笑顔の向こう側

ゆん

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出会い編

梅雨明け

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次の日。ぐっすり眠って目が覚めたのは9時過ぎだった。

起きていくと透さんがバリッバリのスーツ姿で、朝から惚れ惚れするほどの男っぷり。

「おはよう……」と見惚れたみたいになりながら挨拶をしたら、壁にかかった鏡を覗いて髪をちょいちょい弄ってた透さんがおはよう、と返しながら振り向いた。

「日曜日も仕事なんだ……」
「打ち合わせは客の都合に合わせないといけないからな」

文字盤が黒い重厚な光を放つシルバーの時計を腕にはめながら、テレビ画面に目をやってリモコンで電源を落とし、カバンを掴んで、もう一回鏡を覗いてネクタイをつついて、透さんはテキパキテキパキ。

そのまま玄関に向かう彼の背中に引っ張られるように、後ろをとことこついていく。

そしたら、玄関のドアをあけて外に一歩出かけた透さんがそのまま足を止め、こっちを振り向いた。

「来週から俺もここに住むから」

平然と、言い放つ。

「えっ?」
「ルール決めは俺がする」
「え、あ、うん」
「じゃあ」

透さんは、そのまま出てってしまった。

呆然。えっ。何。

ええっ!?何ーーー!?

なんか……急に、好きな人と、一緒に暮らすことになったんですけど。

同棲……じゃないじゃないシェアハウス!同棲とか、何言ってんの……!



カァッと熱くなった頬っぺたを両手で押さえて、勢い余って唇をむちゅっと飛び出させる。

えっ天国? や、地獄……?

ちょっと待って、暮らすってなったら色々見られるってことで、色々知られるってことで、どうしよう!心の準備が!部屋片づけなきゃ!あと、部屋着とかパンツとか、干してるとこ見られたらヤバいヤツ、処分ーー!

「……とりあえず、朝ごはん食べよ」

その後で、デザートのシュークリームも。

リビングに射しこむ白い光につられて窓に近づきレースのカーテンを開くと、昨日の土砂降りが嘘みたいな眩しいくらいの晴れだった。
空の色は薄く、夏の訪れが近いことを知らせてる。

梅雨が明けるまで、あと少し。




END

シェアハウス編に続く

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