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第10章 本の完成まで、あともう少し?!
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「ヘンリ、観測再開だ!」
ヘンリにうなずきかけたおれは、またマジカルメガネに意識を集中させる。
★ ★ ★
「ど、どうか命だけはっ」
必死で命乞いをするバーンズに、ヴィトは無表情のまま言う。
「逃げ帰ってくるような奴は、このリーラ星賊団にはいらない」
「オマエっ、ヤクタタズっ!」
ジョヴァンニが叫んだ瞬間、ヴィトがフライングエッグを急旋回させる。
ギュイーンっ――――シュウウーンっ!
そうして、あっという間にヴィトとジョバンニは宇宙にむかって飛んで行ったのだ。
ヴィトに見捨てれたバーンズは、「うううっ」とうめき声をあげた。
するとまた、バーンズの体から赤黒い煙がもうもうと噴き出す。次第にその煙は炎となってバーンズの体を一気
に包んでいった。「アアアっ、ウグアアアっ」と、バーンズの痛々しい叫び声がこだまする。やがて、バーンズは
自らの炎に焼かれてしまったのだ。
★ ★ ★
「やったなり! 惑星フェニックスから、バーンズが消えたなりよ!」
本の上でヘンリがバンザイをする。つられておれも喜ぼうと思ったら、ヘンリの足の下のページが目に入って、思わず口をつぐんでしまった。
まだ、本には余白があったんだ。
「ページに余白があるってことは、まだ終わってねえってことだよな?」
「うーん、そう言われれば、そうなり。おや? まだ白紙のページもあるなり! でも、たしかにバーンズは消えたなりよ……うーん、これってどういうことなりか?」
「おれの観測が上手いから、ページが余った……まさか、そんなわけねえよな。なあヘンリ、本のページ数と惑星の物語には、何か関係があるんじゃねえか?」
おれの指摘に、「あっ、そうだったなり」と、ヘンリが照れ隠しするように鼻をかく。
「てへへ、ティムの言った通りなり。本のページ数と惑星の物語は、リンクしてるでやんすよ。だから、ページが残ってるってことは、まだ結末を迎えてないってことなり……てへへ」
「だと思ったぜ、ふぅ。じゃあ、喜びはひとまず置いといて、最後まで観測だな。じゃあヘンリは、記録の続きを頼んだぜ」
★ ★ ★
「まだ歌は歌えないけど、きっとわたしたち、良いお友だちになれるわ」
ケイティは、雲の上に残った人形たちと、なんとか仲良くなろうとがんばっていた。
「ボクは妖精の歌にしか興味がないんだ。だから友達だなんて無理に決まってるさ」
「そうよ。歌えないなら、わたしはあなたを、好きになんてなれないわ」
ところが、いくらケイティが呼びかけても、人形たちは興味を示そうとしなかった。
そこへ突然、消えたはずのバーンズが雲の上に姿をあらわしたのだ。
「ほら見たことか! おれ様の言ったとおりじゃねえか、ぐヘへ」
牢屋の中で、ケイティが目を丸くする。なんとバーンズの姿は変わり果てていた。
立派な翼は今、毛がむしられたようにボロボロで、バーンズの体からはもうもうと紫色の炎が噴きだしている。
変わり果てた姿のバーンズが、くるみ割り人形たちを、ジロリとにらんだ。
「こいつらは妖精の歌にしか興味がない薄情者だ! さっさと燃やしてしまうがいいっ」
そう言ってバーンズが、ケイティのいる牢屋の中へ、赤いりんごをほうり投げる。
2体のくるみ割り人形はびくびくと体を震わせた。
「ケイティさん! どうかぼくたちを、燃やさないでくださいっ」
りんごを受けとったケイティに、兵隊の人形がたまらず声をあげた。
女の子の人形も、「そうよ、お友だちになりましょう」と声を震わせて言う。
とたんに態度を変えた人形に、ケイティはため息をついた。
「これはいらないわ」
なんとケイティは、バーンズにまたりんごを投げ返したのだ。
「わたしはね、歌が大好きな人を憎めないの。そうねぇ、少し時間をくれない?」
ケイティはそう言い、バーンズからくるみ割り人形たちに向き直る。
2体の人形が、意表をつかれたようにポカンとした。
「ケイティさんっ、ぼくたちを、燃やさないのですかっ」
「あなたに時間をあげたら、いったいどうなるの?」
人形たちに見つめられ、ケイティは笑顔で腰に手をあてる。
「うーんとね。お人形さんたちに、歌のレッスンをしてあげようかなって。わたしが歌えないなら、お人形さんた
ちが歌えばいいでしょ!」
突然のケイティのアイデアに、バーンズの目が真っ赤になった。「なんだとっ!」と、バーンズの体からさらに
大きな炎が噴きだす。
その紫の炎は、たちまちバーンズの頭上へ燃え移った。
「うわああぁ! アツいっ、アツいぞっ、くそうっ!」
火を消そうとバーンズが翼を何度もばたつかせ、体の火をふり払う。
けれど、炎に抵抗すればするほど、炎はさらに大きく燃え上がった。
「うぐあっ、お、おぼえてやがれぇっ」
バサバサ、バササっ――バタバタバタっ!
やがて、バーンズは雲の上からふらふらと、地上にむかって落下していった。
ヘンリにうなずきかけたおれは、またマジカルメガネに意識を集中させる。
★ ★ ★
「ど、どうか命だけはっ」
必死で命乞いをするバーンズに、ヴィトは無表情のまま言う。
「逃げ帰ってくるような奴は、このリーラ星賊団にはいらない」
「オマエっ、ヤクタタズっ!」
ジョヴァンニが叫んだ瞬間、ヴィトがフライングエッグを急旋回させる。
ギュイーンっ――――シュウウーンっ!
そうして、あっという間にヴィトとジョバンニは宇宙にむかって飛んで行ったのだ。
ヴィトに見捨てれたバーンズは、「うううっ」とうめき声をあげた。
するとまた、バーンズの体から赤黒い煙がもうもうと噴き出す。次第にその煙は炎となってバーンズの体を一気
に包んでいった。「アアアっ、ウグアアアっ」と、バーンズの痛々しい叫び声がこだまする。やがて、バーンズは
自らの炎に焼かれてしまったのだ。
★ ★ ★
「やったなり! 惑星フェニックスから、バーンズが消えたなりよ!」
本の上でヘンリがバンザイをする。つられておれも喜ぼうと思ったら、ヘンリの足の下のページが目に入って、思わず口をつぐんでしまった。
まだ、本には余白があったんだ。
「ページに余白があるってことは、まだ終わってねえってことだよな?」
「うーん、そう言われれば、そうなり。おや? まだ白紙のページもあるなり! でも、たしかにバーンズは消えたなりよ……うーん、これってどういうことなりか?」
「おれの観測が上手いから、ページが余った……まさか、そんなわけねえよな。なあヘンリ、本のページ数と惑星の物語には、何か関係があるんじゃねえか?」
おれの指摘に、「あっ、そうだったなり」と、ヘンリが照れ隠しするように鼻をかく。
「てへへ、ティムの言った通りなり。本のページ数と惑星の物語は、リンクしてるでやんすよ。だから、ページが残ってるってことは、まだ結末を迎えてないってことなり……てへへ」
「だと思ったぜ、ふぅ。じゃあ、喜びはひとまず置いといて、最後まで観測だな。じゃあヘンリは、記録の続きを頼んだぜ」
★ ★ ★
「まだ歌は歌えないけど、きっとわたしたち、良いお友だちになれるわ」
ケイティは、雲の上に残った人形たちと、なんとか仲良くなろうとがんばっていた。
「ボクは妖精の歌にしか興味がないんだ。だから友達だなんて無理に決まってるさ」
「そうよ。歌えないなら、わたしはあなたを、好きになんてなれないわ」
ところが、いくらケイティが呼びかけても、人形たちは興味を示そうとしなかった。
そこへ突然、消えたはずのバーンズが雲の上に姿をあらわしたのだ。
「ほら見たことか! おれ様の言ったとおりじゃねえか、ぐヘへ」
牢屋の中で、ケイティが目を丸くする。なんとバーンズの姿は変わり果てていた。
立派な翼は今、毛がむしられたようにボロボロで、バーンズの体からはもうもうと紫色の炎が噴きだしている。
変わり果てた姿のバーンズが、くるみ割り人形たちを、ジロリとにらんだ。
「こいつらは妖精の歌にしか興味がない薄情者だ! さっさと燃やしてしまうがいいっ」
そう言ってバーンズが、ケイティのいる牢屋の中へ、赤いりんごをほうり投げる。
2体のくるみ割り人形はびくびくと体を震わせた。
「ケイティさん! どうかぼくたちを、燃やさないでくださいっ」
りんごを受けとったケイティに、兵隊の人形がたまらず声をあげた。
女の子の人形も、「そうよ、お友だちになりましょう」と声を震わせて言う。
とたんに態度を変えた人形に、ケイティはため息をついた。
「これはいらないわ」
なんとケイティは、バーンズにまたりんごを投げ返したのだ。
「わたしはね、歌が大好きな人を憎めないの。そうねぇ、少し時間をくれない?」
ケイティはそう言い、バーンズからくるみ割り人形たちに向き直る。
2体の人形が、意表をつかれたようにポカンとした。
「ケイティさんっ、ぼくたちを、燃やさないのですかっ」
「あなたに時間をあげたら、いったいどうなるの?」
人形たちに見つめられ、ケイティは笑顔で腰に手をあてる。
「うーんとね。お人形さんたちに、歌のレッスンをしてあげようかなって。わたしが歌えないなら、お人形さんた
ちが歌えばいいでしょ!」
突然のケイティのアイデアに、バーンズの目が真っ赤になった。「なんだとっ!」と、バーンズの体からさらに
大きな炎が噴きだす。
その紫の炎は、たちまちバーンズの頭上へ燃え移った。
「うわああぁ! アツいっ、アツいぞっ、くそうっ!」
火を消そうとバーンズが翼を何度もばたつかせ、体の火をふり払う。
けれど、炎に抵抗すればするほど、炎はさらに大きく燃え上がった。
「うぐあっ、お、おぼえてやがれぇっ」
バサバサ、バササっ――バタバタバタっ!
やがて、バーンズは雲の上からふらふらと、地上にむかって落下していった。
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