゃないの?
「分かった。僕が案内するよ」
僕は叔母さんにモコの生まれた場所。
そして、従魔術の封印の祭壇への入り口を見せてあげるべく森の中先頭を切って歩く。
◇◆◇
「あ、あれ?」
西側の崖に到着した僕は目の前の光景に思わず固まってしまった。
道を間違えたのかな?
いやいや、そんな筈は……。
「マー坊どうしたの? 洞窟は何処?」
後ろから叔母さんが不思議そうな声を出して僕に尋ねてくる。
『洞窟は何処?』?
それは僕も知りたいよ。
「ない……。確かにここに洞窟が有ったのに……」
道を間違えたのかと思ったけど、何度も来た場所だから見間違う筈もない。
だって……。
「う~む。ここに有る足跡はマーシャルのか? しかし、こりゃ一体どう言う事だ?」
サンドさんが洞窟の入り口が有った筈の場所にしゃがみ込んで首を捻っている。
それもその筈。
だって目の前の壁に向かって雨の中、泥濘んだ地面を走った証が残っているんだもん。
「あら本当ね。足跡が崖まで続いてる。この凹み具合はかなりのスピードで走ってる踏み込みだわ。このスピードなら壁に激突しちゃうわね。しかも最後なんて足跡半分崖に埋まってる……? どう言う事なの?」
職業柄なのか、叔母さんはまるで斥候の様に地面に残った僕の足跡の痕跡から当時の状況を推測していた。
最後の言葉には僕も驚いて駆け寄ったけど、確かに僕の足跡は半分くらい目の前の崖の中に埋まっていた。
こんな事物理的に有り得ない。
「ここは綺麗ぇな一枚岩の岩壁だ。こりゃ崖崩れや誰かが埋めたって線は無ぇな。周囲にマーシャル以外の足跡も無ぇし、もしかして離れた場所から土魔法で塞いだか? 封印の間のテレポートを隠す為に? いや、残留魔力の痕跡は感じない……か。少なくともここ数日中に魔法で穴を塞いだって事はないだろうな」
そう言ってサンドさんは崖を叩いて奥に空洞が無いかを一応確かめている。
しかし、その音は鈍くその向こうに空洞が有ったとは思えない。
僕も記憶からあの洞窟の入り口の幅付近に継ぎ目が無いか調べたけど、そんな形跡など微塵もなかった。
「お姉さん、どうしたの? ずっと考え込んで」
暫くサンドさんと一緒に崖を調べていたけど、いつの間にか僕達の後ろに立ったまま俯いている叔母さんに気付き話し掛けてみた。
どうやら考え事をしているみたいで左手を顎に当てブツブツと何かを喋っているようだ。
声を掛けたのに気付かないほど集中している。
「お姉さん? どうしたのってば」
「え? あっ、どうしたのって……ど、どうしたの?」
少し大きめの声で呼びかけるとピクンと叔母さんが顔を上げて目を丸くしている。
いつもなら僕と喋りながらでも他の事を出来る人なのに、まるで気付かないなんて。
余程深く考え事をしていたんだろうか?
「もう、それはこっちのセリフだよ。声を懸けたのにずっと反応無いんだもん」
「ごめんごめん。ちょっと頭の中で組み立てていたのよ」
「組み立ててた? なにを?」
「勿論仮説をよ」
叔母さんは人差し指をピンと立てウィンクしながらそう言った。
なんだか少し興奮気味だ。
仮説? 僕とサンドさんとライアは叔母さんの言葉と態度に首を捻る。
「どう言う事だ。ティナ? 何か知ってるのか?」
サンドさんが興味深そうに叔母さんに尋ねた。
その言葉に叔母さんはふふんと鼻を鳴らした。
「今言った様にまだ仮説よ。それを証明するにはマー坊に幾つか確認を取らなきゃいけないの」
「確認ってなにを?」
良い笑顔を浮かべ立てた指でビシッと僕を指さした叔母さんに問い掛けた。
叔母さん、指で人を差しちゃいけないよ?
「まず最初に仮説の元となった話をするわね。マー坊のその赤く光る契約紋。これは従魔術の奥義が封印されたって言う伝承には出て来ないの」
「出て来ないってどう言う事?」
僕は皆に見えるように左手の甲を向けた。
相変わらず赤く光っている。
「要するにそれまでのテイマーの手が赤く光ってたって記述が無いって事よ」
叔母さんの言葉に僕は自分の左手の甲を見詰める。
封印した伝承に出て来ないってどう言う事?
わざわざ書く必要が無かったとかじゃないの?
「数多の有名テイマー。そう呼ばれる前の従魔術師達の活躍譚でも、一切その赤い契約紋の記述は出て来ない。これっておかしくない? だって赤く光ってるのよ? そんな一目で分かる様な目立つモノ、私が物語を書くんなら話を盛ってでも前面に押し出して描写するわよ」
た、確かに……。
僕もそれなりに小さい頃から従魔術の英才教育を受けて来たけど、こんなの見た事も聞いた事もないや。
天才と言われる母さんでさえ、その形や色に違いは無いし。
契約紋……、これは魔力が手に浮き上がったモノで、別に手に入れ墨や落書してる訳じゃないんだ。
魔法使いと呼ばれる者達は、それぞれ自身の適性に応じて進む道を決めるんだけど、その際に自身の魔力を使い身体に穴を開ける。
穴と言っても物理的にじゃないよ。
概念的にって事。
その穴を通して魔力を外に放出し魔法を発動させるんだ。
魔力が有れば誰でも使える初歩魔法はその必要はないけど、黒魔術、治癒魔術、精霊魔術、付与魔術、そして従魔術。
それを極めようとする場合には、それぞれの魔術毎に決まった形の紋章を決まった身体位置に穴として開通させる必要がある。
これが結構大変で、魔力が有っても穴を開けられない人も大勢居るんだ。
こんな落ちこぼれの僕でも自分の身体に契約紋を開通で来たのは、それなりに才能が有ったって事なんだよね。
また従魔術の場合は契約紋って呼ばれているけど、他の魔術の紋章にはそれぞれ別の名前が有ったりする。
あと一度に開ける事が可能な紋章は一人に一つだけ。
御伽噺には複数開けた人が出てくるけどそれは御伽噺だからだ。
叔母さんが言っていたように話を盛ってるんだろう。
紋章は変更する事も出来るけど、一度固定した概念を変えるってのは実は失敗のリスクが高く、下手したら元の紋章まで開く事が出来なくなるみたい。
それで魔術師廃業したって言う話も何度か冒険者からの噂話で聞いたっけ。
そして叔母さんの話の中で重要なのが、その紋章はどれだけ優れていようともどれだけ劣っていようともその姿形に違いはないって事なんだ。
「じゃあ、なんで僕の手は赤く光ってるの?」
「私ね、一度赤い契約紋について書かれた文献を見た事が有るのよ」
「えぇっ! なんだって? でも今さっき見た事が無いって言ってたじゃないか」
「あら? さっきは従魔術師達の活躍譚でって言ったのよ?」
え? そうだっけ……? あっそうだった。
あくまで叔母さんが言ったのはそう言う活躍するお話に出て来ないのはおかしいって話だったか。
複数の紋章持ちの御伽噺の様に話を盛るなら形や色が違う紋章が出てきても良いのに、従魔術以外の魔法使いでもそんな描写は聞いた事無いもんね。
けど、叔母さんはそれを見たって事だけど、どう言う事だろう?
「ならどこに書いてあったの?」
僕の問い掛けに叔母さんは少し得意気な顔をして目を瞑った。
そして目を開いたかと思うと嬉しそうに口を開いた。
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