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EPILOGUE
E-3
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キーンコーンカーンコーン!
学校へつくと、サリーが教室前に貼りだされたクラス名簿を見て、ニッと笑う。
「やったわ! またまたティムと同じクラスだね」
「とほほ……、これで6年連続だな……、恐るべしだな、サリーとの腐れ縁は」
そうして、おれは先生が教室へやってくるまで、机であることを考えていた。
(そういえば、母さんはどうして聞いてこないんだろう?)
母さんも、町の人から父さんが戻ってきたことを聞いているはずだった。
それなのに、おれにもサリーにも、母さんは父さんの話をしてこないんだ。
(もしかすると母さんは、父さんがいつも宇宙から見ていることを、ちゃんと知っているのかな……)
おれはふとそんなことを思い、あの日、父さんからもらった本を机で開いてみる。
ヴィトが記録した本には、ずっと昔の、ハリスじいちゃんの秘密が書かれていた。
★ ★ ★
嵐の前の夜空は、嘘のように晴れ渡っていた。
宇宙に散らばる無数の星へ、山小屋でひとり望遠鏡を向け続けるハリス・フェルディナンド。
とたん、ハリスがある星を見つけて思わず息を呑む。
「き、金色の星だ!」
その星こそ、ハリスが人生を通して探し求めていた、伝説の星に違いなかった。
「あれが……、あれが惑星ファイアタンク! ついに、ついに姿を見せよったか!」
そうつぶやくハリスの目から、すうっと一粒の涙がこぼれ落ちていく。
ハリスは望遠鏡から顔を離し、しばらくの間、両手で顔をおおった。
カタカタっ、カっ……チャン!
そのときだ。
誰かが、山小屋の扉を開ける音がした。
その音に気がついたハリスが、ハッとわれに返る。
そして観測部屋から耳をすませた。やがて、ハリスの口もとが緩んだ。
「……ティムめ、またやってきよったな」
ハリスは、愉快そうに体を揺らして笑った。
「そんなに好きか、スターウォッチャーが。ふふふ、わしとフランシスの血を受け継いでおる証拠じゃの。だが、
大変だぞ。スターウォッチャーに捧げる人生はな」
そしてハリスは表情を引き締め、山小屋の扉へ歩いていく。
ガチャ。
「またティムか、まったく懲りない奴め――」
フランシス・フェルディナンド
★ ★ ★
なんと、父さんの本には、あの日の出来事が記録されていた。
(父さんは宇宙のどこかから、ハリスじいちゃんを観測していたんだ!)
おれは、父さんからもらった本を何度も読んで、ハッキリと理解した。
(おれが、まだ5歳だったあの日――)
ハリスじいちゃんは、伝説の星に旅立った。
あるんだ!
この大宇宙には、惑星ファイアタンクがあるんだ。
おれは、ヴィトの記録を読んで無性に興奮していた。
(絶対に見つけてやる!)
だれよりも先に、おれが伝説の星を見つけるんだ。
(じいちゃん、父さん、それまで待っててくれよな)
キーンコーンカーンコーン!
(了)
学校へつくと、サリーが教室前に貼りだされたクラス名簿を見て、ニッと笑う。
「やったわ! またまたティムと同じクラスだね」
「とほほ……、これで6年連続だな……、恐るべしだな、サリーとの腐れ縁は」
そうして、おれは先生が教室へやってくるまで、机であることを考えていた。
(そういえば、母さんはどうして聞いてこないんだろう?)
母さんも、町の人から父さんが戻ってきたことを聞いているはずだった。
それなのに、おれにもサリーにも、母さんは父さんの話をしてこないんだ。
(もしかすると母さんは、父さんがいつも宇宙から見ていることを、ちゃんと知っているのかな……)
おれはふとそんなことを思い、あの日、父さんからもらった本を机で開いてみる。
ヴィトが記録した本には、ずっと昔の、ハリスじいちゃんの秘密が書かれていた。
★ ★ ★
嵐の前の夜空は、嘘のように晴れ渡っていた。
宇宙に散らばる無数の星へ、山小屋でひとり望遠鏡を向け続けるハリス・フェルディナンド。
とたん、ハリスがある星を見つけて思わず息を呑む。
「き、金色の星だ!」
その星こそ、ハリスが人生を通して探し求めていた、伝説の星に違いなかった。
「あれが……、あれが惑星ファイアタンク! ついに、ついに姿を見せよったか!」
そうつぶやくハリスの目から、すうっと一粒の涙がこぼれ落ちていく。
ハリスは望遠鏡から顔を離し、しばらくの間、両手で顔をおおった。
カタカタっ、カっ……チャン!
そのときだ。
誰かが、山小屋の扉を開ける音がした。
その音に気がついたハリスが、ハッとわれに返る。
そして観測部屋から耳をすませた。やがて、ハリスの口もとが緩んだ。
「……ティムめ、またやってきよったな」
ハリスは、愉快そうに体を揺らして笑った。
「そんなに好きか、スターウォッチャーが。ふふふ、わしとフランシスの血を受け継いでおる証拠じゃの。だが、
大変だぞ。スターウォッチャーに捧げる人生はな」
そしてハリスは表情を引き締め、山小屋の扉へ歩いていく。
ガチャ。
「またティムか、まったく懲りない奴め――」
フランシス・フェルディナンド
★ ★ ★
なんと、父さんの本には、あの日の出来事が記録されていた。
(父さんは宇宙のどこかから、ハリスじいちゃんを観測していたんだ!)
おれは、父さんからもらった本を何度も読んで、ハッキリと理解した。
(おれが、まだ5歳だったあの日――)
ハリスじいちゃんは、伝説の星に旅立った。
あるんだ!
この大宇宙には、惑星ファイアタンクがあるんだ。
おれは、ヴィトの記録を読んで無性に興奮していた。
(絶対に見つけてやる!)
だれよりも先に、おれが伝説の星を見つけるんだ。
(じいちゃん、父さん、それまで待っててくれよな)
キーンコーンカーンコーン!
(了)
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