47 / 64
第9章 バーンズの計算!
9-3
しおりを挟む
「……ヘンリ? ひょっとして、腹が減ってるのか?」
そう聞くと、ヘンリが「てへへ」と、照れ笑いを浮かべる。
「なんだよ、ハハ……。てっきりおれは、物語の分析でもしてるんだって、感心してたのにさ。まあ、腹が減っては戦はできねえって言うしな。よしヘンリ、おれに任せろ」
ずっこけそうになったおれは、気を取りなおし、リュックサックを取りにいった。その中から、おれは母さん特製のサンドイッチを持って、暖炉の中に戻ってきたんだ。
「こうもりって、チーズとか大丈夫なのか?」
「食べるでやんすっ」
一瞬、こうもりの胃腸が心配になったけれど、ヘンリが構わずサンドをつかみとる。
「バクっ! う、うんまいなりっ! バクバクバクっ、ガツガツガツっ」
「心配無用か……ハハ。 じゃあ、おれも腹ごしらえすっかな」
煙突の中で、おれとヘンリは仲良くサンドイッチを食べた。どうやら、ヘンリは母さんのサンドが気に入ったらしい。自分と同じ大きさをしたヘンリのサンドが、みるみるうちになくなっていく。
おれもお腹が満たされると、「ゲフっ」とお腹をさするヘンリに質問した。
「バーンズはどこに行ったのかな。もうあきらめて、消えちゃったとか?」
「うーん、ゲフっ。まだ、なにか企んでいるんじゃないかって、おいらは考えてるなり」
「そうだよな……りんごを突き返されて、鋭い目つきをしてたもんな。ああ、なんだか気になってきたぞ。よしヘンリ、すぐに観測を再開するぞ!」
本の上でうなずくヘンリを見て、おれはすぐにマジカルメガネのつまみを回した。
★ ★ ★
雲の牢屋にやってきたバーンズは、翼に2体の人形を抱えていた。
「お人形さん? この人たちは誰なの?」
ケイティは突然の訪問者に目を丸くしたが、兵隊とかわいらしい女の子の人形を見て顔をパッと明るくさせる。
するとバーンズが、牢屋の前に2体の人形を並べた。
「ぐへへ、このくるみ割り人形たちは、歌を聴くのが大好きなんだよ、ふへへ」
2体の人形が、むくりと起き上がる。
「ケイティさん。歌を聴かせてくれるのなら、ぼくはあなたの友だちになりましょう」
兵隊の人形がしゃべると、女の子の人形もクルンとした瞳をケイティにむけた。
「わたしも歌が大好き。だから、ぜひあなたの歌声を聴かせてちょうだい!」
歌が大好きな人形だと聞いて、ケイティの目は輝いた。
そんな妖精の心のスキを、バーンズは見逃さなかった。すぐにバーンズがりんごを投げ入れたのだ。
ケイティはためらいもせず、そのりんごを手に取ってしまう。
「ふへへ、あとは歌声を取り戻すだけだ。これで人形も友だちになってくれるぞ、ぐヘへ」
ケイティは目をつむり、りんごを口に運んだ。
ところが、りんごがくちびるに触れるすんぜんで、ケイティが首を横にふる。
「ダメよっ! 今ごろナバービは、魔法が使えずに落ち込んでいるわ」
ケイティは、手にもったリンゴを、ポイと牢屋の外に投げた。
「バーンズさん、あなたがりんごを届けてあげて! お願い、ナバービのところへ」
「……」
バーンズはなにも言わなかった。だがその鋭い目は真っ赤に血走っている。
やがて、「ぐうぅ」と喉を鳴らしたバーンズは、くちばしにりんごを刺して雲の上から飛び去って行った。
そう聞くと、ヘンリが「てへへ」と、照れ笑いを浮かべる。
「なんだよ、ハハ……。てっきりおれは、物語の分析でもしてるんだって、感心してたのにさ。まあ、腹が減っては戦はできねえって言うしな。よしヘンリ、おれに任せろ」
ずっこけそうになったおれは、気を取りなおし、リュックサックを取りにいった。その中から、おれは母さん特製のサンドイッチを持って、暖炉の中に戻ってきたんだ。
「こうもりって、チーズとか大丈夫なのか?」
「食べるでやんすっ」
一瞬、こうもりの胃腸が心配になったけれど、ヘンリが構わずサンドをつかみとる。
「バクっ! う、うんまいなりっ! バクバクバクっ、ガツガツガツっ」
「心配無用か……ハハ。 じゃあ、おれも腹ごしらえすっかな」
煙突の中で、おれとヘンリは仲良くサンドイッチを食べた。どうやら、ヘンリは母さんのサンドが気に入ったらしい。自分と同じ大きさをしたヘンリのサンドが、みるみるうちになくなっていく。
おれもお腹が満たされると、「ゲフっ」とお腹をさするヘンリに質問した。
「バーンズはどこに行ったのかな。もうあきらめて、消えちゃったとか?」
「うーん、ゲフっ。まだ、なにか企んでいるんじゃないかって、おいらは考えてるなり」
「そうだよな……りんごを突き返されて、鋭い目つきをしてたもんな。ああ、なんだか気になってきたぞ。よしヘンリ、すぐに観測を再開するぞ!」
本の上でうなずくヘンリを見て、おれはすぐにマジカルメガネのつまみを回した。
★ ★ ★
雲の牢屋にやってきたバーンズは、翼に2体の人形を抱えていた。
「お人形さん? この人たちは誰なの?」
ケイティは突然の訪問者に目を丸くしたが、兵隊とかわいらしい女の子の人形を見て顔をパッと明るくさせる。
するとバーンズが、牢屋の前に2体の人形を並べた。
「ぐへへ、このくるみ割り人形たちは、歌を聴くのが大好きなんだよ、ふへへ」
2体の人形が、むくりと起き上がる。
「ケイティさん。歌を聴かせてくれるのなら、ぼくはあなたの友だちになりましょう」
兵隊の人形がしゃべると、女の子の人形もクルンとした瞳をケイティにむけた。
「わたしも歌が大好き。だから、ぜひあなたの歌声を聴かせてちょうだい!」
歌が大好きな人形だと聞いて、ケイティの目は輝いた。
そんな妖精の心のスキを、バーンズは見逃さなかった。すぐにバーンズがりんごを投げ入れたのだ。
ケイティはためらいもせず、そのりんごを手に取ってしまう。
「ふへへ、あとは歌声を取り戻すだけだ。これで人形も友だちになってくれるぞ、ぐヘへ」
ケイティは目をつむり、りんごを口に運んだ。
ところが、りんごがくちびるに触れるすんぜんで、ケイティが首を横にふる。
「ダメよっ! 今ごろナバービは、魔法が使えずに落ち込んでいるわ」
ケイティは、手にもったリンゴを、ポイと牢屋の外に投げた。
「バーンズさん、あなたがりんごを届けてあげて! お願い、ナバービのところへ」
「……」
バーンズはなにも言わなかった。だがその鋭い目は真っ赤に血走っている。
やがて、「ぐうぅ」と喉を鳴らしたバーンズは、くちばしにりんごを刺して雲の上から飛び去って行った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
児童小説をどうぞ
小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる