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空亡(2)
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「さて、どうしたものかな」
篁は、盗賊たちが根城としている廃寺を見ながら考えた。
もちろん、この者たちを見逃すわけにはいかない。
だからといって、いま弾正台や検非違使がこの場所に踏み込めば、盗賊たちとの殺し合いがはじまり、双方に死傷者が出ることは目に見えている。
そんなことを考えていると、廃寺の内部から奇妙なものが見えた。
蒼い炎、鬼火である。
嫌な予感がした。
あやかしは心の隙間がある者や強欲な者にとり憑くと聞く。
強盗を働き、時には人を殺す連中は、あやかしにとって丁度よい相手なのかもしれない。
どこか遠くで野犬の遠吠えが聞こえた。
こうなってくると、弾正台や検非違使を巻き込むというわけにはいかなくなる。
一人でやるか。
篁は闇夜に紛れて廃寺まで近づいていった。
門番をしている男には鬼火の姿が見えないのか、宙を浮く蒼い炎が目の前を通過しても気に留める様子もなかった。
「おい」
篁は門番の男にだけ聞こえるくらいの小さな声で、呼びかけた。
門番の男がこちらを振り向く。
その刹那、篁は男の首に腕を回し、自由を奪っていた。
骨の砕ける音がした。
このようなやり方は、蝦夷の男に教えてもらったものだった。彼らとは父が陸奥守であった時に、戦場で渡り合ったりもしたが、戦が終われば酒を飲み交わしたりもした。京の人間は蝦夷というと、鬼のような存在を想像するようだが、篁は彼らも同じ人間であると思っていた。篁は蝦夷の知り合いから剣や無手の技をこっそりと教わったりもしていた。
門番の男が力なく倒れると、篁はその身体を茂みの中へと隠した。
あとどのくらいの人数の盗賊がこの廃寺にいるのかはわからない。
それに、そこにいるのは、人間だけではないだろう。
禍々しい気配が、嫌でも篁には感じ取れた。
廃寺に近づいていくと、小声で話す男の声が聞こえてきた。
「今宵は若い女の肉が喰いたいな」
「あの男の肉は美味くなかった」
とんでもない会話である。
中に入る盗賊たちは、もはや現世の者ではなくなってしまっているようだ。
巡察弾正たちを帰して良かった。このような者たちの相手は自分がするべきなのだ。
篁はそう意を決すると、廃寺の木戸を蹴破って中へと躍りこんだ。
「なんじゃ」
廃寺の中で驚きの声をあげたのは、野盗のような格好をした男たちだった。しかし、その姿はもはや現世のものではなくなっており、額からは二本の角が生え、口からは二本の牙が大きく伸びていた。
篁は腰に佩いていた鬼切無銘を抜き放つと、すぐ近くにいた鬼の首を刎ねた。
「あなや」
鬼の首が床に転がり落ちる。
それと同時に篁の身体は次の動作に移っていた。
剣先を移動させ、左側に立っていた男の腕を斬り落とす。
そこから回転するように動き、今度はその横にいた男の足を斬る。
足を斬った男のことを蹴り倒すと、そのまま反対側にいた男のことを左肩口から一気に腰の辺りまで袈裟斬りで斬り下ろし、太刀を抜こうとしていた別の男の肘から先を斬り落とす。
その動きはまるで神楽でも舞っているかのようだった。
篁に斬られた者たちは、ほぼ一撃で絶命しており、廃堂の中は男たちの血で汚されていった。
「な、何者じゃ」
次々に斬られて行く仲間の姿に怯えた様子の男が後ずさりしながら言う。
その男もすでに現世の者ではなくなっているらしく、目は黄色く濁っており、額からは角が生えていた。
「ここは、わしにやらせろ」
そういって廃堂の奥から姿を現したのは、偉丈夫と呼ばれる篁よりも少し背の大きな男だった。この男も額からは角が生えている。
どこか先ほどまでの男たちとは違う。
新たに現れた男のことを見た篁はそう感じていた。
鬼と化した男は太刀をだらりと手にぶら下げるようにしながら、篁との間合いをじりじりと詰めてくる。
この男、かなりの手練れだな。
篁には直感的にそれがわかった。
お互いにあと一歩近づけば、太刀先が相手の体に触れる距離となる。
呼吸を整える。息吹き。篁は独自の呼吸法を使って、体中に気を張り巡らせた。
先に動いたのは、篁の方だった。
上段に構えた太刀を男の首に目掛けて振り下ろす。
その動きに男は反応し、太刀の峰で篁の太刀を受け流そうとする。
太刀と太刀がぶつかる寸前で、篁はその軌道を変化させる。
首に向かっていた太刀の刃先は、弧を描いて男の膝へと吸い込まれて行く。
それに気づいた男は、慌てて足を下げようとしたが間に合わず、篁の太刀は男の膝を斬りつけていた。
「おのれ……」
男は左足を引きずるようにして一歩下がると、口から蒼い炎を吐き出した。
「舐めるなよ、人間」
鬼と化した男は、牙をむき出しにし、黄色く濁った眼でこちらを睨みつける。
篁が斬りつけた膝からは、黒い霧のようなものが出てきていた。
嫌な予感がした。
あの時の狗神を思い出す。
篁は一気に間合いを詰めて、鬼と化した男の胸に太刀を突き刺しに行く。
膝を斬られているため後方に下がるのが遅れた鬼と化した男の胸に深々と篁の太刀が刺さる。
手応えはあった。しかし、嫌な感覚を払拭することはできなかった。
男の身体に前蹴りを入れて、胸から太刀を抜くと篁は後方に下がった。
人であれば、それで血があふれ出てくるのだが、鬼と化した男の身体から血は出てこなかった。代わりに出てきたのは、あの黒い霧だった。
「許さん、許さんぞ」
鬼と化した男の身体が黒い霧に包み込まれて行く。
篁は慌てて、廃堂から飛び出した。
篁は、盗賊たちが根城としている廃寺を見ながら考えた。
もちろん、この者たちを見逃すわけにはいかない。
だからといって、いま弾正台や検非違使がこの場所に踏み込めば、盗賊たちとの殺し合いがはじまり、双方に死傷者が出ることは目に見えている。
そんなことを考えていると、廃寺の内部から奇妙なものが見えた。
蒼い炎、鬼火である。
嫌な予感がした。
あやかしは心の隙間がある者や強欲な者にとり憑くと聞く。
強盗を働き、時には人を殺す連中は、あやかしにとって丁度よい相手なのかもしれない。
どこか遠くで野犬の遠吠えが聞こえた。
こうなってくると、弾正台や検非違使を巻き込むというわけにはいかなくなる。
一人でやるか。
篁は闇夜に紛れて廃寺まで近づいていった。
門番をしている男には鬼火の姿が見えないのか、宙を浮く蒼い炎が目の前を通過しても気に留める様子もなかった。
「おい」
篁は門番の男にだけ聞こえるくらいの小さな声で、呼びかけた。
門番の男がこちらを振り向く。
その刹那、篁は男の首に腕を回し、自由を奪っていた。
骨の砕ける音がした。
このようなやり方は、蝦夷の男に教えてもらったものだった。彼らとは父が陸奥守であった時に、戦場で渡り合ったりもしたが、戦が終われば酒を飲み交わしたりもした。京の人間は蝦夷というと、鬼のような存在を想像するようだが、篁は彼らも同じ人間であると思っていた。篁は蝦夷の知り合いから剣や無手の技をこっそりと教わったりもしていた。
門番の男が力なく倒れると、篁はその身体を茂みの中へと隠した。
あとどのくらいの人数の盗賊がこの廃寺にいるのかはわからない。
それに、そこにいるのは、人間だけではないだろう。
禍々しい気配が、嫌でも篁には感じ取れた。
廃寺に近づいていくと、小声で話す男の声が聞こえてきた。
「今宵は若い女の肉が喰いたいな」
「あの男の肉は美味くなかった」
とんでもない会話である。
中に入る盗賊たちは、もはや現世の者ではなくなってしまっているようだ。
巡察弾正たちを帰して良かった。このような者たちの相手は自分がするべきなのだ。
篁はそう意を決すると、廃寺の木戸を蹴破って中へと躍りこんだ。
「なんじゃ」
廃寺の中で驚きの声をあげたのは、野盗のような格好をした男たちだった。しかし、その姿はもはや現世のものではなくなっており、額からは二本の角が生え、口からは二本の牙が大きく伸びていた。
篁は腰に佩いていた鬼切無銘を抜き放つと、すぐ近くにいた鬼の首を刎ねた。
「あなや」
鬼の首が床に転がり落ちる。
それと同時に篁の身体は次の動作に移っていた。
剣先を移動させ、左側に立っていた男の腕を斬り落とす。
そこから回転するように動き、今度はその横にいた男の足を斬る。
足を斬った男のことを蹴り倒すと、そのまま反対側にいた男のことを左肩口から一気に腰の辺りまで袈裟斬りで斬り下ろし、太刀を抜こうとしていた別の男の肘から先を斬り落とす。
その動きはまるで神楽でも舞っているかのようだった。
篁に斬られた者たちは、ほぼ一撃で絶命しており、廃堂の中は男たちの血で汚されていった。
「な、何者じゃ」
次々に斬られて行く仲間の姿に怯えた様子の男が後ずさりしながら言う。
その男もすでに現世の者ではなくなっているらしく、目は黄色く濁っており、額からは角が生えていた。
「ここは、わしにやらせろ」
そういって廃堂の奥から姿を現したのは、偉丈夫と呼ばれる篁よりも少し背の大きな男だった。この男も額からは角が生えている。
どこか先ほどまでの男たちとは違う。
新たに現れた男のことを見た篁はそう感じていた。
鬼と化した男は太刀をだらりと手にぶら下げるようにしながら、篁との間合いをじりじりと詰めてくる。
この男、かなりの手練れだな。
篁には直感的にそれがわかった。
お互いにあと一歩近づけば、太刀先が相手の体に触れる距離となる。
呼吸を整える。息吹き。篁は独自の呼吸法を使って、体中に気を張り巡らせた。
先に動いたのは、篁の方だった。
上段に構えた太刀を男の首に目掛けて振り下ろす。
その動きに男は反応し、太刀の峰で篁の太刀を受け流そうとする。
太刀と太刀がぶつかる寸前で、篁はその軌道を変化させる。
首に向かっていた太刀の刃先は、弧を描いて男の膝へと吸い込まれて行く。
それに気づいた男は、慌てて足を下げようとしたが間に合わず、篁の太刀は男の膝を斬りつけていた。
「おのれ……」
男は左足を引きずるようにして一歩下がると、口から蒼い炎を吐き出した。
「舐めるなよ、人間」
鬼と化した男は、牙をむき出しにし、黄色く濁った眼でこちらを睨みつける。
篁が斬りつけた膝からは、黒い霧のようなものが出てきていた。
嫌な予感がした。
あの時の狗神を思い出す。
篁は一気に間合いを詰めて、鬼と化した男の胸に太刀を突き刺しに行く。
膝を斬られているため後方に下がるのが遅れた鬼と化した男の胸に深々と篁の太刀が刺さる。
手応えはあった。しかし、嫌な感覚を払拭することはできなかった。
男の身体に前蹴りを入れて、胸から太刀を抜くと篁は後方に下がった。
人であれば、それで血があふれ出てくるのだが、鬼と化した男の身体から血は出てこなかった。代わりに出てきたのは、あの黒い霧だった。
「許さん、許さんぞ」
鬼と化した男の身体が黒い霧に包み込まれて行く。
篁は慌てて、廃堂から飛び出した。
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