55 / 64
第12章 真実を見ろ!
12-1
しおりを挟む
「がんばれっ、ティム!」
次々に沸き起こる町人たちの声援に、おれは力をもらい、最後の観測に取りかかった。
★ ★ ★
ナバービは2頭の馬と仲良くなったが、雲の上のケイティには再会できていない。
とそこへ、この惑星では見たことのない、美しい毛並みの白馬が草原にやってきた。
ナバービはさっそく、その白馬に声をかけた。
「こんにちは、お美しいお馬さんね」
「私は宇宙を旅する者です。ですが、この星を通り過ぎようとしたら、急に力が尽きてしまいまして……」
白馬はそう言い、「ぐう」と、お腹を鳴らして草原に座りこんでしまう。
「もしかして、あなたはお腹が空いているのね?」
「ええ――、しばらくの間、何も食べていなくて」
ナバービはハッとし、バーンズが置いていったりんごを、小屋の中に取りに行った。
「お馬さん、このりんごをどうぞ」
ナバービが、白馬にりんごを差し出すと、2頭の馬があわてて言う。
「ナバービさんっ! それは妖精の歌声を取り戻すためのものでは?」
「そうですよ! 雲の上のケイティを、助けるんじゃないのですかっ」
2頭の馬が騒ぐと、りんごを見た白馬もあきらめたように首をふる。
「そんな大切なりんごは……、いただけません」
そして白馬は、とうとう力尽きるように、ぐったりと首を地面に横たわらせた。
ところが、弱り果てた白馬の口もとに、ナバービがりんごを持っていく。
「ナバービさん、ダメですよ!」
2頭の馬に注意されても、ナバービは首を横にふる。
「いいのよ。お美しいお馬さん、気にせずに食べてください」
「よっ、よろしいのですか? ……それは、妖精を救うためのものでは?」
「友だちの歌声は、いつかあたしが何とかしてみせますわ……、だから心配なんかしないで、あなたは、りんごを
食べて元気になってください」
「これは、なんともありがたい! バクバク、バクバクバクっ、うまいうまいっ」
白馬は、ナバービの好意に、目に涙を浮かべながらりんごを頬張った。やがて、白馬の瞳がどんどんと輝きを取
り戻す。だがそのとき、「ぐへへへへっ!」と、またバーンズの笑い声が聞こえてきたのだ。
「どうしてっ?」
ナバービが驚いて辺りを見回すと、なんと小屋の前に、翼がボロボロになったバーンズが姿を見せた。
「あ、あなた……まだ、生きていたのねっ」
「この愚か者め!」
身体から炎を噴き上げるバーンズが、よろよろとナバービたちのもとへ歩いてくる。
「そのりんごで、おまえたちのどっちか一人でも、望みを叶えれば良かったのだっ!」
バーンズはナバービを通り過ぎ、りんごを食べた白馬のもとへ近づいていく。
「なにが友情だっ……こんな、得体の知れない旅人にりんごを、ぐううぅぅ!」
バーンズが恨めしそうににらみつけると、白馬はスッと立ちあがって言った。
「どうやら、私は望みの叶うりんごを食べてしまったようですね。フフ、それではあなたに、私だけの望みを叶え
てもらうとしましょうか」
「なんだとっ!」
次々に沸き起こる町人たちの声援に、おれは力をもらい、最後の観測に取りかかった。
★ ★ ★
ナバービは2頭の馬と仲良くなったが、雲の上のケイティには再会できていない。
とそこへ、この惑星では見たことのない、美しい毛並みの白馬が草原にやってきた。
ナバービはさっそく、その白馬に声をかけた。
「こんにちは、お美しいお馬さんね」
「私は宇宙を旅する者です。ですが、この星を通り過ぎようとしたら、急に力が尽きてしまいまして……」
白馬はそう言い、「ぐう」と、お腹を鳴らして草原に座りこんでしまう。
「もしかして、あなたはお腹が空いているのね?」
「ええ――、しばらくの間、何も食べていなくて」
ナバービはハッとし、バーンズが置いていったりんごを、小屋の中に取りに行った。
「お馬さん、このりんごをどうぞ」
ナバービが、白馬にりんごを差し出すと、2頭の馬があわてて言う。
「ナバービさんっ! それは妖精の歌声を取り戻すためのものでは?」
「そうですよ! 雲の上のケイティを、助けるんじゃないのですかっ」
2頭の馬が騒ぐと、りんごを見た白馬もあきらめたように首をふる。
「そんな大切なりんごは……、いただけません」
そして白馬は、とうとう力尽きるように、ぐったりと首を地面に横たわらせた。
ところが、弱り果てた白馬の口もとに、ナバービがりんごを持っていく。
「ナバービさん、ダメですよ!」
2頭の馬に注意されても、ナバービは首を横にふる。
「いいのよ。お美しいお馬さん、気にせずに食べてください」
「よっ、よろしいのですか? ……それは、妖精を救うためのものでは?」
「友だちの歌声は、いつかあたしが何とかしてみせますわ……、だから心配なんかしないで、あなたは、りんごを
食べて元気になってください」
「これは、なんともありがたい! バクバク、バクバクバクっ、うまいうまいっ」
白馬は、ナバービの好意に、目に涙を浮かべながらりんごを頬張った。やがて、白馬の瞳がどんどんと輝きを取
り戻す。だがそのとき、「ぐへへへへっ!」と、またバーンズの笑い声が聞こえてきたのだ。
「どうしてっ?」
ナバービが驚いて辺りを見回すと、なんと小屋の前に、翼がボロボロになったバーンズが姿を見せた。
「あ、あなた……まだ、生きていたのねっ」
「この愚か者め!」
身体から炎を噴き上げるバーンズが、よろよろとナバービたちのもとへ歩いてくる。
「そのりんごで、おまえたちのどっちか一人でも、望みを叶えれば良かったのだっ!」
バーンズはナバービを通り過ぎ、りんごを食べた白馬のもとへ近づいていく。
「なにが友情だっ……こんな、得体の知れない旅人にりんごを、ぐううぅぅ!」
バーンズが恨めしそうににらみつけると、白馬はスッと立ちあがって言った。
「どうやら、私は望みの叶うりんごを食べてしまったようですね。フフ、それではあなたに、私だけの望みを叶え
てもらうとしましょうか」
「なんだとっ!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる