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第6章 惑星フェニックスの訪問者
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★ ★ ★
エメラルドグリーンの海に囲まれた島には、妖精と魔女が住んでいた。
妖精の名前はケイティ。銀髪のボーイッシュな髪形をした女の子で、彼女の仕事は「幸せの歌」を歌うことだっ
た。
「タンっ、タララ~ン!」
今日もケイティは、自慢の歌声を披露しようと、雲の上で歌の練習に励んでいた。
一方、地上には、ナバービという魔女が暮らしていた。
彼女の仕事は、やっぱり「魔法を使う」ことだった。紫のローブ姿の彼女は、手に持ったほうきに魔法をかけ、
小屋の中を掃除しているようだった。
「そうねえ。床掃除床が終わったら海に魔法をかけて、甘いスープでも作ろうかしら」
陽気な妖精としっかりものの魔女。ふたりはこの星で仲良く暮らしているようだ。
★ ★ ★
「ティム、イイ感じですよ。はじめての観測にしては、上出来でやんす!」
「ふぅ、最初はどうなるのかって緊張したけど、マジカルメガネのおかげだな。イヤホンがふたりの声や情報を拾って、ちゃんとおれの耳に届けてくれるんだ。それにメガネのレンズが、自動で物語のシーンを追いかけてくれる! まさにこれは魔法のメガネだぜ!」
「ティムの語りも上手です。おいらも、筆が進んだなりよ」
そんなヘンリが記録した、惑星フェニックスの本を、おれはちょっと覗いてみた。
「うわー、すげえ。白紙のページに、ヘンリの字が埋まってる。これって、おれが星を観測して、語った通りなんだよな?」
「一言一句、ティムが星を見て語った物語を書いたなりよ。この勢いで、本を完成させましょう」
「そうだな。惑星フェニックスにいるケイティとナバービを見たら、ちょっとホッとしたぜ。フィッチは、この星が呪われているなんて言ったけど、やっぱり嘘だったんだよ」
「インモビリアール社は嘘をつき、アルダーニャの人々をだまそうとしただけ……、そうだといいんですがね。でも、物語は始まったばかりです。この星がスターウォッチャーを呼んだからには、きっとティムに、見てほしいストーリーがあるってことでやんす」
そう言ってヘンリは、あごをさすった。
(……ヘンリは、意外と心配性なんだな)
そんなことを思ったおれは、また煙突の接眼レンズを見あげて、観測を再開した。
エメラルドグリーンの海に囲まれた島には、妖精と魔女が住んでいた。
妖精の名前はケイティ。銀髪のボーイッシュな髪形をした女の子で、彼女の仕事は「幸せの歌」を歌うことだっ
た。
「タンっ、タララ~ン!」
今日もケイティは、自慢の歌声を披露しようと、雲の上で歌の練習に励んでいた。
一方、地上には、ナバービという魔女が暮らしていた。
彼女の仕事は、やっぱり「魔法を使う」ことだった。紫のローブ姿の彼女は、手に持ったほうきに魔法をかけ、
小屋の中を掃除しているようだった。
「そうねえ。床掃除床が終わったら海に魔法をかけて、甘いスープでも作ろうかしら」
陽気な妖精としっかりものの魔女。ふたりはこの星で仲良く暮らしているようだ。
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「ティム、イイ感じですよ。はじめての観測にしては、上出来でやんす!」
「ふぅ、最初はどうなるのかって緊張したけど、マジカルメガネのおかげだな。イヤホンがふたりの声や情報を拾って、ちゃんとおれの耳に届けてくれるんだ。それにメガネのレンズが、自動で物語のシーンを追いかけてくれる! まさにこれは魔法のメガネだぜ!」
「ティムの語りも上手です。おいらも、筆が進んだなりよ」
そんなヘンリが記録した、惑星フェニックスの本を、おれはちょっと覗いてみた。
「うわー、すげえ。白紙のページに、ヘンリの字が埋まってる。これって、おれが星を観測して、語った通りなんだよな?」
「一言一句、ティムが星を見て語った物語を書いたなりよ。この勢いで、本を完成させましょう」
「そうだな。惑星フェニックスにいるケイティとナバービを見たら、ちょっとホッとしたぜ。フィッチは、この星が呪われているなんて言ったけど、やっぱり嘘だったんだよ」
「インモビリアール社は嘘をつき、アルダーニャの人々をだまそうとしただけ……、そうだといいんですがね。でも、物語は始まったばかりです。この星がスターウォッチャーを呼んだからには、きっとティムに、見てほしいストーリーがあるってことでやんす」
そう言ってヘンリは、あごをさすった。
(……ヘンリは、意外と心配性なんだな)
そんなことを思ったおれは、また煙突の接眼レンズを見あげて、観測を再開した。
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