スター☆ウォッチャー

泉蒼

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第12章 真実を見ろ!

12-4

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 あれから、父さんことヴィトは、町でみんなと久しぶりの再会を楽しんでいた。おれとサリーとヘンリは、家に戻ろうとしていた――けれど、おれは気になることがあって、「先に帰ってくれ」と言い、やっぱりひとりで広場に戻ってきたんだ。

 どうしても、あの望遠鏡が気になってしまう。

 広場につくともう町人の姿はなく、もちろんインモビリアール社の社員もいなかった。おれは、広場に置いてきぼりを食ったバケモノ望遠鏡を見てため息をつく。

「大丈夫だ、おまえに罪はねえしよ。だれも、分解したり破壊したりなんかしねえよ」

 親に見捨てられたこの憐れな望遠鏡を、おれは何とか守ってやろうと考えていた。たしかに、生みの親には置いていかれたかもしれないが、こいつは優秀な望遠鏡なんだ。

(それに、おれにチャンスをくれた、救世主だもんな)

 このバケモノ望遠鏡で惑星フェニックスを観測したとき、おれは今までで一番わくわくしている自分に気がついたんだ。

 きっとこいつも、嘘をでっち上げた再生鏡の映像なんか、映したくはなかっただろう。

「おまえも、真実が見たかったんだろ?」

 おれが望遠鏡にそう語りかけたとき、いきなり背後から肩をつかまれた。

「真実か」

「あ……」

 ふり返ると、父さんが立っていた。

 まだどうも慣れない父さんが、おれを見て、口もとに笑みを浮かべている。

「ティム、スターウォッチャーへの第一歩を、ようやく踏み出せたようだな」

「いや、まあ……」

 やっぱりまだ、おれにはどうリアクションしていいのか分からない。

 だからおれは、照れ隠しなんかじゃなくて、ヴィトから顔を逸らせながらもこうつぶやいた。

「たとえおれの父さんでも、許せねえ」

「ん?」

 ヴィトが初めて、驚くように聞いた。

 おれは、真剣な目でヴィトをじっと見つめる。

「あのとき、あんたは、惑星フェニックスを破壊しようとしたんだ! そうだろっ!?」

 おれに「一歩を踏み出せ」と勇気をくれたヴィトが、今度は惑星フェニックスに現れ、呪いのふくろうを解き放ったんだ――これだけは、絶対に許せない!

「あんたのせいでっ、ケイティとナバービが大変な目に遭ったんだ!」

「アッハッハッハ!」

 けれど、ヴィトは突然に笑いだした。

「何が可笑しいんだっ」

「いやあ、悪い。つい思い出してしまってな。私もいつか、父のハリスに、今のティムと同じようなことを言っていたんだ」

「えっ……、ハリスじいちゃんに」

「いいか、ティム――」

 そうしてヴィトがおれに語り始めたのは、まさに驚くべき真実だった。

 おれは、本当に目が飛び出るほど、ヴィトの話に驚くことになるのだ。
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