消しゴムくん、旅に出る

泉蒼

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第六章 からすのクロスケ

6-2

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トントントン……トトトンっ、トン。
 かれこれ五分、窓の桟で腕を組んで立つピン子は、なんども空を見つめ、
「あ~、まだかなぁ。もしかしてクロスケのやつ、約束を忘れちゃったの?」
その場で右足を踏み鳴らしては、おなじ台詞をぼやいていました。
ぼくも、心配になって、晴れわたる青空を見つめます。
「クロスケ、だいじょうぶかな……なにか、緊急事態でもあったのかな」
「そういや、クロスケのケガは、もう良くなったのか?」
 窓の桟に、背をあずけて座るジョーが、ピン子をふりかえります。
 ピン子は、踏み鳴らしていた右足を、ぴたりと止めて言いました。
「クロスケのやつ、一時間目のときは、もうだいじょぶだって、あたしに言ってたのよ。羽のケガも治って、元気に仕事を再開してるってさ」
今日の一時間目、ひとりだけ先にゆかに落ちていたピン子は、ぼくたちの冒険がスムーズに行くようにと、カラスのクロスケに予約を入れていたのです。
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