スター☆ウォッチャー

泉蒼

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第7章 まさかの仕打ち?

7-3

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「スターウォッチャーの本は嘘つきだ!」

 山を下って町の広場につくと、バケモノ望遠鏡をのぞく人たちが、じいちゃんの悪口を叫んでいた。ヴィトのせいで自信をなくしていたおれは、たまらなくなって耳をふさぐ。

 おれは一気に広場を駆け抜けると、商店街までやってきた。すると、偶然に母さんを発見したんだ。母さんは腕に買い物袋を下げ、アレンさんのお店で魚を見つめている。

 そのとき――、

「よ、ティムじゃねえか!」

 と、腰にエプロンを巻いたアレンさんが声をかけてきた。

(――ヤバっ。まだ、アレンさんに謝ってなかったっけ……)

 この前、家に本を届けてくれたアレンさんに、おれはひどいことを言ってしまったんだ。

「ティム、そんなとこに突っ立ってねえで、こっちへこいよ!」

 けれど、アレンさんはそんなおれを笑顔で迎えてくれた。

(……まったく、アレンさんはどこまでお人好しなんだ)

 鼻をすすって店まで歩いていくと、アレンさんは「メイさんのお見舞いだ」って、大きな魚を紙に包んで、おれに持たせてくれたんだ。

「見ろよ、でっけえサーモンだろ? 今朝な、運よく漁港で仕入れたんだぜ」

「えっと……この前は、ひでえこと言って、ええと……ごめん」

「アッハハ、ったくティムは。それで謝ってるつもりなのか?」

 そんな指摘に思わず鼻をかくと、母さんが隣で肩をすくめた。母さんの左腕には包帯が巻かれている。

「母さん、腕のケガはもう大丈夫なの?」

「ええ。こんなのへっちゃらよ。そうだ、ティム。アレンさんにもらったお魚で、特製サンドイッチを作ってみようかしら。ティムはサーモンとチーズのサンドが好きだものね」

「よかったな、ティム。……あ、いらっしゃい!」

 おれと母さんがしゃべっていると、アレンさんが他のお客さんに呼ばれて接客に走った。その光景をなんとなく見ていたおれは、「えっ、どうして!」と、思わず声をあげてしまうのだ。なんと、アレンさんが魚を買ったお客さんに、本をプレゼントしていたんだ。

(――じいちゃんの本だ!)

 でも、おれは本を受けとるお客を見て、何だかヒヤヒヤしてしまった。また、本が捨てられるんじゃないかって。
けれど、そんな心配は無用だった。お客は「私はスターウォッチャーを信じるわ」と微笑んで、アレンさんが差しだす本を受けとってくれた。

「どうだ、見たかよ!」

 接客からもどってきたアレンさんが、自慢げに胸を張ってみせる。

「おれの製本がすばらしいんだな。まあ、ちょっと落書きは残っちまったけど、アハハ」

「ティム、アレンさんはね、捨てられた本を読めるように綺麗にしてくれたのよ。商店街の人も協力してくれて、ハリスさんの本を町の人に配ってくれているの」

 おれは、おどろきで言葉を失ってしまう。

「ったく、感動しちまったか? みんな、ハリスさんの本を読んで育ってきたからさ、どこかで信じてるんだよ。インモビリアール社がなにを言っても、スターウォッチャーの書く本が本当なんだって。だからティムも、良いスターウォッチャーになれよ……」

 そこまで言ってアレンさんは、とっさに自分の口を手でおおう。母さんの前で、家族を奪ったスターウォッチャーの話をしたから、まずいっ、と思ったんだろう。

「おっと、そろそろ仕事にもどるわ……エヘヘ。じゃあな、ティム」

(――あっ、おい、逃げるのかよっ!)

 おれがヒヤヒヤしていると、母さんは「ティム、帰ろうか」と、優しく言ってくれた。

 そのあとは、ひさしぶりに母さんと家まで歩いた。たぶん母さんは、おれがスターウォッチャーを目指していることに気がついている。それなのに、なんで反対しないのかな? 母さんは、何を考えているんだろう?  

 そんなことを思って歩いていると、突然母さんが、驚くことを言ったんだ。

「ティム、家に帰ったら話しがあるの。フランシスさん、ティムの父さんのことでね」

「……」

 つい、あっ気にとられてしまったおれに、母さんがさらに爆弾発言をする。

「ティムにはだまっていたけど、じつは家に、秘密の部屋があるのよ」

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