スター☆ウォッチャー

泉蒼

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第12章 真実を見ろ!

12-3

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「助かったぜ! サンキューな」

 おれはそう言い、思わずバケモノ望遠鏡のボディを愛おしくなでる。

 初めは怖かったこの望遠鏡が、なんだか好きになってしまったんだ。

「ティム、ついに夢を叶えたなり。ここにちゃんと、ティムとおいらの名前も記録したでやんす」

 おれはヘンリが記録した、完成したばかりの本を手に取ってみた。

「ほんとうだ、ジーンとくるぜ! おれが著者だなんて、まだ信じらんねえよ」

 そのとき。

「見ろよ、本が、光ってるぞっ!」

 町のみんなが、演壇前に捨てられた本の山を見て騒ぎ始めた。

「本が光ってるだって? ヘンリ、行ってみよう!」

 おれはヘンリを肩に乗せ、本の山へ走っていった。そして光を放つ本の山から、1冊の本を抜き取り、ページをパラパラとめくってみる。


「すげえよ、ヘンリ! 本の内容がぜんぶ書き変わってるぞ……てことは、惑星フェニックスはもう、じいちゃんの書いた物語とは、変わっちまったってことなのか?」

「そうなり。ティムの観測で、本と惑星フェニックスが新しく生まれ変わったでやんす。ほら、この本の最後のページにも、ティムとおいらの名前が記録されているなりよ」

 バタバタ、バタバタっ!

 するとそこへ、すっかり忘れていたフィッチが、

「ほ、本が変わったっ? ふ、ふざけたことを!」

 四つん這いのまま、本の山に向かってきたのだ。

 フィッチは光を放つ本の山におおいかぶさると、何冊も何冊も、本のページを繰り始めた。

「ふははっ……み、認めんぞ! こんなこと、認めんぞっ……ふははは」

 やがて、本が書き変わる出来事を目の当たりにしたフィッチは、ひとり気が触れたようにずっとヘラヘラと笑っていた。

「おまえはどこの船乗りなんだ」

 そのときヴィトの声が聞こえ、おれはふとふり返る。

 見ると、町のみんなもヴィトが指差す、あの海賊帽子を被る男をにらんでいた。

「アイツ、ウソッ!」

 ジョバンニが叫ぶ。おれは「まさかっ」と、ハッとした。

(ずっと怪しいと思ってたんだ……)

 あの片目に黒い眼帯をした男も、フィッチの仲間じゃないかと、そう気付いたんだ。

 正体がバレて焦ったのか、海賊帽子を被ったその男が、

「ひ、ひいぃぃ」

 血相を変えて逃げ出した。

「捕まえろっ!」

 けれど、町の漁師たちが「逃がすもんか」と、いっせいに男を取り押さえたのだ。

「おい、見ろっ」

「こいつの服の中に、インモビリアール社のバッジが入ってやがったぞ」

 そんな漁師たちの声に、

「やっぱりだ。あいつ、アルダーニャの船乗りなんかじゃなかったんだ」

 おれはため息をついた。

 みんなのもとへ走ると、片目に黒い眼帯をした男は、ロープで、ぐるぐる巻きにされていた。海賊帽子は、情けなく地べたでひっくり返っている。

 おれの肩に止まったヘンリも、呆れたようにつぶやいた。

「……初めからこの男がバケモノ望遠鏡を見て、みんなの前で怖がる役目だったなりね」

「フィッチの野郎め! あの手この手を使い、アルダーニャをだますつもりだったんだ」

 バンっ!

「いいか、これは立派な詐欺罪だ!」

 すると、演壇に飛び乗ったヴィトが、赤シャツの兵士たちに向かって叫んだ。

「今すぐアルダーニャから立ち去らなければ、国をあげてイザリア共和国を訴える! イ
ンモビリアール社が、母国イザリアの足を引っ張った会社だと分かれば、もう国へは帰れないぞ! おまえたちは一生、世界の笑いものだっ!」

 ヴィトの言葉に、赤シャツの兵士たちがビクッと背筋を伸ばす。計画がバレてしまい、

 おまけにボスのフィッチが混乱したせいもあって、兵士たちは行き場をなくしたようにオロオロとしていた。
そんな憐れな部下たちに、町のみんなも声を大にして言う。

「さっさとインチキ野郎をつれて、この国から出ていけっ!」

「おれたちは、今のまんまで、じゅうぶん幸せなんだよっ!」

 町人たちが手にレンガや石をつかみ、彼らにジリジリ迫る。

「ひっ、ひいいいっ!」

 バタバタバタっ、ズザザザザザ―――っ!

 こうしてインモビリアール社は、アルダーニャから逃げるように退散していった。

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