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第11章 バケモノ望遠鏡を見破れ!
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山を下って町の広場につくとまた演壇が組まれていた。そこにドン・フィッチが立ち、町人が群がるように集まっている。
「ええ、ええ、時代遅れのスターウォッチャーの本など、もう必要ありませんね」
大きな荷袋を背負った赤シャツの兵士数人が、フィッチのもとへ走っていった。そして演壇の前で、その荷袋の中身をぶちまけたのだ。
バサバサっ――――ドサリっ!
「ヘンリ、荷袋の中身は何だっ?」
おれが聞くと、肩に止まっていたヘンリが上空へ飛び、荷袋の中身を確認して叫んだ。
「ティム、大変なり! ぜんぶハリスさんの本なりっ、惑星フェニックスの本なりよ!」
「な、なんだって!?」
一瞬あっ気にとられたおれだったが、すぐに怒りがふつふつと込み上げる。
「ええ、ええ――それでは契約時間の開始です。お集まりのみなさんも家にまだ『惑星フェニックス』の本があれば、ここへ持ってきなさい。ええ、もちろん本を捨てた人から優先に、わが社の一員になってもらいましょう、ええ、ええ」
「あいつめ、じいちゃんの本を捨てろだって――うわっ!」
「どけっ!」
もう我慢できず、おれが演壇へ突進しようとすると、いきなり背後から海賊帽子を被った男に突き飛ばされた。おれは「くそ!」とよろけながらも、そいつを追って演壇の前へ躍り出る。そこでは、さっきの海賊帽子の男が、町人たちに向かって必死にこう訴えていたんだ。
「みんな! 本なんて捨てて、インモビリアール社を選ぶんだ! そうすれば、裕福な暮らしが手に入るぞ!」
(片目に眼帯の男?)
おれは、そいつを見てハッとする。
(思い出したぞっ!)
前にここで、フィッチに使命されてバケモノ望遠鏡を覗いた男だ。みんなの前で惑星フェニックスを観測し、「怖ろしいふくろうがいるぞ」と叫んだ奴に違いない。
そんなどこか胡散臭い男が、「みじめな生活とおさらばするんだっ」と、インモビリアール社の社員になるかどうか迷っている町人たちを説得しようとしているのだった。おれは焦って、「こんな奴の言うことを信じちゃいけねえ!」と、フィッチと眼帯の男に負けじと大声をあげる。
ところが、
バサっ、バサバサっ、バサバサっ――――バサバサバサバサっ!
町のみんなが、持ってきた本をどんどんと地べたに投げ捨てた。
「みんなっ、どうして……」
「ティムっ……あっ、本が」
駆け寄ってきたサリーも、あまりの光景に両手で顔をおおう。
「くそ……、どうしてじいちゃんの本を信じてくれねえんだよっ!」
おれの悲痛の叫びは、誰の耳にも届いていなかった。町人はおれのことなんて目もくれず、フィッチに忠誠を尽くすように本をどんどん投げ捨てているのだ。
「ええ、ええ、時代遅れのスターウォッチャーの本など、もう必要ありませんね」
大きな荷袋を背負った赤シャツの兵士数人が、フィッチのもとへ走っていった。そして演壇の前で、その荷袋の中身をぶちまけたのだ。
バサバサっ――――ドサリっ!
「ヘンリ、荷袋の中身は何だっ?」
おれが聞くと、肩に止まっていたヘンリが上空へ飛び、荷袋の中身を確認して叫んだ。
「ティム、大変なり! ぜんぶハリスさんの本なりっ、惑星フェニックスの本なりよ!」
「な、なんだって!?」
一瞬あっ気にとられたおれだったが、すぐに怒りがふつふつと込み上げる。
「ええ、ええ――それでは契約時間の開始です。お集まりのみなさんも家にまだ『惑星フェニックス』の本があれば、ここへ持ってきなさい。ええ、もちろん本を捨てた人から優先に、わが社の一員になってもらいましょう、ええ、ええ」
「あいつめ、じいちゃんの本を捨てろだって――うわっ!」
「どけっ!」
もう我慢できず、おれが演壇へ突進しようとすると、いきなり背後から海賊帽子を被った男に突き飛ばされた。おれは「くそ!」とよろけながらも、そいつを追って演壇の前へ躍り出る。そこでは、さっきの海賊帽子の男が、町人たちに向かって必死にこう訴えていたんだ。
「みんな! 本なんて捨てて、インモビリアール社を選ぶんだ! そうすれば、裕福な暮らしが手に入るぞ!」
(片目に眼帯の男?)
おれは、そいつを見てハッとする。
(思い出したぞっ!)
前にここで、フィッチに使命されてバケモノ望遠鏡を覗いた男だ。みんなの前で惑星フェニックスを観測し、「怖ろしいふくろうがいるぞ」と叫んだ奴に違いない。
そんなどこか胡散臭い男が、「みじめな生活とおさらばするんだっ」と、インモビリアール社の社員になるかどうか迷っている町人たちを説得しようとしているのだった。おれは焦って、「こんな奴の言うことを信じちゃいけねえ!」と、フィッチと眼帯の男に負けじと大声をあげる。
ところが、
バサっ、バサバサっ、バサバサっ――――バサバサバサバサっ!
町のみんなが、持ってきた本をどんどんと地べたに投げ捨てた。
「みんなっ、どうして……」
「ティムっ……あっ、本が」
駆け寄ってきたサリーも、あまりの光景に両手で顔をおおう。
「くそ……、どうしてじいちゃんの本を信じてくれねえんだよっ!」
おれの悲痛の叫びは、誰の耳にも届いていなかった。町人はおれのことなんて目もくれず、フィッチに忠誠を尽くすように本をどんどん投げ捨てているのだ。
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