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第一章 雑魚テイマーの嘆き
第16話 誤解
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「ちょ、ちょっと待って? お姉さん何言ってるの?」
あれから三日経っただって?
そんなバカな。
僕が困惑していると叔母さん達は眉間に皺を寄せて訝しげな顔をした。
「何言ってるってのはこっちの方よ。マー坊がモコを追って飛び出した後、いつまで経っても帰ってこない。しかも大雨が振り出すじゃない。もう本当に心配で心配で夜も眠れなかったのよ。そしたら次の日サンドが尋ねて来たのよ。マー坊とモコは無事かって」
「あぁ、乗合馬車の御者と世間話してたらな、昨日別れ道ん所で少年が足を引き摺りながら森に向かったのを見たって聞いたもんだからよ。慌ててティナん家に帰ってきてるか確認しに行ったら、まだだって事でな。すぐに準備してお前さんを探しに来たって訳だ」
「え? え?」
馬から降りたサンドさんも叔母さんの説明を継いだ形で状況を説明してくれた。
だけどその説明をされても意味が分からない。
しかし、二人が嘘を付いている様にも見えなかった。
と言う事は本当にあれから三日経ったって言うの?
僕の感覚では封印の間で意識が無くなってさっき目が覚めたところだから一日も経っていない感じなんだけど。
ライアはどうなんだろう?
僕が意識を失っている間ずっと僕を起こそうとしてくれていたのか?
「この三日ずっと雨続きだったし、雨に濡れてどこかで震えているんじゃないかって心配してたのよ。それに危険な魔物は居ないこの森でもマー坊ったら武器も持たずに飛び出したからね。どこかで襲われ……って、実際襲われてたわね。本当に間に合って良かったわ」
「岩石ウサギが一匹とは言え、当たり所が悪かったら大怪我するからな。襲って来たのが群れじゃなくて良かったぜ」
「え、あっ! そうだ。群れにも襲われたんだよ。10匹くらいの群れに」
頭の整理はついてないけど、サンドさんの言葉で群れに襲われたことを思い出した。
岩石ウサギは一匹では弱くても群れになると巧みな連携で獲物を追い詰めて狩りをする本当に危険な存在だ。
僕も嫌と言う程思い知った。
威力マシマシの契約の呪文が効いてなかったら今頃僕達はあいつらの胃袋の中だもんね。
本当に運が良かったよ。
早くギルドに報告して討伐隊を出して貰わないと犠牲者が出てしまう。
「本当か! よく無事だったな」
「まぁ、何処か怪我はない?」
「うん、僕達は無事だよ。それよりこの事を早くギルドに報告しないと」
「あぁ群れの事は……。え? 僕達? あっ! そう言えばモコは? モコは無事なの? ……ん?」
叔母さんは群れの事で何かを言おうとしたんだけど、僕が『僕達』と言った事でモコの事を思い出したようだ。
きょろきょろと辺りを見回しながらモコの事を聞いて来たんだけど、その視線が僕の後方の有る一点を見た途端ぴたりと止まってしまった。
その後ろでサンドさんも同じ方を見て止まっている。
「ど、どうしたの? 二人とも?」
二人に理由を尋ねても固まったままだった。
そしてどんどんと表情が消えていく。
叔母さんなんてなんだか顔面蒼白になっているし、なんでそんな顔をしているんだろう?
二人は何を見ているんだ?
「マー坊? 誰? その子……」
僕の後ろを見て固まっていた叔母さんが、その視線だけをギロリと僕の方に戻したかと思うと、とても低い声でそう言って来た。
目付きが鋭くて怖い!!
なんでそんな目で見るの?
僕の後にはモコが居るだけじゃないか……あっ。
思い出した!
今僕の後ろに居るのはもこもこふわふわなモコじゃなくて、パッと見可愛い幼女のライアだった!
こんなに早く叔母さんと再会するなんて思っても無かったから、まだ名前を偽装しただけで叔母さんに会わせる時の作戦を考えてなかったよ。
モコだってバレないようにライアと口裏合わせしないといけないのに……どうしよう?
僕がライアの正体をどうやって誤魔化そうと考えていると叔母さんがガバッと両肩を掴んで来た。
イタタタ! なんでそんな強く握るの? 小手が食い込んでむっちゃ痛い!
顔が真剣だし何をそんなに怒ってるんだよ。
「お、お姉さんどうしたの? 肩痛いって」
「その子どうしたのっ! どこから連れて来たの?」
なんだか尋問みたいな勢いで問い詰めれるてるんだけど。
何をそんなに怒ってるの?
あっ! 叔母さん魔物学者だから、もしかしてライアを見て希少な魔物に似ているから興奮しているのか。
見付けた場所に連れて行って! とか言い出すのかも。
それとも、実はモコだってバレちゃったんだろうか?
耳とか毛の色とか面影残ってるし、分かる人が見たら見分けがつくのかな?
けど、さすがに姿が変わったなんて事は常識が邪魔するだろうから、カマをかけてるのかもしれない。
どっちにしても、とりあえず落ち着いて貰わないと誤魔化すものも誤魔化せないよ。
「お、落ち着いてお姉さん」
「これが落ち着いていられますか! 誘拐は犯罪よ? しかもそんな恰好させて連れまわすなんて!」
えーーーー!? 何言ってるの叔母さん!
叔母さんの口から出た言葉に頭が真っ白になった。
誘拐? そんな恰好?
どう言う事? ライアの正体が分かったんじゃないの?
叔母さんが言った言葉の意味が分からない僕は、首を少し後ろに向け横目でライアの方を見る……。
「あぁ……」
僕は一瞬で叔母さんが言っている事を理解した。
今僕の後ろに居るライアは、まだへたり込んでいたままだ。
それだけだったら良かったんだけど、どうも目の前で繰り広げられた怒涛の展開に理解が追い付いていないようだった。
そして、その不安な気持ちの表れからか、僕が着せてあげた服の裾をぎゅっと掴んで胸元まで捲り上げてニギニギと横に引っ張ったりしながら揺らしていた。
……うん、そうだよ、元のモコならそんな仕草も問題無かった。
もこもこほわほわなコボルトボディがチラ見するだけなんだからね。
けど、今のライアの体は手足や耳以外は普通の女の子にしか見えないんだ。
そう、裸に僕の上着を着ただけの女の子。
それなのにそんな風に服を捲り上げたりなんかすると……、そのビジュアルはヤバいなんてものじゃない。
アウトだよ、これ完全にアウトだよ。
「ち、違うってお姉さん! 誘拐なんてしていないって!」
「嘘おっしゃい! その子が着ているのはマー坊の服じゃない! お姉さん悲しいわ。マー坊がこんな変態だなんて! ううぅ、預かっている身として姉さんになんて説明したらいいの?」
全く僕の話を聞かない叔母さんは、どんどんと勝手にヒートアップして行って、掴んだ僕の肩をぶんぶんと振りながらとんでもない事を言っている。
叔母さん落ち着いてーーー! 痛いし目が回るーーー!
「パパをいじめちゃらめーー!」
ライアは突然そう叫びながら立ち上がり、叔母さんの足に飛び付いた。
暴走した叔母さんに問い詰められている僕を助けようと思ったんだろう。
さすがの叔母さんもこのライアの行動に驚いて動きを止めた。
そし足元で見上げているライアの顔をじっと見詰めている。
ふぅ……なんとか落ち着いてくれたかな?
これでなんとか話が出来そうだ。
「お姉さん、あのね……」
「マー坊! あなたいつの間に子供を作ったの!!」
「えーーー!!」
話を聞いてもらおうとした途端、叔母さんは更にとんでもない事を言い出した。
今度は僕の子供だって? そんな訳ないじゃないか!
「ち、違うって、話を聞いてよ」
「何が違うの? 今この子、マー坊の事をパパって言ったじゃない! いつの間に? 相手は誰? ちゃんと認知してるの?」
そりゃ確かに「パパ」って言ったけどさ、相手とか認知とか何を言い出すんだよ。
叔母さん正気に戻ってーーー!!
「おいティナ! ちょっと落ち着けって! その子をよく見て見ろ。お前の専門じゃないか」
暴走した叔母さんの怒涛の追求に色々な意味で死にそうになっていた所にサンドさんが止めに入ってくれた。
その言葉に我に返った叔母さんは、サンドさんの言葉に促されるようにゆっくりとライアの方に目を向けた。
「あっ、この子人間じゃないわ。獣人……かしら?」
ほっ、やっと分かってくれたみたいだ。
次第に僕の肩に食い込んでいた指の力も緩まっていく。
「うん、そうなんだ。この子は僕の従魔。名前はライアって言うんだ」
「ライア……?」
叔母さんは僕の顔を見てそう呟いた。
そして、次第に顔が綻びだす。
「ど、どうしたの?」
「マー坊! やっと新しい魔物と契約出来たのね! 良かったじゃない!」
そう言って叔母さんは僕を抱きして締めてきた。
叔母さんは僕が新しい魔物と契約出来た事を喜んでくれているようだ。
鎧の事を忘れているようでそんなに強く抱き締められるととても痛いんだけど、叔母さんが喜んでくれている気持ちが嬉しくてそれ程気にならなかった。
これでなんとか誤魔化せたかな?
僕はやっと誤解が解けてライアの事も誤魔化せた事にホッと胸を撫で下ろした。
「そう言えばモコは? モコはどうしたの?」
突然叔母さんは顔を上げてそう尋ねてきた。
うっ、そうだよ。
まだ全然終わってなかったよ。
ライアの事を新しい従魔って誤魔化せてもモコが居ないのはおかしいよね。
なんて言ってモコが居ない事を誤魔化そう?
取り敢えず何か言わないと。
「モコは……、モコはね。と、遠い所に行ったんだ」
僕はそう言って空を見上げた。
その言葉を聞いた叔母さんとサンドさんは何かを察したのか顔を悲しみで歪ませている。
あっ、これだと死んじゃったって、取られちゃうか。
何か言わないとって思ったからポロッと言っちゃったけど不味いかな?
いや、この際それの方が良いかもしれないな。
探しに行こうとか言われなくて済むかも。
僕も叔母さん達の誤解に乗る事にして悲しみを耐える演技をする。
「そ、そんな。モコが……」
「くっ、岩石ウサギの群れにやられたのか……」
勝手に勘違いしてくれる二人。
どんどんその表情は暗く悲痛なものに変わっていった。
叔母さんなんかは目に涙を浮かべている。
死んだなんて騙すのは心が痛むけど仕方が無いよね。
ごめんね二人共。
「どちたの? あたちはここにいりゅお」
心の中で二人に謝ったその時、足元からこんな声が聞こえてきた。
あぁ、そうだよね。
打ち合わせもしてないし分からなくても仕方ないよ。
ライアは正直者だなぁ~。
あれから三日経っただって?
そんなバカな。
僕が困惑していると叔母さん達は眉間に皺を寄せて訝しげな顔をした。
「何言ってるってのはこっちの方よ。マー坊がモコを追って飛び出した後、いつまで経っても帰ってこない。しかも大雨が振り出すじゃない。もう本当に心配で心配で夜も眠れなかったのよ。そしたら次の日サンドが尋ねて来たのよ。マー坊とモコは無事かって」
「あぁ、乗合馬車の御者と世間話してたらな、昨日別れ道ん所で少年が足を引き摺りながら森に向かったのを見たって聞いたもんだからよ。慌ててティナん家に帰ってきてるか確認しに行ったら、まだだって事でな。すぐに準備してお前さんを探しに来たって訳だ」
「え? え?」
馬から降りたサンドさんも叔母さんの説明を継いだ形で状況を説明してくれた。
だけどその説明をされても意味が分からない。
しかし、二人が嘘を付いている様にも見えなかった。
と言う事は本当にあれから三日経ったって言うの?
僕の感覚では封印の間で意識が無くなってさっき目が覚めたところだから一日も経っていない感じなんだけど。
ライアはどうなんだろう?
僕が意識を失っている間ずっと僕を起こそうとしてくれていたのか?
「この三日ずっと雨続きだったし、雨に濡れてどこかで震えているんじゃないかって心配してたのよ。それに危険な魔物は居ないこの森でもマー坊ったら武器も持たずに飛び出したからね。どこかで襲われ……って、実際襲われてたわね。本当に間に合って良かったわ」
「岩石ウサギが一匹とは言え、当たり所が悪かったら大怪我するからな。襲って来たのが群れじゃなくて良かったぜ」
「え、あっ! そうだ。群れにも襲われたんだよ。10匹くらいの群れに」
頭の整理はついてないけど、サンドさんの言葉で群れに襲われたことを思い出した。
岩石ウサギは一匹では弱くても群れになると巧みな連携で獲物を追い詰めて狩りをする本当に危険な存在だ。
僕も嫌と言う程思い知った。
威力マシマシの契約の呪文が効いてなかったら今頃僕達はあいつらの胃袋の中だもんね。
本当に運が良かったよ。
早くギルドに報告して討伐隊を出して貰わないと犠牲者が出てしまう。
「本当か! よく無事だったな」
「まぁ、何処か怪我はない?」
「うん、僕達は無事だよ。それよりこの事を早くギルドに報告しないと」
「あぁ群れの事は……。え? 僕達? あっ! そう言えばモコは? モコは無事なの? ……ん?」
叔母さんは群れの事で何かを言おうとしたんだけど、僕が『僕達』と言った事でモコの事を思い出したようだ。
きょろきょろと辺りを見回しながらモコの事を聞いて来たんだけど、その視線が僕の後方の有る一点を見た途端ぴたりと止まってしまった。
その後ろでサンドさんも同じ方を見て止まっている。
「ど、どうしたの? 二人とも?」
二人に理由を尋ねても固まったままだった。
そしてどんどんと表情が消えていく。
叔母さんなんてなんだか顔面蒼白になっているし、なんでそんな顔をしているんだろう?
二人は何を見ているんだ?
「マー坊? 誰? その子……」
僕の後ろを見て固まっていた叔母さんが、その視線だけをギロリと僕の方に戻したかと思うと、とても低い声でそう言って来た。
目付きが鋭くて怖い!!
なんでそんな目で見るの?
僕の後にはモコが居るだけじゃないか……あっ。
思い出した!
今僕の後ろに居るのはもこもこふわふわなモコじゃなくて、パッと見可愛い幼女のライアだった!
こんなに早く叔母さんと再会するなんて思っても無かったから、まだ名前を偽装しただけで叔母さんに会わせる時の作戦を考えてなかったよ。
モコだってバレないようにライアと口裏合わせしないといけないのに……どうしよう?
僕がライアの正体をどうやって誤魔化そうと考えていると叔母さんがガバッと両肩を掴んで来た。
イタタタ! なんでそんな強く握るの? 小手が食い込んでむっちゃ痛い!
顔が真剣だし何をそんなに怒ってるんだよ。
「お、お姉さんどうしたの? 肩痛いって」
「その子どうしたのっ! どこから連れて来たの?」
なんだか尋問みたいな勢いで問い詰めれるてるんだけど。
何をそんなに怒ってるの?
あっ! 叔母さん魔物学者だから、もしかしてライアを見て希少な魔物に似ているから興奮しているのか。
見付けた場所に連れて行って! とか言い出すのかも。
それとも、実はモコだってバレちゃったんだろうか?
耳とか毛の色とか面影残ってるし、分かる人が見たら見分けがつくのかな?
けど、さすがに姿が変わったなんて事は常識が邪魔するだろうから、カマをかけてるのかもしれない。
どっちにしても、とりあえず落ち着いて貰わないと誤魔化すものも誤魔化せないよ。
「お、落ち着いてお姉さん」
「これが落ち着いていられますか! 誘拐は犯罪よ? しかもそんな恰好させて連れまわすなんて!」
えーーーー!? 何言ってるの叔母さん!
叔母さんの口から出た言葉に頭が真っ白になった。
誘拐? そんな恰好?
どう言う事? ライアの正体が分かったんじゃないの?
叔母さんが言った言葉の意味が分からない僕は、首を少し後ろに向け横目でライアの方を見る……。
「あぁ……」
僕は一瞬で叔母さんが言っている事を理解した。
今僕の後ろに居るライアは、まだへたり込んでいたままだ。
それだけだったら良かったんだけど、どうも目の前で繰り広げられた怒涛の展開に理解が追い付いていないようだった。
そして、その不安な気持ちの表れからか、僕が着せてあげた服の裾をぎゅっと掴んで胸元まで捲り上げてニギニギと横に引っ張ったりしながら揺らしていた。
……うん、そうだよ、元のモコならそんな仕草も問題無かった。
もこもこほわほわなコボルトボディがチラ見するだけなんだからね。
けど、今のライアの体は手足や耳以外は普通の女の子にしか見えないんだ。
そう、裸に僕の上着を着ただけの女の子。
それなのにそんな風に服を捲り上げたりなんかすると……、そのビジュアルはヤバいなんてものじゃない。
アウトだよ、これ完全にアウトだよ。
「ち、違うってお姉さん! 誘拐なんてしていないって!」
「嘘おっしゃい! その子が着ているのはマー坊の服じゃない! お姉さん悲しいわ。マー坊がこんな変態だなんて! ううぅ、預かっている身として姉さんになんて説明したらいいの?」
全く僕の話を聞かない叔母さんは、どんどんと勝手にヒートアップして行って、掴んだ僕の肩をぶんぶんと振りながらとんでもない事を言っている。
叔母さん落ち着いてーーー! 痛いし目が回るーーー!
「パパをいじめちゃらめーー!」
ライアは突然そう叫びながら立ち上がり、叔母さんの足に飛び付いた。
暴走した叔母さんに問い詰められている僕を助けようと思ったんだろう。
さすがの叔母さんもこのライアの行動に驚いて動きを止めた。
そし足元で見上げているライアの顔をじっと見詰めている。
ふぅ……なんとか落ち着いてくれたかな?
これでなんとか話が出来そうだ。
「お姉さん、あのね……」
「マー坊! あなたいつの間に子供を作ったの!!」
「えーーー!!」
話を聞いてもらおうとした途端、叔母さんは更にとんでもない事を言い出した。
今度は僕の子供だって? そんな訳ないじゃないか!
「ち、違うって、話を聞いてよ」
「何が違うの? 今この子、マー坊の事をパパって言ったじゃない! いつの間に? 相手は誰? ちゃんと認知してるの?」
そりゃ確かに「パパ」って言ったけどさ、相手とか認知とか何を言い出すんだよ。
叔母さん正気に戻ってーーー!!
「おいティナ! ちょっと落ち着けって! その子をよく見て見ろ。お前の専門じゃないか」
暴走した叔母さんの怒涛の追求に色々な意味で死にそうになっていた所にサンドさんが止めに入ってくれた。
その言葉に我に返った叔母さんは、サンドさんの言葉に促されるようにゆっくりとライアの方に目を向けた。
「あっ、この子人間じゃないわ。獣人……かしら?」
ほっ、やっと分かってくれたみたいだ。
次第に僕の肩に食い込んでいた指の力も緩まっていく。
「うん、そうなんだ。この子は僕の従魔。名前はライアって言うんだ」
「ライア……?」
叔母さんは僕の顔を見てそう呟いた。
そして、次第に顔が綻びだす。
「ど、どうしたの?」
「マー坊! やっと新しい魔物と契約出来たのね! 良かったじゃない!」
そう言って叔母さんは僕を抱きして締めてきた。
叔母さんは僕が新しい魔物と契約出来た事を喜んでくれているようだ。
鎧の事を忘れているようでそんなに強く抱き締められるととても痛いんだけど、叔母さんが喜んでくれている気持ちが嬉しくてそれ程気にならなかった。
これでなんとか誤魔化せたかな?
僕はやっと誤解が解けてライアの事も誤魔化せた事にホッと胸を撫で下ろした。
「そう言えばモコは? モコはどうしたの?」
突然叔母さんは顔を上げてそう尋ねてきた。
うっ、そうだよ。
まだ全然終わってなかったよ。
ライアの事を新しい従魔って誤魔化せてもモコが居ないのはおかしいよね。
なんて言ってモコが居ない事を誤魔化そう?
取り敢えず何か言わないと。
「モコは……、モコはね。と、遠い所に行ったんだ」
僕はそう言って空を見上げた。
その言葉を聞いた叔母さんとサンドさんは何かを察したのか顔を悲しみで歪ませている。
あっ、これだと死んじゃったって、取られちゃうか。
何か言わないとって思ったからポロッと言っちゃったけど不味いかな?
いや、この際それの方が良いかもしれないな。
探しに行こうとか言われなくて済むかも。
僕も叔母さん達の誤解に乗る事にして悲しみを耐える演技をする。
「そ、そんな。モコが……」
「くっ、岩石ウサギの群れにやられたのか……」
勝手に勘違いしてくれる二人。
どんどんその表情は暗く悲痛なものに変わっていった。
叔母さんなんかは目に涙を浮かべている。
死んだなんて騙すのは心が痛むけど仕方が無いよね。
ごめんね二人共。
「どちたの? あたちはここにいりゅお」
心の中で二人に謝ったその時、足元からこんな声が聞こえてきた。
あぁ、そうだよね。
打ち合わせもしてないし分からなくても仕方ないよ。
ライアは正直者だなぁ~。
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