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第一章 雑魚テイマーの嘆き
第15話 再会
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「……坊! 無事ーー?!」
高まった感情に水を差された形の二人の微妙な空気を破るかの様に矢が飛んで来た方向から誰かの声が聞こえて来た。
どうやら僕達を助ける目的で矢を放ってくれたのは間違いないようだ。
よく考えたら野盗やゴブリンと言った可能性も有ったのに、がっかりする気持ちが大き過ぎてそこまで考えが及ばなかったよ。
ここでやっと助かったと言う気持ちが湧いてきて、緊張してガチガチだった身体からすぅっと力が抜けて疲れが一気にやって来た。
そのまま疲れに任せてへたりこもうかと思ったけど、本当に安心出来る相手なのか分からない。
もう一度全身に力を入れ直した。
ライアはさすがにその場で座り込んじゃってる。
そうこうしている内に僕達を呼び掛ける声はだんだんと近付いてくる。
顔を向けると森の奥の方に手に弓を持ったまま振って走ってくる人影が見えた。
僕はその人に手を振って呼び掛けようと思いって左手を上げようとしたところで、我に返りサッと後ろ手に回し隠した。
いまだ赤く光る左手の甲に浮かぶ契約紋。
これは誰にも見せる訳にはいかないよ。
封印を解いた事がバレると捕まっちゃうかもしれないしね。
しかし手に弓を持っていると言う事は、あの人が岩石ウサギを射ってくれたって事?
森の中をあれ以上の距離から?
凄っ! とんでもない腕前じゃないか。
顔はフード付きの外套を羽織っているのでよく見えないけどそのシルエットや声からすると女性のようだ。
って、この声知ってる!
こんな所に居るはずが無いんだけど間違いない。
僕は慌ててその声がする方に顔を向けて叫ぶ。
「叔母……お姉さん!」
そうこの声は多分叔母さんの声だ。
一瞬早とちりで人間違いなら恥ずかしいって思ったけど、僕の声を聞いた途端にその場で立ち止まりホッと胸を撫で下ろす仕草をした後フードを捲り上げて顔を見せた。
少し遠いけどあれは間違いなく叔母さんだ。
叔母さんは笑顔を浮かべもう一度手を振ると、走るのは止めてゆっくりと一歩一歩踏みしめる様に歩き出した。
木々の切れ間、僕が目覚めた広場の様に開けた場所まで近付くと、その浮かべている表情が良く分かる。
笑顔の奥に安堵だけじゃなく心配やそれに怒りと言った色々な感情が渦巻いているように見えた。
「おーーい! 見付かったかーーーー!」
その時、叔母さんの後方から別の声が聞こえて来た。
どうやらその声は男性のようだ。
誰だろう? 何処かで聞いた事が有る気がするけど……?
「えぇ、こっちよーー!! マー坊を見付けたわ」
叔母さんが振り返り声の主に呼び掛ける。
声の主から「分かった。すぐにそっちに向かう」と言う返事が有った。
それと共にザクザクと複数の様な足跡が近付いてくる。
声は一人だったけど何人かいるのかな?
やっと遠くに人影が見えたけど、なんだか背が異様に高い?
なんだか少しうろちょろと動いているようだ。
その人影を目を凝らして見ている内に、はっきりと姿が分かる距離まで近付いて来た。
僕はその姿を見て納得する。
「サンドさん!! も、森の中を馬でやって来たの?」
驚いた事にその人は僕の街の門番をしているサンドさんだった。
複数の足音と思ったのはただ単に馬に乗っていたからだったようだ。
サンドさんは足が悪いから森の中も馬に乗ってやって来たみたい。
巧みな操作で木々の隙間を縫っていたのでうろちょろしているように見えたのか。
「もうっ! マー坊。本当に心配したんだから」
サンドさんが森を抜けたのと同時に叔母さんが僕の元に駆け寄って来て僕を抱き締めて来た。
突然の事に僕は避ける間もなかった。
僕は恥ずかしくて離れて貰おうと思ったけど叔母さんが呟く声に抵抗は止めて身を任せた。
「本当にもう! お姉さん心配したんだからね。でも無事で良かった」
叔母さんから怒りとも取れる口調交じりに僕の頭に頬を摺り寄せて何度も『良かった』と呟いている。
その声には優しさで溢れているのが分かった。
それと共に叔母さんの腕に力が入ってくる。
僕を抱き締めた事により安堵の気持ちが昂って来たのかもしれない。
僕はそんな叔母さんに『大袈裟だな~』と思いながらも、その胸に顔を埋め……。ゴリッ。
「痛っ! なにこれ? なんか硬い。イッ、イタタタ! 叔母さ……お姉さん! なんかあちこち硬くてそれに刺さって痛いよ」
最初抱き締められた時は分からなかったけど、その抱き締める腕の力が段々と強くなっていく内に硬い何かが僕の身体にめり込んでくる。
叔母さん、外套の下に何を着てるの?
「あぁ、ごめんなさい。久し振りに着たから忘れてたわ」
叔母さんはそう言って僕から離れ外套の前を開く。
僕は外套の下の姿を見て驚きのあまり目を覆った。
「おば……姉さん。なんて格好をしてるの!」
その下に隠れていたのは上半身はブラジャー、下半身は前垂れで隠れているけどパンツだけの様に見える。
その他はおへそも丸出しで肌が露わになっていた。
まるで下着姿だ。
本当になんて格好をしているの?
なんで下着姿になって……? いや、だったらなんで硬かったんだ?
「あはははは。何言っているのよマー坊。よく見なさい。これ露出が多いけどちゃんとした鎧よ」
「え? ……ほ、本当だ。それって所謂ビキニアーマーって奴?」
「えぇ、そうよ。と言っても最近はあまり流行ってないから着る子も少ないし、マー坊の世代じゃ珍しいかもしれないけどね」
叔母さんはそう言って胸を張る様にもう一度見せて来た。
僕は改めてその姿を確認すると、確かに下着姿と思ったらブラジャーはブレストプレート、パンツも腰の左右に鉄板の垂が付いている。
外套に隠れている肩にもショルダープレートを付けているようだ。
それに腕にはガントレット、足は鉄製のブーツを履いている。
肌の露出が多い所に目を瞑ればフル装備と言えるかもしれない。
叔母さんが言った通り、少し前まではこんな装備が女冒険者の間で流行っていたらしい。
今は付与魔法が掛かったお洒落な服を着るのが流行っているので露出は低め。
そんな事を先輩冒険者が愚痴ってたっけ。
それは置いといて、なんで叔母さんがビキニアーマーを着てるのかって事だよね。
「ど、どうして、そんな恰好をしてるの? 年が……いえなんでもないです」
年甲斐も無くって言おうとしたらとても鋭い目つきで睨んで来たので口をつぐんだ。
多分口に出していたら殺されていたと思う。
「もうっ! これはね昔冒険者をしていた現役時代の頃の装備なのよ」
「え? お姉さん。冒険者だったの?」
それは初耳だった。
母さんから好きに生きたらいいと言われて、家を飛び出して魔物学者になったとは聞いていたけど冒険者だったなんて知らなかったよ。
「えぇ、魔物学者だからね。直接この目で見てその生態や強さを感じたかったから家を出てしばらくは冒険者をしてたの」
「俺とパーティーを組んでな。疾風の暴龍って言うちっとは名が売れてたパーティーだったんだぜ」
僕が叔母さんが語る衝撃の事実に驚いているとそれに補足するかのようにサンドさんが更に驚く事を言って来た。
「え? 二人はパーティーだったの? 初耳だよそんなの。何その物騒な名前?」
「あぁ、そうか。確かティナは引退する時に他言するなとギルドに口止めしてたんだったな」
「えぇ、その頃丁度学会に発表した論文が認められて王立大学の教授に推薦されたからね。サンドも門番になっちゃったし、私ももう冒険に出る気は無かったし、物騒な名前は封印させて貰ったわ」
「そ、それはどう言うこと?」
え~と、叔母さんとサンドさんがパーティーを組んでた?
そりゃお互いに知り合いで二人が街で喋っているのを見かけた事が有ったけど、それはただ単に同じ街の住人だから世間話しているだけと思ってたよ。
そんな親密な間柄だったなんて知らなかった。
もしかして……二人は恋人なの?
「……あれは五年前の事ね。偶々あたしが魔物研究の為にグレイスの街に一人で出かけたのよ」
「あぁ、その間暇だった俺は別のパーティーと組んで依頼を受ける事にしたんだ。……だけど、失敗してな。その時一緒に組んだパーティーの奴を守ろうとして俺は足を怪我しちまったんだ」
サンドさんはそう言って軽く膝をポンッと叩いた。
その顔は重過ぎる話の内容とは異なり、とても明るくさっぱりとした顔をしている。
「……本当にごめんなさい。あたしが付いていたらそんな事にはならなかったかもしれない」
サンドさんの表情と相反して叔母さんはとても悲しそうな顔をしてサンドさんに謝った。
もしかしたら叔母さんが冒険者の過去を封印したのはサンドさんの事を気に病んでいたからかもしれない。
「ばぁ~か。お前の所為じゃないって何回も言っただろ? 俺がお前についてグレイスの街に行ったら良かったんだよ。勉強とかそう言うのは苦手だからって言って俺が断ったんだぜ?」
サンドさんが相変わらず軽い口調でそう叔母さんに話す。
どうも、サンドさんは叔母さんが気落ちしないしないようにとわざと明るく喋っているようだ。
これがサンドさんの優しさなんだろう。
「けど……」
「はいはい。昔の事はここまでにしよう。マーシャルが驚いてるじゃないか。今は無事に見つかった事を喜ぼうぜ」
サンドさんがそう言って叔母さんに笑い掛けた。
それによって叔母さんの表情もすこし明るくなり「そうね」と言って僕の方を向く。
「本当に心配したのよ。モコを探しに家を飛び出したまま帰って来ないんだから」
「そんな大袈裟だよ。朝に出掛けただけじゃないか」
さっきも思ったけど、叔母さん過保護過ぎじゃない?
今回は少し特殊だったけど、今までだって冒険で何日も帰らなかった事なんて幾らでもあったのに。
まぁ、実際大雨振ったり岩石ウサギに襲われていたりと心配は掛けちゃったのは確かだけども。
「何言ってるの! マー坊が飛び出してからもう三日目よ」
へ? 今なんて?
僕は叔母さんの言葉に自分の耳を疑った。
高まった感情に水を差された形の二人の微妙な空気を破るかの様に矢が飛んで来た方向から誰かの声が聞こえて来た。
どうやら僕達を助ける目的で矢を放ってくれたのは間違いないようだ。
よく考えたら野盗やゴブリンと言った可能性も有ったのに、がっかりする気持ちが大き過ぎてそこまで考えが及ばなかったよ。
ここでやっと助かったと言う気持ちが湧いてきて、緊張してガチガチだった身体からすぅっと力が抜けて疲れが一気にやって来た。
そのまま疲れに任せてへたりこもうかと思ったけど、本当に安心出来る相手なのか分からない。
もう一度全身に力を入れ直した。
ライアはさすがにその場で座り込んじゃってる。
そうこうしている内に僕達を呼び掛ける声はだんだんと近付いてくる。
顔を向けると森の奥の方に手に弓を持ったまま振って走ってくる人影が見えた。
僕はその人に手を振って呼び掛けようと思いって左手を上げようとしたところで、我に返りサッと後ろ手に回し隠した。
いまだ赤く光る左手の甲に浮かぶ契約紋。
これは誰にも見せる訳にはいかないよ。
封印を解いた事がバレると捕まっちゃうかもしれないしね。
しかし手に弓を持っていると言う事は、あの人が岩石ウサギを射ってくれたって事?
森の中をあれ以上の距離から?
凄っ! とんでもない腕前じゃないか。
顔はフード付きの外套を羽織っているのでよく見えないけどそのシルエットや声からすると女性のようだ。
って、この声知ってる!
こんな所に居るはずが無いんだけど間違いない。
僕は慌ててその声がする方に顔を向けて叫ぶ。
「叔母……お姉さん!」
そうこの声は多分叔母さんの声だ。
一瞬早とちりで人間違いなら恥ずかしいって思ったけど、僕の声を聞いた途端にその場で立ち止まりホッと胸を撫で下ろす仕草をした後フードを捲り上げて顔を見せた。
少し遠いけどあれは間違いなく叔母さんだ。
叔母さんは笑顔を浮かべもう一度手を振ると、走るのは止めてゆっくりと一歩一歩踏みしめる様に歩き出した。
木々の切れ間、僕が目覚めた広場の様に開けた場所まで近付くと、その浮かべている表情が良く分かる。
笑顔の奥に安堵だけじゃなく心配やそれに怒りと言った色々な感情が渦巻いているように見えた。
「おーーい! 見付かったかーーーー!」
その時、叔母さんの後方から別の声が聞こえて来た。
どうやらその声は男性のようだ。
誰だろう? 何処かで聞いた事が有る気がするけど……?
「えぇ、こっちよーー!! マー坊を見付けたわ」
叔母さんが振り返り声の主に呼び掛ける。
声の主から「分かった。すぐにそっちに向かう」と言う返事が有った。
それと共にザクザクと複数の様な足跡が近付いてくる。
声は一人だったけど何人かいるのかな?
やっと遠くに人影が見えたけど、なんだか背が異様に高い?
なんだか少しうろちょろと動いているようだ。
その人影を目を凝らして見ている内に、はっきりと姿が分かる距離まで近付いて来た。
僕はその姿を見て納得する。
「サンドさん!! も、森の中を馬でやって来たの?」
驚いた事にその人は僕の街の門番をしているサンドさんだった。
複数の足音と思ったのはただ単に馬に乗っていたからだったようだ。
サンドさんは足が悪いから森の中も馬に乗ってやって来たみたい。
巧みな操作で木々の隙間を縫っていたのでうろちょろしているように見えたのか。
「もうっ! マー坊。本当に心配したんだから」
サンドさんが森を抜けたのと同時に叔母さんが僕の元に駆け寄って来て僕を抱き締めて来た。
突然の事に僕は避ける間もなかった。
僕は恥ずかしくて離れて貰おうと思ったけど叔母さんが呟く声に抵抗は止めて身を任せた。
「本当にもう! お姉さん心配したんだからね。でも無事で良かった」
叔母さんから怒りとも取れる口調交じりに僕の頭に頬を摺り寄せて何度も『良かった』と呟いている。
その声には優しさで溢れているのが分かった。
それと共に叔母さんの腕に力が入ってくる。
僕を抱き締めた事により安堵の気持ちが昂って来たのかもしれない。
僕はそんな叔母さんに『大袈裟だな~』と思いながらも、その胸に顔を埋め……。ゴリッ。
「痛っ! なにこれ? なんか硬い。イッ、イタタタ! 叔母さ……お姉さん! なんかあちこち硬くてそれに刺さって痛いよ」
最初抱き締められた時は分からなかったけど、その抱き締める腕の力が段々と強くなっていく内に硬い何かが僕の身体にめり込んでくる。
叔母さん、外套の下に何を着てるの?
「あぁ、ごめんなさい。久し振りに着たから忘れてたわ」
叔母さんはそう言って僕から離れ外套の前を開く。
僕は外套の下の姿を見て驚きのあまり目を覆った。
「おば……姉さん。なんて格好をしてるの!」
その下に隠れていたのは上半身はブラジャー、下半身は前垂れで隠れているけどパンツだけの様に見える。
その他はおへそも丸出しで肌が露わになっていた。
まるで下着姿だ。
本当になんて格好をしているの?
なんで下着姿になって……? いや、だったらなんで硬かったんだ?
「あはははは。何言っているのよマー坊。よく見なさい。これ露出が多いけどちゃんとした鎧よ」
「え? ……ほ、本当だ。それって所謂ビキニアーマーって奴?」
「えぇ、そうよ。と言っても最近はあまり流行ってないから着る子も少ないし、マー坊の世代じゃ珍しいかもしれないけどね」
叔母さんはそう言って胸を張る様にもう一度見せて来た。
僕は改めてその姿を確認すると、確かに下着姿と思ったらブラジャーはブレストプレート、パンツも腰の左右に鉄板の垂が付いている。
外套に隠れている肩にもショルダープレートを付けているようだ。
それに腕にはガントレット、足は鉄製のブーツを履いている。
肌の露出が多い所に目を瞑ればフル装備と言えるかもしれない。
叔母さんが言った通り、少し前まではこんな装備が女冒険者の間で流行っていたらしい。
今は付与魔法が掛かったお洒落な服を着るのが流行っているので露出は低め。
そんな事を先輩冒険者が愚痴ってたっけ。
それは置いといて、なんで叔母さんがビキニアーマーを着てるのかって事だよね。
「ど、どうして、そんな恰好をしてるの? 年が……いえなんでもないです」
年甲斐も無くって言おうとしたらとても鋭い目つきで睨んで来たので口をつぐんだ。
多分口に出していたら殺されていたと思う。
「もうっ! これはね昔冒険者をしていた現役時代の頃の装備なのよ」
「え? お姉さん。冒険者だったの?」
それは初耳だった。
母さんから好きに生きたらいいと言われて、家を飛び出して魔物学者になったとは聞いていたけど冒険者だったなんて知らなかったよ。
「えぇ、魔物学者だからね。直接この目で見てその生態や強さを感じたかったから家を出てしばらくは冒険者をしてたの」
「俺とパーティーを組んでな。疾風の暴龍って言うちっとは名が売れてたパーティーだったんだぜ」
僕が叔母さんが語る衝撃の事実に驚いているとそれに補足するかのようにサンドさんが更に驚く事を言って来た。
「え? 二人はパーティーだったの? 初耳だよそんなの。何その物騒な名前?」
「あぁ、そうか。確かティナは引退する時に他言するなとギルドに口止めしてたんだったな」
「えぇ、その頃丁度学会に発表した論文が認められて王立大学の教授に推薦されたからね。サンドも門番になっちゃったし、私ももう冒険に出る気は無かったし、物騒な名前は封印させて貰ったわ」
「そ、それはどう言うこと?」
え~と、叔母さんとサンドさんがパーティーを組んでた?
そりゃお互いに知り合いで二人が街で喋っているのを見かけた事が有ったけど、それはただ単に同じ街の住人だから世間話しているだけと思ってたよ。
そんな親密な間柄だったなんて知らなかった。
もしかして……二人は恋人なの?
「……あれは五年前の事ね。偶々あたしが魔物研究の為にグレイスの街に一人で出かけたのよ」
「あぁ、その間暇だった俺は別のパーティーと組んで依頼を受ける事にしたんだ。……だけど、失敗してな。その時一緒に組んだパーティーの奴を守ろうとして俺は足を怪我しちまったんだ」
サンドさんはそう言って軽く膝をポンッと叩いた。
その顔は重過ぎる話の内容とは異なり、とても明るくさっぱりとした顔をしている。
「……本当にごめんなさい。あたしが付いていたらそんな事にはならなかったかもしれない」
サンドさんの表情と相反して叔母さんはとても悲しそうな顔をしてサンドさんに謝った。
もしかしたら叔母さんが冒険者の過去を封印したのはサンドさんの事を気に病んでいたからかもしれない。
「ばぁ~か。お前の所為じゃないって何回も言っただろ? 俺がお前についてグレイスの街に行ったら良かったんだよ。勉強とかそう言うのは苦手だからって言って俺が断ったんだぜ?」
サンドさんが相変わらず軽い口調でそう叔母さんに話す。
どうも、サンドさんは叔母さんが気落ちしないしないようにとわざと明るく喋っているようだ。
これがサンドさんの優しさなんだろう。
「けど……」
「はいはい。昔の事はここまでにしよう。マーシャルが驚いてるじゃないか。今は無事に見つかった事を喜ぼうぜ」
サンドさんがそう言って叔母さんに笑い掛けた。
それによって叔母さんの表情もすこし明るくなり「そうね」と言って僕の方を向く。
「本当に心配したのよ。モコを探しに家を飛び出したまま帰って来ないんだから」
「そんな大袈裟だよ。朝に出掛けただけじゃないか」
さっきも思ったけど、叔母さん過保護過ぎじゃない?
今回は少し特殊だったけど、今までだって冒険で何日も帰らなかった事なんて幾らでもあったのに。
まぁ、実際大雨振ったり岩石ウサギに襲われていたりと心配は掛けちゃったのは確かだけども。
「何言ってるの! マー坊が飛び出してからもう三日目よ」
へ? 今なんて?
僕は叔母さんの言葉に自分の耳を疑った。
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