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正月の成人式②
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やがて居酒屋に到着した
車から降りて店内へと
入って行く人々
その中で唯一車の前から
動こうとしない健
「どうしたの?」
萌が健の顔を覗き込む
「あ、うん
何でもないよ…」
浮かない顔で返事する健
「ねぇ
持ってきたんでしょ?」
彼の腕を掴み訊ねる
「もちろだよ」
そう言って胸ポケットから
小さな箱を出す
「行きましょ
みんな待ってるわよ」
健から箱を取り上げ
手を握り歩きだす萌
引っ張られやっと歩く健
居酒屋の扉の前
一歩足を踏みだすと
自動ドアの扉が開いた
「いらっしゃいませ」
定員の元気な声が聞こえる
テーブル席は満員だ
「萌、こっちよー」
奥の部屋から顔を出した
由季が声をかける
奥の部屋の前にやって来た
座敷部屋なのか履物が並ぶ
ふすまの向こうからは
賑やかな声が聞こえてくる
ふすまに手をかけ開ける萌
「遅いわよ、萌
二人の席は一番奥よ」
掘り炬燵式のテーブルの
奥が空いている
向かい側には双葉と満弥
入り口側には中高生達
みんなの後ろをすり抜け
奥の席へ進み一番奥に行く健
向かいは満弥が座っている
健の隣は萌、その隣に由季
そして直人が座っている
「じゃあ、揃ったわね
久しぶりの再会と
新しい友達にカンパーイ!」
由季の乾杯の掛け声
そして食事を食べ始める
みんなに声をかける由季
席を離れ一人一人に
喋りかけていた
ポツンと残された直人が
動き回る由季を見つめていた
「萌、こっちにおいでよ」
友達に呼ばれそっちへ行く
「彼氏放っといて
しかたないわね」
双葉がポツリと言った
「別にいいよ、今は友達と
話す方が楽しいからな」
笑顔で答える健
「ねぇ
萌は知ってるんでしょ?」
「えっ、何を?」
「だから、由季の彼氏よ」
「そう言われても
詳しくは知らないわよ」
「じゃあ二人の馴れ初めは?」
矢継ぎ早に質問が続く
「だからそれは由季に
直接きけばいいじゃない」
「まぁ、そうだけどね」
「ねぇ、じゃあ萌は?」
「えっ……?」
「萌と彼氏の馴れ初めよ!」
「馴れ初めって言われても」
おもわず口ごもり健を見た
彼はといえば、双葉と満弥
そして直人と話していた
「そうだよ萌、あいつ
やたらと馴れ馴れしいけど
どういうことなんだよ」
女子達の会話に割り込む男子
「なに女子の会話に
入ってくるのよ!」
「別にいいだろ!
それにさ、おまえらだって
きになるだろ、あいつ!」
そう言って健を見た
視線に気づき笑顔を向ける健
その顔を見て暫く考え込む
「あの笑顔、どこかで
見た気がする…」
男子の言葉に女子達も見る
「そういわれれば、なんだか
見たことある気がするわ」
一人が言えばみんなも頷く
すると健が立ち上がる
「みんな、久しぶりだな
俺のこと忘れたかな…?」
ぐるりと周りを見渡し言った
一斉に注目を浴びる健
「健さん…」
心配そうに彼を見る萌
「俺は来栖健
東京で会社経営をしている」
「会社経営って、そんな
お偉いさんの知り合いなんか
周りにいないよ!」
なんだか不貞腐れて言う男子
「ちょっと、萌
リッチな人捕まえたわね!」
萌の周りにいる女子達が
騒ぎだした
「そんなんじゃ、ないわ!」
おもわず言う萌
いつの間にか由季が側にいる
「落ち着いて、萌」
そう言って背中を擦る
「あ、うん、わかってる」
由季の言葉で落ち着いた
「社長といっても
ちいさな町工場の社長だよ
それに俺は親の後を継いだ
だけだからなんのチカラも
ないからみんなと変わらない」
そんなことを話す健
「彼が社長だからって
好きになったんじゃないわ
健さんは私にとっては
大切な恩人だから…!」
真剣な表情で言った萌
「恩人…?」
「そうよ
みんなも覚えてるでしょ
私の家が火事になったの…」
口々に喋っていた人達が
一斉に静かになり萌を見る
「あのときは、みんなの
優しさに救われたわ…」
切ない顔でみんなを見る萌
「そうだな…友達っていいな
あのとき、思ったよ」
健がそう言った
その言葉にみんな驚いた
「あんた、なんだよ!
まるでその場にいた
みたいなこと言ってさ!」
彼の言葉にみんなも頷く
「だって
その場にいたからさ!」
「えっ…」
「何?」
「どういうことだよ!」
「あのとき
私は誰よりも
ケン兄ちゃんの
言葉に励まされたの」
「ケン兄ちゃん…」
みんなそれぞれに心の中で
ケン兄ちゃんのことを
思い浮かべた
車から降りて店内へと
入って行く人々
その中で唯一車の前から
動こうとしない健
「どうしたの?」
萌が健の顔を覗き込む
「あ、うん
何でもないよ…」
浮かない顔で返事する健
「ねぇ
持ってきたんでしょ?」
彼の腕を掴み訊ねる
「もちろだよ」
そう言って胸ポケットから
小さな箱を出す
「行きましょ
みんな待ってるわよ」
健から箱を取り上げ
手を握り歩きだす萌
引っ張られやっと歩く健
居酒屋の扉の前
一歩足を踏みだすと
自動ドアの扉が開いた
「いらっしゃいませ」
定員の元気な声が聞こえる
テーブル席は満員だ
「萌、こっちよー」
奥の部屋から顔を出した
由季が声をかける
奥の部屋の前にやって来た
座敷部屋なのか履物が並ぶ
ふすまの向こうからは
賑やかな声が聞こえてくる
ふすまに手をかけ開ける萌
「遅いわよ、萌
二人の席は一番奥よ」
掘り炬燵式のテーブルの
奥が空いている
向かい側には双葉と満弥
入り口側には中高生達
みんなの後ろをすり抜け
奥の席へ進み一番奥に行く健
向かいは満弥が座っている
健の隣は萌、その隣に由季
そして直人が座っている
「じゃあ、揃ったわね
久しぶりの再会と
新しい友達にカンパーイ!」
由季の乾杯の掛け声
そして食事を食べ始める
みんなに声をかける由季
席を離れ一人一人に
喋りかけていた
ポツンと残された直人が
動き回る由季を見つめていた
「萌、こっちにおいでよ」
友達に呼ばれそっちへ行く
「彼氏放っといて
しかたないわね」
双葉がポツリと言った
「別にいいよ、今は友達と
話す方が楽しいからな」
笑顔で答える健
「ねぇ
萌は知ってるんでしょ?」
「えっ、何を?」
「だから、由季の彼氏よ」
「そう言われても
詳しくは知らないわよ」
「じゃあ二人の馴れ初めは?」
矢継ぎ早に質問が続く
「だからそれは由季に
直接きけばいいじゃない」
「まぁ、そうだけどね」
「ねぇ、じゃあ萌は?」
「えっ……?」
「萌と彼氏の馴れ初めよ!」
「馴れ初めって言われても」
おもわず口ごもり健を見た
彼はといえば、双葉と満弥
そして直人と話していた
「そうだよ萌、あいつ
やたらと馴れ馴れしいけど
どういうことなんだよ」
女子達の会話に割り込む男子
「なに女子の会話に
入ってくるのよ!」
「別にいいだろ!
それにさ、おまえらだって
きになるだろ、あいつ!」
そう言って健を見た
視線に気づき笑顔を向ける健
その顔を見て暫く考え込む
「あの笑顔、どこかで
見た気がする…」
男子の言葉に女子達も見る
「そういわれれば、なんだか
見たことある気がするわ」
一人が言えばみんなも頷く
すると健が立ち上がる
「みんな、久しぶりだな
俺のこと忘れたかな…?」
ぐるりと周りを見渡し言った
一斉に注目を浴びる健
「健さん…」
心配そうに彼を見る萌
「俺は来栖健
東京で会社経営をしている」
「会社経営って、そんな
お偉いさんの知り合いなんか
周りにいないよ!」
なんだか不貞腐れて言う男子
「ちょっと、萌
リッチな人捕まえたわね!」
萌の周りにいる女子達が
騒ぎだした
「そんなんじゃ、ないわ!」
おもわず言う萌
いつの間にか由季が側にいる
「落ち着いて、萌」
そう言って背中を擦る
「あ、うん、わかってる」
由季の言葉で落ち着いた
「社長といっても
ちいさな町工場の社長だよ
それに俺は親の後を継いだ
だけだからなんのチカラも
ないからみんなと変わらない」
そんなことを話す健
「彼が社長だからって
好きになったんじゃないわ
健さんは私にとっては
大切な恩人だから…!」
真剣な表情で言った萌
「恩人…?」
「そうよ
みんなも覚えてるでしょ
私の家が火事になったの…」
口々に喋っていた人達が
一斉に静かになり萌を見る
「あのときは、みんなの
優しさに救われたわ…」
切ない顔でみんなを見る萌
「そうだな…友達っていいな
あのとき、思ったよ」
健がそう言った
その言葉にみんな驚いた
「あんた、なんだよ!
まるでその場にいた
みたいなこと言ってさ!」
彼の言葉にみんなも頷く
「だって
その場にいたからさ!」
「えっ…」
「何?」
「どういうことだよ!」
「あのとき
私は誰よりも
ケン兄ちゃんの
言葉に励まされたの」
「ケン兄ちゃん…」
みんなそれぞれに心の中で
ケン兄ちゃんのことを
思い浮かべた
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