5 / 22
3.日照り(1)
しおりを挟む
月日は流れ、藤吉は二十歳の兄様になりました。
小さかった背もすっかり伸びて、細かったその体は若者らしい張りに満ちております。
けれども藤吉の厳しい暮らしに変わりはありません。
童の頃は村の皆に気遣われていた藤吉も、兄様になってしまえばもはや、貧しい百姓のひとりに過ぎぬのでした。
季節は夏の盛り。もう日暮れが近うございます。
上の田から、徐々に人が去る気配がいたしました。
掟のとおり池守が、ため池の仕切りを閉じたのでしょう。
藤吉は変わり果てた田の姿を寂しく見下ろします。
ここは棚田の下の下。ため池の水は今日も、藤吉の田まで届きませんでした。
乾ききった田んぼは無惨にひび割れ、あいだに伸びる稲はまるで、野原に生える雑草のよう。
田に住む泥鰌が刺々しい土の上で、貼り付くように死んでおりました。
日暮れを前にしてもまだ強い日差しが、首の後ろに照り付けます。
藤吉は流れ落ちる額の汗を、継ぎはぎだらけの藍染めの袖でぬぐいました。
小さかった背もすっかり伸びて、細かったその体は若者らしい張りに満ちております。
けれども藤吉の厳しい暮らしに変わりはありません。
童の頃は村の皆に気遣われていた藤吉も、兄様になってしまえばもはや、貧しい百姓のひとりに過ぎぬのでした。
季節は夏の盛り。もう日暮れが近うございます。
上の田から、徐々に人が去る気配がいたしました。
掟のとおり池守が、ため池の仕切りを閉じたのでしょう。
藤吉は変わり果てた田の姿を寂しく見下ろします。
ここは棚田の下の下。ため池の水は今日も、藤吉の田まで届きませんでした。
乾ききった田んぼは無惨にひび割れ、あいだに伸びる稲はまるで、野原に生える雑草のよう。
田に住む泥鰌が刺々しい土の上で、貼り付くように死んでおりました。
日暮れを前にしてもまだ強い日差しが、首の後ろに照り付けます。
藤吉は流れ落ちる額の汗を、継ぎはぎだらけの藍染めの袖でぬぐいました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
竜頭
神光寺かをり
歴史・時代
幕末の信州上田藩。
藤井松平家の下級藩士・芦田家に、柔太郎と清次郎の兄弟が居た。
兄・柔太郎は儒学を学ぶため昌平黌へ、弟・清次郎は数学を学ぶため瑪得瑪弟加塾へ、それぞれ江戸遊学をした。
嘉永6年(1853年)、兄弟は十日の休暇をとって、浦賀まで「黒船の大きさを測定する」ための旅に出る。
品川宿で待ち合わせをした兄弟であったが、弟・清次郎は約束の時間までにはやってこなかった。
時は経ち――。
兄・柔太郎は学問を終えて帰郷し、藩校で教鞭を執るようになった。
遅れて一時帰郷した清次郎だったが、藩命による出仕を拒み、遊学の延長を望んでいた。
----------
神童、数学者、翻訳家、兵学者、政治思想家、そして『人斬り半次郎』の犠牲者、赤松小三郎。
彼の懐にはある物が残されていた。
幕末期の兵学者・赤松小三郎先生と、その実兄で儒者の芦田柔太郎のお話。
※この作品は史実を元にしたフィクションです。
※時系列・人物の性格などは、史実と違う部分があります。
【ゆっくりのんびり更新中】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる