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第13章 これから始まる、スターウォッチャーの大冒険!
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「ピンチはチャンスか……」
「フフ、人間からすれば危機に思えることも、宇宙にとっては、再生のチャンスを与えている場合がある。ときに宇宙は、そうやって星や人を、目覚めさせようとするんだ」
(じゃあ――、アルダーニャは今のままで充分だって、宇宙が試したっていうのか?)
おれは、不思議な働きかけをする宇宙に想いを馳せ、思わずツバを飲み込んだ。
するとヴィトが、ローブの裾から1冊の本を取り出す。
「これは、私が記録したものだ。ティムに、あの日の秘密を教えてやりたくてな」
「あの日の、秘密?」
キョトンとしながら本を受け取ると、おれはふと寂しさを感じてしまう。
(……もう、行っちゃうの?)
ヴィトが、父さんが、また遠くへ去ろうとしているような気がしたんだ。
思った通り、父さんは、
「ティム、メイのことを頼んだぞ」
そう言い、すっと台座から立ち上がって身をひるがえした。
いつの間にか、広場にはあのフライングエッグが到着している。
(……父さん)
おれはそう呼びたいが、なぜか言葉がノドをつかえて出てこない。
「競争しないか?」
そのとき、おれに背を向けた父さんが、ふとそうつぶやいたのだ。
「ティム、私と競争しよう」
「……競争?」
「そうだ。どっちが先に、伝説の星・ファイアタンクを見つけられるか」
「惑星ファイアタンク……」
ハリスじいちゃんも探していた、幻の星……。
観測に成功すれば、この大宇宙の謎を解くことができると言われる星。
「ティム、ハリスはもうそこにいるぞ」
「えっ!?」
シュルルっ、シュパーン、パッ!
おれが驚いた瞬間、
「父さんっ」
フライングエッグに乗ったヴィトが、あっという間に夜空の彼方へ飛んで行った。
「父さん、父さんっ、父さんっ! ……父さん」
おれが何度叫んでも、ヴィトとジョバンニの姿はもう見えなくなっていた。
「もっと、まだもっと……」
喉の奥が熱くなって、おれは鼻をすする。
(うっうぅ……分かったよ)
おれは夜空に輝く星を見上げた。そして、思い切り叫んだんだ。
「父さんっ、どっちが先に伝説の星を見つけられるか競争だっ!」
……くそ、勝手だよ。
父さんもじいちゃんも、自分勝手すぎるよ。
「……まったく」
たまらなく寂しさが込み上げ、おれはもういちど宇宙に向かって叫んだ。
「ぜんぶぜんぶ、おれがぜーんぶ見つけてやるよっ!」
やっと、胸がスッとした。
おれは、大宇宙を見上げてこんなことを思う。
(離れ離れなんかじゃない。そうだ! いつもいつも、この大宇宙を通してつながっているんだ!)
「フフ、人間からすれば危機に思えることも、宇宙にとっては、再生のチャンスを与えている場合がある。ときに宇宙は、そうやって星や人を、目覚めさせようとするんだ」
(じゃあ――、アルダーニャは今のままで充分だって、宇宙が試したっていうのか?)
おれは、不思議な働きかけをする宇宙に想いを馳せ、思わずツバを飲み込んだ。
するとヴィトが、ローブの裾から1冊の本を取り出す。
「これは、私が記録したものだ。ティムに、あの日の秘密を教えてやりたくてな」
「あの日の、秘密?」
キョトンとしながら本を受け取ると、おれはふと寂しさを感じてしまう。
(……もう、行っちゃうの?)
ヴィトが、父さんが、また遠くへ去ろうとしているような気がしたんだ。
思った通り、父さんは、
「ティム、メイのことを頼んだぞ」
そう言い、すっと台座から立ち上がって身をひるがえした。
いつの間にか、広場にはあのフライングエッグが到着している。
(……父さん)
おれはそう呼びたいが、なぜか言葉がノドをつかえて出てこない。
「競争しないか?」
そのとき、おれに背を向けた父さんが、ふとそうつぶやいたのだ。
「ティム、私と競争しよう」
「……競争?」
「そうだ。どっちが先に、伝説の星・ファイアタンクを見つけられるか」
「惑星ファイアタンク……」
ハリスじいちゃんも探していた、幻の星……。
観測に成功すれば、この大宇宙の謎を解くことができると言われる星。
「ティム、ハリスはもうそこにいるぞ」
「えっ!?」
シュルルっ、シュパーン、パッ!
おれが驚いた瞬間、
「父さんっ」
フライングエッグに乗ったヴィトが、あっという間に夜空の彼方へ飛んで行った。
「父さん、父さんっ、父さんっ! ……父さん」
おれが何度叫んでも、ヴィトとジョバンニの姿はもう見えなくなっていた。
「もっと、まだもっと……」
喉の奥が熱くなって、おれは鼻をすする。
(うっうぅ……分かったよ)
おれは夜空に輝く星を見上げた。そして、思い切り叫んだんだ。
「父さんっ、どっちが先に伝説の星を見つけられるか競争だっ!」
……くそ、勝手だよ。
父さんもじいちゃんも、自分勝手すぎるよ。
「……まったく」
たまらなく寂しさが込み上げ、おれはもういちど宇宙に向かって叫んだ。
「ぜんぶぜんぶ、おれがぜーんぶ見つけてやるよっ!」
やっと、胸がスッとした。
おれは、大宇宙を見上げてこんなことを思う。
(離れ離れなんかじゃない。そうだ! いつもいつも、この大宇宙を通してつながっているんだ!)
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