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第12章 真実を見ろ!
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「助かったぜ! サンキューな」
おれはそう言い、思わずバケモノ望遠鏡のボディを愛おしくなでる。
初めは怖かったこの望遠鏡が、なんだか好きになってしまったんだ。
「ティム、ついに夢を叶えたなり。ここにちゃんと、ティムとおいらの名前も記録したでやんす」
おれはヘンリが記録した、完成したばかりの本を手に取ってみた。
「ほんとうだ、ジーンとくるぜ! おれが著者だなんて、まだ信じらんねえよ」
そのとき。
「見ろよ、本が、光ってるぞっ!」
町のみんなが、演壇前に捨てられた本の山を見て騒ぎ始めた。
「本が光ってるだって? ヘンリ、行ってみよう!」
おれはヘンリを肩に乗せ、本の山へ走っていった。そして光を放つ本の山から、1冊の本を抜き取り、ページをパラパラとめくってみる。
「すげえよ、ヘンリ! 本の内容がぜんぶ書き変わってるぞ……てことは、惑星フェニックスはもう、じいちゃんの書いた物語とは、変わっちまったってことなのか?」
「そうなり。ティムの観測で、本と惑星フェニックスが新しく生まれ変わったでやんす。ほら、この本の最後のページにも、ティムとおいらの名前が記録されているなりよ」
バタバタ、バタバタっ!
するとそこへ、すっかり忘れていたフィッチが、
「ほ、本が変わったっ? ふ、ふざけたことを!」
四つん這いのまま、本の山に向かってきたのだ。
フィッチは光を放つ本の山におおいかぶさると、何冊も何冊も、本のページを繰り始めた。
「ふははっ……み、認めんぞ! こんなこと、認めんぞっ……ふははは」
やがて、本が書き変わる出来事を目の当たりにしたフィッチは、ひとり気が触れたようにずっとヘラヘラと笑っていた。
「おまえはどこの船乗りなんだ」
そのときヴィトの声が聞こえ、おれはふとふり返る。
見ると、町のみんなもヴィトが指差す、あの海賊帽子を被る男をにらんでいた。
「アイツ、ウソッ!」
ジョバンニが叫ぶ。おれは「まさかっ」と、ハッとした。
(ずっと怪しいと思ってたんだ……)
あの片目に黒い眼帯をした男も、フィッチの仲間じゃないかと、そう気付いたんだ。
正体がバレて焦ったのか、海賊帽子を被ったその男が、
「ひ、ひいぃぃ」
血相を変えて逃げ出した。
「捕まえろっ!」
けれど、町の漁師たちが「逃がすもんか」と、いっせいに男を取り押さえたのだ。
「おい、見ろっ」
「こいつの服の中に、インモビリアール社のバッジが入ってやがったぞ」
そんな漁師たちの声に、
「やっぱりだ。あいつ、アルダーニャの船乗りなんかじゃなかったんだ」
おれはため息をついた。
みんなのもとへ走ると、片目に黒い眼帯をした男は、ロープで、ぐるぐる巻きにされていた。海賊帽子は、情けなく地べたでひっくり返っている。
おれの肩に止まったヘンリも、呆れたようにつぶやいた。
「……初めからこの男がバケモノ望遠鏡を見て、みんなの前で怖がる役目だったなりね」
「フィッチの野郎め! あの手この手を使い、アルダーニャをだますつもりだったんだ」
バンっ!
「いいか、これは立派な詐欺罪だ!」
すると、演壇に飛び乗ったヴィトが、赤シャツの兵士たちに向かって叫んだ。
「今すぐアルダーニャから立ち去らなければ、国をあげてイザリア共和国を訴える! イ
ンモビリアール社が、母国イザリアの足を引っ張った会社だと分かれば、もう国へは帰れないぞ! おまえたちは一生、世界の笑いものだっ!」
ヴィトの言葉に、赤シャツの兵士たちがビクッと背筋を伸ばす。計画がバレてしまい、
おまけにボスのフィッチが混乱したせいもあって、兵士たちは行き場をなくしたようにオロオロとしていた。
そんな憐れな部下たちに、町のみんなも声を大にして言う。
「さっさとインチキ野郎をつれて、この国から出ていけっ!」
「おれたちは、今のまんまで、じゅうぶん幸せなんだよっ!」
町人たちが手にレンガや石をつかみ、彼らにジリジリ迫る。
「ひっ、ひいいいっ!」
バタバタバタっ、ズザザザザザ―――っ!
こうしてインモビリアール社は、アルダーニャから逃げるように退散していった。
おれはそう言い、思わずバケモノ望遠鏡のボディを愛おしくなでる。
初めは怖かったこの望遠鏡が、なんだか好きになってしまったんだ。
「ティム、ついに夢を叶えたなり。ここにちゃんと、ティムとおいらの名前も記録したでやんす」
おれはヘンリが記録した、完成したばかりの本を手に取ってみた。
「ほんとうだ、ジーンとくるぜ! おれが著者だなんて、まだ信じらんねえよ」
そのとき。
「見ろよ、本が、光ってるぞっ!」
町のみんなが、演壇前に捨てられた本の山を見て騒ぎ始めた。
「本が光ってるだって? ヘンリ、行ってみよう!」
おれはヘンリを肩に乗せ、本の山へ走っていった。そして光を放つ本の山から、1冊の本を抜き取り、ページをパラパラとめくってみる。
「すげえよ、ヘンリ! 本の内容がぜんぶ書き変わってるぞ……てことは、惑星フェニックスはもう、じいちゃんの書いた物語とは、変わっちまったってことなのか?」
「そうなり。ティムの観測で、本と惑星フェニックスが新しく生まれ変わったでやんす。ほら、この本の最後のページにも、ティムとおいらの名前が記録されているなりよ」
バタバタ、バタバタっ!
するとそこへ、すっかり忘れていたフィッチが、
「ほ、本が変わったっ? ふ、ふざけたことを!」
四つん這いのまま、本の山に向かってきたのだ。
フィッチは光を放つ本の山におおいかぶさると、何冊も何冊も、本のページを繰り始めた。
「ふははっ……み、認めんぞ! こんなこと、認めんぞっ……ふははは」
やがて、本が書き変わる出来事を目の当たりにしたフィッチは、ひとり気が触れたようにずっとヘラヘラと笑っていた。
「おまえはどこの船乗りなんだ」
そのときヴィトの声が聞こえ、おれはふとふり返る。
見ると、町のみんなもヴィトが指差す、あの海賊帽子を被る男をにらんでいた。
「アイツ、ウソッ!」
ジョバンニが叫ぶ。おれは「まさかっ」と、ハッとした。
(ずっと怪しいと思ってたんだ……)
あの片目に黒い眼帯をした男も、フィッチの仲間じゃないかと、そう気付いたんだ。
正体がバレて焦ったのか、海賊帽子を被ったその男が、
「ひ、ひいぃぃ」
血相を変えて逃げ出した。
「捕まえろっ!」
けれど、町の漁師たちが「逃がすもんか」と、いっせいに男を取り押さえたのだ。
「おい、見ろっ」
「こいつの服の中に、インモビリアール社のバッジが入ってやがったぞ」
そんな漁師たちの声に、
「やっぱりだ。あいつ、アルダーニャの船乗りなんかじゃなかったんだ」
おれはため息をついた。
みんなのもとへ走ると、片目に黒い眼帯をした男は、ロープで、ぐるぐる巻きにされていた。海賊帽子は、情けなく地べたでひっくり返っている。
おれの肩に止まったヘンリも、呆れたようにつぶやいた。
「……初めからこの男がバケモノ望遠鏡を見て、みんなの前で怖がる役目だったなりね」
「フィッチの野郎め! あの手この手を使い、アルダーニャをだますつもりだったんだ」
バンっ!
「いいか、これは立派な詐欺罪だ!」
すると、演壇に飛び乗ったヴィトが、赤シャツの兵士たちに向かって叫んだ。
「今すぐアルダーニャから立ち去らなければ、国をあげてイザリア共和国を訴える! イ
ンモビリアール社が、母国イザリアの足を引っ張った会社だと分かれば、もう国へは帰れないぞ! おまえたちは一生、世界の笑いものだっ!」
ヴィトの言葉に、赤シャツの兵士たちがビクッと背筋を伸ばす。計画がバレてしまい、
おまけにボスのフィッチが混乱したせいもあって、兵士たちは行き場をなくしたようにオロオロとしていた。
そんな憐れな部下たちに、町のみんなも声を大にして言う。
「さっさとインチキ野郎をつれて、この国から出ていけっ!」
「おれたちは、今のまんまで、じゅうぶん幸せなんだよっ!」
町人たちが手にレンガや石をつかみ、彼らにジリジリ迫る。
「ひっ、ひいいいっ!」
バタバタバタっ、ズザザザザザ―――っ!
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