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3.日照り(3)

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 ひと月ほど前のことでございます。
 あの枇杷の木を目指し、いつものように沢を訪れた藤吉は息を呑みました。

 木の根元に女が倒れているのです。
 藤吉が見たこともないような純白の着物をまとい、力尽きたように倒れ込む美しい女。

 どうした、おぇ、どこから来た。

 藤吉の問いには何も答えず、女は白い頬をほんのり赤く染めながら、伽耶という名をそっと告げました。

「藤吉さん、わたしを……連れて行って」

 濡れた瞳でこちらを見つめる伽耶の眼差まなざしが、藤吉の胸に深く差し込みます。

 藤吉は背負子の代わりに伽耶をおぶり必死に山を下りると、村はずれの家まで連れ帰ったのでした。

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