スター☆ウォッチャー

泉蒼

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第9章 バーンズの計算!

9-3

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「……ヘンリ? ひょっとして、腹が減ってるのか?」

 そう聞くと、ヘンリが「てへへ」と、照れ笑いを浮かべる。

「なんだよ、ハハ……。てっきりおれは、物語の分析でもしてるんだって、感心してたのにさ。まあ、腹が減っては戦はできねえって言うしな。よしヘンリ、おれに任せろ」

 ずっこけそうになったおれは、気を取りなおし、リュックサックを取りにいった。その中から、おれは母さん特製のサンドイッチを持って、暖炉の中に戻ってきたんだ。

「こうもりって、チーズとか大丈夫なのか?」

「食べるでやんすっ」

 一瞬、こうもりの胃腸が心配になったけれど、ヘンリが構わずサンドをつかみとる。

「バクっ! う、うんまいなりっ! バクバクバクっ、ガツガツガツっ」

「心配無用か……ハハ。 じゃあ、おれも腹ごしらえすっかな」

 煙突の中で、おれとヘンリは仲良くサンドイッチを食べた。どうやら、ヘンリは母さんのサンドが気に入ったらしい。自分と同じ大きさをしたヘンリのサンドが、みるみるうちになくなっていく。

 おれもお腹が満たされると、「ゲフっ」とお腹をさするヘンリに質問した。

「バーンズはどこに行ったのかな。もうあきらめて、消えちゃったとか?」

「うーん、ゲフっ。まだ、なにか企んでいるんじゃないかって、おいらは考えてるなり」

「そうだよな……りんごを突き返されて、鋭い目つきをしてたもんな。ああ、なんだか気になってきたぞ。よしヘンリ、すぐに観測を再開するぞ!」

 本の上でうなずくヘンリを見て、おれはすぐにマジカルメガネのつまみを回した。

     ★     ★     ★

  雲の牢屋にやってきたバーンズは、翼に2体の人形を抱えていた。

 「お人形さん? この人たちは誰なの?」

  ケイティは突然の訪問者に目を丸くしたが、兵隊とかわいらしい女の子の人形を見て顔をパッと明るくさせる。

  するとバーンズが、牢屋の前に2体の人形を並べた。

 「ぐへへ、このくるみ割り人形たちは、歌を聴くのが大好きなんだよ、ふへへ」

  2体の人形が、むくりと起き上がる。

 「ケイティさん。歌を聴かせてくれるのなら、ぼくはあなたの友だちになりましょう」

  兵隊の人形がしゃべると、女の子の人形もクルンとした瞳をケイティにむけた。

 「わたしも歌が大好き。だから、ぜひあなたの歌声を聴かせてちょうだい!」

  歌が大好きな人形だと聞いて、ケイティの目は輝いた。

  そんな妖精の心のスキを、バーンズは見逃さなかった。すぐにバーンズがりんごを投げ入れたのだ。

  ケイティはためらいもせず、そのりんごを手に取ってしまう。

 「ふへへ、あとは歌声を取り戻すだけだ。これで人形も友だちになってくれるぞ、ぐヘへ」

  ケイティは目をつむり、りんごを口に運んだ。

  ところが、りんごがくちびるに触れるすんぜんで、ケイティが首を横にふる。

 「ダメよっ! 今ごろナバービは、魔法が使えずに落ち込んでいるわ」

  ケイティは、手にもったリンゴを、ポイと牢屋の外に投げた。

 「バーンズさん、あなたがりんごを届けてあげて! お願い、ナバービのところへ」

 「……」

  バーンズはなにも言わなかった。だがその鋭い目は真っ赤に血走っている。

  やがて、「ぐうぅ」と喉を鳴らしたバーンズは、くちばしにりんごを刺して雲の上から飛び去って行った。
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