関西白星一昼夜物語

ゆん

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「お、重……」


 もがいたら、彬光がふっと体を浮かせてくれた。その表情にはありありと、今の状況がよく分からへんっちゅう戸惑いが現れてる。そりゃそうやろ。彬光は昨日の夜、俺とケンカしてた時から眠ってて、気付いたら俺を抱き締めてベッドにおるんやから。

 あぁ、彬光や。
 探しとったからよう分かる。
 これが、俺の彬光や。


「彬光……好きや……」


 下敷きにされてた腕を上げて、彬光の首に回した。彬光は静かやけどめっちゃびっくりした顔をして俺を凝視した。せやったな。お前がゆうてくれへんだけやない。俺もゆうたことなかったわ。でも自分でも分からへんかってん。お前のこと、こんなに好きやってこと。


「キスしてほしい。彬光のこと、感じたい」


 こんな素直な気持ちになったん、初めてかもしれへん。いつも照れくさぁて、そんなん言葉にもせぇへんかったし。
 彬光はあんま表情を変えずに、でもほんまに優しい心根を映した目ぇをして、ゆっくり俺に口づけた。そんでそのまんま、まだ濡れとる俺の髪に指を差し入れて深いキスをして、もう片方の手は服の裾から入り込んできて……

 互いの肌の熱を感じながら抱き合うことがどんだけ奇跡的なことなんか、今まで考えたことなかったけど。この地球でお前に逢えて、お前に触れて、お前を感じて、俺はほんまになんてラッキーなんやろう。


「彬光……っ……」


 自分を割り開く微かな痛みさえ、こんなに愛しい。貴重や。唯一無二や。そんなことを噛みしめてたら、慧斗、俺も好きや、って……耳元で。
 目と目を合わせて、律動に揺れる視界に彬光を映して、またキスして、突き上がって来る快感に目を閉じて、息を止めて、仰け反って──


 慧斗、


 イクとき、彬光が掠れた声で俺を呼んだ。絶頂を迎えながら、俺は俺に刻まれた名前を白む頭の片隅で確かめてた。

 

 

 あるひとつの出来事が人生の節目になることってある。

 俺にとってはあの白い光を見た日が、宇宙人に遭遇したことが、そうやった。

 俺は翌朝、彬光に、ちゃんと一緒に暮らしたい、と告げた。彬光にしてみたら 『もう別れる!』 ゆうた次の日に今度は同棲したいて言われたことになるんやから、たいがい意味分からんと思う。
 それやのに、彬光の返事は 「ええよ」 て……即答やった。


「ほんまにええのん?俺……口うるさいで。あんま言い過ぎんようにしようとは思てるけど」
「かめへん」


 なんか……ほんま、思ってたより俺、愛されててんなって。自分が決めた形を探してたから見つからへんかっただけで、彬光の中には初めからあってんなって。



 宇宙人のことは、彬光にはまだ話してへん。

 俺を妬かせた昔の恋人との関係とか、まだ話してもろてへんしな。

 追々、話してもらお。

 自分の考えた ”追々” で宇宙人のことを思い出して、俺は笑いを隠すように腕で口を覆った。



 
END
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