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第7章 まさかの仕打ち?
7-2
しおりを挟む草原に降りたったバーンズは、剣のようなくちばしでナバービの小屋を打ちつけた。
「きゃあっ。あ、あなたは、誰なのですかっ?」
扉を開けたナバービが、目の前に巨大なふくろうを見て、腰を抜かしてしまう。
「おれ様はな、この星の新しい支配者だ」
「し、支配者? この星に、そんな人は必要ありません。さあ、帰ってくださいっ」
強い眼差しをむけるナバービに、バーンズは不機嫌そうにくちばしを鳴らした。
「おまえは魔女なんだろ? だったら、おれ様のために魔法を使ってみねえか?」
「あたしは妖精を喜ばせるために、魔法を使うの。あなたのような人に、魔法は使えませんっ」
きっぱりと断ったナバービに、バーンズは、鋭い目つきで不気味に笑う。
「ぐヘへへ、それはケイティのことだろ? あいつは生意気だったから、罰としてこのおれ様が歌声を奪ってやっ
たんだ! ムダだぜ、おまえの魔法も届かない牢屋にいるんだ、ふへへ」
バーンズの話を聞いて、ナバービは地べたにへたりこんでしまった。するとバーンズの目から、ケイティのとき
とおなじように、紫の光線が飛びだしたのだ。
「あ……ああ……」
「これでもう魔法は使えねえな。くっくっ、これでケイティとも会えねえぞ、ふへへ!」
こうして歌声と魔法を奪いとったバーンズは、再び大空へと飛び立っていったのだ。
★ ★ ★
「なんもできねえ自分が、情けねえぜっ」
ただ見ていることしかできない自分に、おれはイラだっていた。
「ティムの役目は、惑星フェニックスのありのままの姿を観測することなり」
そうフォローするヘンリが、シルクハットの中から小さな鏡を取りだした。
「これで自分の顔を見てみるなり」と、ヘンリが差しだすその鏡をのぞいてみると、「うわっ」とおれは思わず叫んでしまう。目の下に、大きなクマができていたんだ。
「ティムは今、疲れているなり。今日はここで中止にして休憩したほうがいいでやんす」
たしかにおれの心は、もうへとへとだった。
スターウォッチャーのチャレンジはドキドキハラハラの連続。観測に慣れていないおれには、心を落ちつけて観測するなんて、とてもじゃないけどできなかったんだ。
「疲れたら休む――それもスターウォッチャーにとって、大切な勇気でやんす」
「休むことも勇気か……わかったよ、ヘンリ」
ヘンリの言葉にため息をついたら、おれはふと母さんのことを思いだした。
(そういえば、腕のケガは大丈夫かな?)
そんなことを考えていると、ちょうど広場の方角から、教会の鐘の音がうっすらと聞こえてきた。なんだか母さんが、「帰ってきなさい」って、おれを呼んでいるような気がする。
「ヘンリ、山小屋の留守番を頼んでいいかな? いちど家に帰ってみるよ」
「もちろんなり! ティムが元気になって帰ってくるのを、ここで待ってるでやんす」
そうしておれは、いったん観測を切り上げて、町に戻ることにしたのだ。
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