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第13章 これから始まる、スターウォッチャーの大冒険!
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夕陽が山に沈んでいく中、広場の石畳に、おれはヴィトとふたりで腰を下ろしていた。ヴィトが語ったのは、インモビリアール社の真の計画と、自分の正体についてだった。
「イザリア王国だって!?」
おれが驚くと、ヴィトはきびしい表情で、バケモノ望遠鏡の台座に腰をおろした。
「彼らは島国アルダーニャを統一し、新イザリア王国を作ろうとしていたんだ。インモビリアール社の表向きは光学機器メーカーだが、そのメンバーはほとんどが軍人だ」
フィッチは私設軍人という、金で動く兵隊を雇っていたらしい。
彼らはヨーロッパで「赤シャツ隊」と呼ばれていた。
「それじゃあ、あの赤いシャツの兵士は、軍人だったんだ!」
「フィッチはイザリアから莫大な支援を受け、会社を大きくした。その見返りにイザリア統一運動に参加していたのさ。簡単に言えば、他国を占領し、イザリアに吸収する」
なんだかすごい話に、おれはため息をつき、暗くなってきた空をあおいだ。
ヴィトの話によれば、インモビリアール社の兵力は月日を追うごとに巨大化し、本国にはざっと1万もの軍人が待機しているという。
(……いつまた、攻めてくるか分からねえな)
だが、おれにはまだ解けない謎があった。
「こう言っちゃなんだけど、大国がなんで、ちっぽけなアルダーニャを狙うんだ?」
そんなおれの素直な疑問に、ヴィトが静かに笑う。
「フフ、ちっぽけだからさ」
「えっ?」
おれはポカンとヴィトを見る。
「分からないか? フィッチはあれで人を操る天才だ。人から自信を奪う方法を知っている。アルダーニャが標的にされたのは、まさに自分たちがちっぽけな存在だと、みんなが心のどこかでそう信じていたからだ。フィッチは、それを利用しようとしたんだ」
分かるようで分からず、おれは思わず首をかしげた。
ヴィトが続ける。
「フィッチの狙いは、アルダーニャに価値がないと信じ込ませること。みんながそれを鵜呑みにすれば、きっと簡単に支配できただろう。だが、フィッチにも唯一、怖れていたことがある。そう、アルダーニャのみんなさ」
「おれたちを、怖れてた? だって、あいつは、おれたちには価値がないって……」
「いいか、ティム。アルダーニャは世界で1番、宇宙を信じている。フィッチのように文明の進化や、目に見える物質にしか価値を認められない者にとって、アルダーニャは脅威なのさ」
フィッチが怖れていたのは、アルダーニャのみんなが、今のままで充分幸せだと気付いていることだったのか。
「フィッチは、それを怖れて……、いや、でも、まだよく分かんないな」
「アルダーニャ侵攻は、フィッチにすれば挑戦だった。果たして最新の技術が、満足している人を従わせることができるのか」
「そうか! だからフィッチは、おれたちには価値がないって、必死になって吹き込んでいたんだ」
おれがハッとすると、ヴィトは「フフフ」と微笑んだ。
「自分の価値は自分で決められる。たとえ国がちっぽけだろうが、漁や農家で生計を立てていようが、そんなことは関係ない。すべては自分を信じるかどうかなんだ」
おれにはまるで、惑星フェニックスとアルダーニャが、リンクしているように思える。(ケイティとナバービも、最後は自分たちの友情を信じて、再会できたんだ)
そのとき、おれは「あっ」と叫ぶ。
「どうしてあのとき、父さんは……、父さんはふくろうを放ったんだよ!」
「イザリア王国だって!?」
おれが驚くと、ヴィトはきびしい表情で、バケモノ望遠鏡の台座に腰をおろした。
「彼らは島国アルダーニャを統一し、新イザリア王国を作ろうとしていたんだ。インモビリアール社の表向きは光学機器メーカーだが、そのメンバーはほとんどが軍人だ」
フィッチは私設軍人という、金で動く兵隊を雇っていたらしい。
彼らはヨーロッパで「赤シャツ隊」と呼ばれていた。
「それじゃあ、あの赤いシャツの兵士は、軍人だったんだ!」
「フィッチはイザリアから莫大な支援を受け、会社を大きくした。その見返りにイザリア統一運動に参加していたのさ。簡単に言えば、他国を占領し、イザリアに吸収する」
なんだかすごい話に、おれはため息をつき、暗くなってきた空をあおいだ。
ヴィトの話によれば、インモビリアール社の兵力は月日を追うごとに巨大化し、本国にはざっと1万もの軍人が待機しているという。
(……いつまた、攻めてくるか分からねえな)
だが、おれにはまだ解けない謎があった。
「こう言っちゃなんだけど、大国がなんで、ちっぽけなアルダーニャを狙うんだ?」
そんなおれの素直な疑問に、ヴィトが静かに笑う。
「フフ、ちっぽけだからさ」
「えっ?」
おれはポカンとヴィトを見る。
「分からないか? フィッチはあれで人を操る天才だ。人から自信を奪う方法を知っている。アルダーニャが標的にされたのは、まさに自分たちがちっぽけな存在だと、みんなが心のどこかでそう信じていたからだ。フィッチは、それを利用しようとしたんだ」
分かるようで分からず、おれは思わず首をかしげた。
ヴィトが続ける。
「フィッチの狙いは、アルダーニャに価値がないと信じ込ませること。みんながそれを鵜呑みにすれば、きっと簡単に支配できただろう。だが、フィッチにも唯一、怖れていたことがある。そう、アルダーニャのみんなさ」
「おれたちを、怖れてた? だって、あいつは、おれたちには価値がないって……」
「いいか、ティム。アルダーニャは世界で1番、宇宙を信じている。フィッチのように文明の進化や、目に見える物質にしか価値を認められない者にとって、アルダーニャは脅威なのさ」
フィッチが怖れていたのは、アルダーニャのみんなが、今のままで充分幸せだと気付いていることだったのか。
「フィッチは、それを怖れて……、いや、でも、まだよく分かんないな」
「アルダーニャ侵攻は、フィッチにすれば挑戦だった。果たして最新の技術が、満足している人を従わせることができるのか」
「そうか! だからフィッチは、おれたちには価値がないって、必死になって吹き込んでいたんだ」
おれがハッとすると、ヴィトは「フフフ」と微笑んだ。
「自分の価値は自分で決められる。たとえ国がちっぽけだろうが、漁や農家で生計を立てていようが、そんなことは関係ない。すべては自分を信じるかどうかなんだ」
おれにはまるで、惑星フェニックスとアルダーニャが、リンクしているように思える。(ケイティとナバービも、最後は自分たちの友情を信じて、再会できたんだ)
そのとき、おれは「あっ」と叫ぶ。
「どうしてあのとき、父さんは……、父さんはふくろうを放ったんだよ!」
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