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同窓会
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そのメッセージが届いたのは、金曜日の夜だった。
残業を終えて帰宅したわたしは、スマートフォンに新着メッセージが届いていることに気がついた。
「〇×小学校●●年卒業生のみなさま。卒業して20年近くの月日が流れてしまいましたが、みなさまお元気ですか」
そんな書き出しではじまったメッセージ。送り主は、小学校のときの同級生だったイトウちゃんだった。イトウちゃんとは、去年たまたまSNSで繋がって、時おりメッセージのやり取りをしたりしている仲だった。
どうやら、同窓会のお誘いのメッセージのようだ。
開催日を確認すると、来月の第二土曜日だった。カレンダーアプリで予定を確認したが、特に何の予定も入っていなかった。
同窓会か。どうしようかな。そんな風に悩みながら返事は保留した。
土曜日の朝、なんとなく気になっていたため、イトウちゃんにメッセージを送ってみた。まだ同窓会に出席できるかどうかはわからないということと、誰が出席するのだろうかという探りも入れながら。
別に誰が来るから行かないとか、誰に来てほしいとかそういう考えはどこにもなかった。ただ単純な好奇心のようなものだった。
イトウちゃんからの返事は、すぐに来た。
まだ誰からもメッセージは返ってきていないそうだ。同窓会の幹事はイトウちゃんのほかに3人いるということだった。
その中でわたしが覚えているのは滝田くんという男子だった。滝田くんは頭が良かったというイメージが残っている。クラス委員なんかもやっていたし、昔からこういう役回りが好きだったのかもしれない。などと思いながら、イトウちゃんとのメッセージのやり取りを終えた。
メッセージのやり取りを終えたころには、かなり同窓会への参加に心が傾いていた。やっぱりみんなに会いたい。そんな気持ちになったのだ。
月曜日から金曜日までは仕事が忙しく、同窓会のことなど頭の中からすっかり忘れ去られていた。定時で帰れる日なんて一日もなく、毎日が残業だった。
へとへとになって家に帰ってきて、お風呂に入って、寝る。また朝起きれば、会社に向かって出ていくのだ。人はこれを社畜と呼ぶが、まさに自分はそれだった。
だからというわけではないが、新しいメッセージが来ていたことに気がついたのも、金曜日の夜だった。
どうやらメッセージアプリで同窓会用のグループチャットを作ったらしく、その中にわたしも招待されていた。
せっかくだから、同窓会に出よう。気分転換にもなるだろう。わたしはそう思って、グループチャットに参加した。
グループ内には10人の男女がいた。その中にはイトウちゃんもいたし、同じ幹事の滝田くんもいた。
「おひさしぶりです」
当たり障りのない挨拶メッセージを送ったわたしに、みんな優しく接してくれて、みんなと会うのが楽しみになった。
日曜日の深夜、スマートフォンが新着メッセージを受信した。
明日はまた仕事かと、悶々とベッドの中で眠れずにいたわたしはスマートフォンに手を伸ばし、そのメッセージを見た。
『 ねん前にうめタいムカプえsる ほりお そ』
意味不明なメッセージ。差出人は滝田くんだった。
なにこれ。
わたしは意味不明なメッセージを既読スルーして、そのまま眠った。
翌朝、滝田くんからお詫びのメッセージが来ていた。どうやら、SNSのアカウントが乗っ取りにあってしまい、変なメッセージが飛ばされたといったことが書かれていた。
もし、なにか被害が出ている人がいたらごめんなさい。
滝田くんからのメッセージはそれで終わっていた。
わたしはもう一度、昨晩来たメッセージを見てみようと思ったが、すでにメッセージは削除されており見ることはできなかった。
今週も例にも漏れず、残業の一週間が続いた。
でも、今週を乗り切れば、同窓会が待っているのだ。
不思議なもので先に楽しみがあると、人間はがんばれるのだ。
土曜日、わたしは新しく買ったシャツとスカートでちょっとだけオシャレをして、同窓会へと出かけた。
同窓会の会場は、地元の駅前にある居酒屋だった。
わたしは小学校卒業後に父の仕事の関係で引っ越しをしていたため、この駅に来るのは久しぶりのことだった。
参加者は全部で10人だった。男子が6人で女子が4人。小学生以来の再会にどうしても、男子女子と呼んでしまうが、実際はアラサーの男女だ。
イトウちゃんとも久しぶりの再会だった。イトウちゃんは、綺麗なお姉さんといった感じになっていたが、すでに結婚をして子どもが3人もいるとのことだった。
同窓会に参加したメンバーのうち既婚者、独身者が5人ずつとなっていた。みんな見た目は変わったけれど、中身はほとんど変わっていなくて、久しぶりに会ったのにちょっと前まで一緒に授業を受けていたような不思議な感覚にとらわれていた。
同窓会は2時間で終了した。みんなそこそこ酔っぱらっており、まだまだ話したりなくて、二次会をやるぞという幹事の誘いに全員が乗る形となった。
幹事が10人で入れる居酒屋を探してくれている間、誰かがタイムカプセルの話をはじめた。
卒業記念で校庭にタイムカプセルを埋めたはずだというのだ。
しかし、わたしの記憶にはタイムカプセルは存在しなかった。いや、わたしだけではなく何人かもそんなものは知らないといった。しかし、何人かはあったかもしれないと曖昧な記憶を呼び出そうと頑張っていた。
「絶対に埋めたはずだ。いまから掘り起こしに行こう」
誰が言ったのかはわからないが、酔っ払いたちはその場のノリでタイムカプセルを掘り起こすこととなった。
ひさしぶりに見る学校は、なんだか不気味な感じがした。
それもそのはずだ、現在時刻は22時。学校は非常灯の明かりしかついておらず、真っ暗だった。
「こっちの門が開いているから、ここから入ろう」
そう言われて、みんなそろって学校の敷地内へと入っていく。
これは不法侵入であり、立派な犯罪である。
しかし、その時は酔っぱらっていたということもあり、誰もそんなことには気づかなかった。
「確かこのあたりのはずだ」
誰かが言って、スコップを手渡してきた。
準備がいいな。笑いながら言って、男子が地面を掘り始めた。
しばらく掘っていると、スコップの先がなにか硬いものにぶつかる音がした。
「おっ!」
スコップで掘るのをやめて、手で土を掻き出す。
するとそこには、せんべいの缶があった。元は銀色の缶だったようだが、錆びてしまっている。
「あなたたち、こんな時間になにをやっているんだ」
突然、強い光が当てられた。
そこに現れたのは制服姿の警察官だった。
「学校の校庭で騒いでいる人間がいるって、通報がありましてね」
制服姿の警官はわたしたちに説明をする。
「すいません」
わたしたちは頭を下げて警官に謝った。
警官もわかってくれたらしく、騒いだりしないでさっさと引き上げてくれといい、去っていった。
警官が去ったのを見届けると、先ほどのせんべいの缶ことタイムカプセルに目を戻した。
缶のふたには、何か紙のようなものが貼りつけてあった。それは見ようによってはお札のようにもみえた。
先ほどまで、こんな紙は貼っていなかったはずだ。
「なんかヤバくないか」
誰かが言うと、後ろの方で誰かが舌打ちをした。
妙な響きのある舌打ちで、全員が後ろを振り返った。
しかし、誰もいなかった。
え?
これは開けちゃダメなやつだ。
その場にいた全員が、直感的に判断した。
慌てて土を元に戻し、なにも見なかったことにした。
すでに酔いは覚めていた。
このままだと気持ち悪いから、飲みなおそうという提案に全員が乗り、駅前の居酒屋で飲みなおすことにした。
二次会もそれなりに盛り上がり、先ほどのタイムカプセルのことなどは、誰も覚えてはいなかった。
そして、会計の時になり、幹事がおかしなことを言い出した。
「あれ? 10人だよね」
「そうだけど……」
そう言われて、人数を確認すると9人しかいなかった。男6人、女4人のはずだ。
しかし、今いるのは男5人、女4人の計9人だった。
誰がいなくなっているのだろうか。
全員で話し合ったが、誰も10人目の人物を思い出すことはできなかったし、グループチャットを確認しても最初から9人しかいなかった。
残業を終えて帰宅したわたしは、スマートフォンに新着メッセージが届いていることに気がついた。
「〇×小学校●●年卒業生のみなさま。卒業して20年近くの月日が流れてしまいましたが、みなさまお元気ですか」
そんな書き出しではじまったメッセージ。送り主は、小学校のときの同級生だったイトウちゃんだった。イトウちゃんとは、去年たまたまSNSで繋がって、時おりメッセージのやり取りをしたりしている仲だった。
どうやら、同窓会のお誘いのメッセージのようだ。
開催日を確認すると、来月の第二土曜日だった。カレンダーアプリで予定を確認したが、特に何の予定も入っていなかった。
同窓会か。どうしようかな。そんな風に悩みながら返事は保留した。
土曜日の朝、なんとなく気になっていたため、イトウちゃんにメッセージを送ってみた。まだ同窓会に出席できるかどうかはわからないということと、誰が出席するのだろうかという探りも入れながら。
別に誰が来るから行かないとか、誰に来てほしいとかそういう考えはどこにもなかった。ただ単純な好奇心のようなものだった。
イトウちゃんからの返事は、すぐに来た。
まだ誰からもメッセージは返ってきていないそうだ。同窓会の幹事はイトウちゃんのほかに3人いるということだった。
その中でわたしが覚えているのは滝田くんという男子だった。滝田くんは頭が良かったというイメージが残っている。クラス委員なんかもやっていたし、昔からこういう役回りが好きだったのかもしれない。などと思いながら、イトウちゃんとのメッセージのやり取りを終えた。
メッセージのやり取りを終えたころには、かなり同窓会への参加に心が傾いていた。やっぱりみんなに会いたい。そんな気持ちになったのだ。
月曜日から金曜日までは仕事が忙しく、同窓会のことなど頭の中からすっかり忘れ去られていた。定時で帰れる日なんて一日もなく、毎日が残業だった。
へとへとになって家に帰ってきて、お風呂に入って、寝る。また朝起きれば、会社に向かって出ていくのだ。人はこれを社畜と呼ぶが、まさに自分はそれだった。
だからというわけではないが、新しいメッセージが来ていたことに気がついたのも、金曜日の夜だった。
どうやらメッセージアプリで同窓会用のグループチャットを作ったらしく、その中にわたしも招待されていた。
せっかくだから、同窓会に出よう。気分転換にもなるだろう。わたしはそう思って、グループチャットに参加した。
グループ内には10人の男女がいた。その中にはイトウちゃんもいたし、同じ幹事の滝田くんもいた。
「おひさしぶりです」
当たり障りのない挨拶メッセージを送ったわたしに、みんな優しく接してくれて、みんなと会うのが楽しみになった。
日曜日の深夜、スマートフォンが新着メッセージを受信した。
明日はまた仕事かと、悶々とベッドの中で眠れずにいたわたしはスマートフォンに手を伸ばし、そのメッセージを見た。
『 ねん前にうめタいムカプえsる ほりお そ』
意味不明なメッセージ。差出人は滝田くんだった。
なにこれ。
わたしは意味不明なメッセージを既読スルーして、そのまま眠った。
翌朝、滝田くんからお詫びのメッセージが来ていた。どうやら、SNSのアカウントが乗っ取りにあってしまい、変なメッセージが飛ばされたといったことが書かれていた。
もし、なにか被害が出ている人がいたらごめんなさい。
滝田くんからのメッセージはそれで終わっていた。
わたしはもう一度、昨晩来たメッセージを見てみようと思ったが、すでにメッセージは削除されており見ることはできなかった。
今週も例にも漏れず、残業の一週間が続いた。
でも、今週を乗り切れば、同窓会が待っているのだ。
不思議なもので先に楽しみがあると、人間はがんばれるのだ。
土曜日、わたしは新しく買ったシャツとスカートでちょっとだけオシャレをして、同窓会へと出かけた。
同窓会の会場は、地元の駅前にある居酒屋だった。
わたしは小学校卒業後に父の仕事の関係で引っ越しをしていたため、この駅に来るのは久しぶりのことだった。
参加者は全部で10人だった。男子が6人で女子が4人。小学生以来の再会にどうしても、男子女子と呼んでしまうが、実際はアラサーの男女だ。
イトウちゃんとも久しぶりの再会だった。イトウちゃんは、綺麗なお姉さんといった感じになっていたが、すでに結婚をして子どもが3人もいるとのことだった。
同窓会に参加したメンバーのうち既婚者、独身者が5人ずつとなっていた。みんな見た目は変わったけれど、中身はほとんど変わっていなくて、久しぶりに会ったのにちょっと前まで一緒に授業を受けていたような不思議な感覚にとらわれていた。
同窓会は2時間で終了した。みんなそこそこ酔っぱらっており、まだまだ話したりなくて、二次会をやるぞという幹事の誘いに全員が乗る形となった。
幹事が10人で入れる居酒屋を探してくれている間、誰かがタイムカプセルの話をはじめた。
卒業記念で校庭にタイムカプセルを埋めたはずだというのだ。
しかし、わたしの記憶にはタイムカプセルは存在しなかった。いや、わたしだけではなく何人かもそんなものは知らないといった。しかし、何人かはあったかもしれないと曖昧な記憶を呼び出そうと頑張っていた。
「絶対に埋めたはずだ。いまから掘り起こしに行こう」
誰が言ったのかはわからないが、酔っ払いたちはその場のノリでタイムカプセルを掘り起こすこととなった。
ひさしぶりに見る学校は、なんだか不気味な感じがした。
それもそのはずだ、現在時刻は22時。学校は非常灯の明かりしかついておらず、真っ暗だった。
「こっちの門が開いているから、ここから入ろう」
そう言われて、みんなそろって学校の敷地内へと入っていく。
これは不法侵入であり、立派な犯罪である。
しかし、その時は酔っぱらっていたということもあり、誰もそんなことには気づかなかった。
「確かこのあたりのはずだ」
誰かが言って、スコップを手渡してきた。
準備がいいな。笑いながら言って、男子が地面を掘り始めた。
しばらく掘っていると、スコップの先がなにか硬いものにぶつかる音がした。
「おっ!」
スコップで掘るのをやめて、手で土を掻き出す。
するとそこには、せんべいの缶があった。元は銀色の缶だったようだが、錆びてしまっている。
「あなたたち、こんな時間になにをやっているんだ」
突然、強い光が当てられた。
そこに現れたのは制服姿の警察官だった。
「学校の校庭で騒いでいる人間がいるって、通報がありましてね」
制服姿の警官はわたしたちに説明をする。
「すいません」
わたしたちは頭を下げて警官に謝った。
警官もわかってくれたらしく、騒いだりしないでさっさと引き上げてくれといい、去っていった。
警官が去ったのを見届けると、先ほどのせんべいの缶ことタイムカプセルに目を戻した。
缶のふたには、何か紙のようなものが貼りつけてあった。それは見ようによってはお札のようにもみえた。
先ほどまで、こんな紙は貼っていなかったはずだ。
「なんかヤバくないか」
誰かが言うと、後ろの方で誰かが舌打ちをした。
妙な響きのある舌打ちで、全員が後ろを振り返った。
しかし、誰もいなかった。
え?
これは開けちゃダメなやつだ。
その場にいた全員が、直感的に判断した。
慌てて土を元に戻し、なにも見なかったことにした。
すでに酔いは覚めていた。
このままだと気持ち悪いから、飲みなおそうという提案に全員が乗り、駅前の居酒屋で飲みなおすことにした。
二次会もそれなりに盛り上がり、先ほどのタイムカプセルのことなどは、誰も覚えてはいなかった。
そして、会計の時になり、幹事がおかしなことを言い出した。
「あれ? 10人だよね」
「そうだけど……」
そう言われて、人数を確認すると9人しかいなかった。男6人、女4人のはずだ。
しかし、今いるのは男5人、女4人の計9人だった。
誰がいなくなっているのだろうか。
全員で話し合ったが、誰も10人目の人物を思い出すことはできなかったし、グループチャットを確認しても最初から9人しかいなかった。
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