スター☆ウォッチャー

泉蒼

文字の大きさ
上 下
33 / 64
第5章 ピンチの後のビッグチャンス?

5-8

しおりを挟む
 おれがポカンとすると、ヘンリが観測部屋の暖炉を指差した。

「外を飛び回って、ハッとしたなり! 煙突に遠眼鏡を装着すれば、望遠鏡になるかもって! 上手くいけば、これで惑星フェニックスが観測できるかもなりよっ」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ……1回、落ち着いて考えさせてくれ……」

 おれは、ヘンリのアイデアを頭の中で整理してみる――煙突にレンズを装着し、マジカルメガネをかけたおれが、星を見上げて観測する。

「つまり、山小屋が望遠鏡に?」

 そのイメージがリアルに見えた瞬間、おれは、大声で叫んでいた。

「い、イケるかもしんねえっ!」

「もう、やるしかないなりよ。さあティム、ついてきてください!」

 ヘンリはそう言い、おれの手をすり抜け、暖炉の中へ飛んでいった。

「……でも、本当に大丈夫なのか? 煙突を望遠鏡にするなんて、そんな話は聞いたこと
がない。……もしハリスじいちゃんが聞いたら、絶対に腰を抜かすぞ……」

 ただ、これは自分で蒔いた種だ。おれはもう、ダメもとで何でもやるしかないんだ。おれは頭を抱えたくなるのをグッとこらえ、ヘンリを追い煙突の中へ入っていった。不安もあるが、不思議なことにおれの心はなぜかわくわくしている。もし煙突が望遠鏡になればと考えると、興奮するのだ。それに、フィッチの望遠鏡にだって負ける気がしない。

 カンカンカンカン!

 おれは片手に本と万年筆を持ち、煙突内のハシゴを登って、煙突の先まで進んだ。そこから覗くと、青い空が見えた。ヘンリはすでに煙突の先(出口部分)に、透明のガラスを装着していた。

「こんなデケえ遠眼鏡も、シルクハットから取り出せるのか……すげえ。つまり、煙突の先につけた遠眼鏡が、望遠鏡でいうところの、対物レンズってことか?」

「そうなり。あとはもう1枚、煙突の下部にも遠眼鏡を装着するなりよ」

「ええっと、それはつまり、望遠鏡でいえば、接眼レンズってことか?」

「そうなり。この接眼レンズをティムが覗いて、惑星フェニックスを観測するんです」

「たしかにこれで、煙突は、望遠鏡と同じ仕組みになってる。すごいぜ」

 これで、新しい望遠鏡が手に入った。おれは嬉しくなって思わず拳を握る。あとは観測するだけ。煙突望遠鏡なら、インモビリアール社の望遠鏡にも勝てそうな気がしてきた。

「ティム、再チャレンジするなりっ」

「よおーしっ、やってやるぜ!」

 おれたちは何とかアイデアを見つけ、ピンチをチャンスに変えた。上手くいくかは分からないが、思わぬどんでん返しだ。おれの胸は「これが正解だ!」と言わんばかりにわくわくしている。

「準備はいいなりか?」

 観測の準備を始めたヘンリが、ハシゴの段に広げた本に立ってそうたずねる。おれは接眼レンズに近いハシゴに立ち、「こっちも準備オーケーだ!」と、万年筆を身体で支えるヘンリを見下ろし、力強く答えたんだ。そして、おれはマジカルメガネを装着。

「さあ、今から世界に1つの煙突望遠鏡で、惑星フェニックスの観測開始だ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ねぇ、おかあさん

たまこ
児童書・童話
おかあさんがだいすきな、おんなのこのおはなしです。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

世にも奇妙な日本昔話

佐野絹恵(サノキヌエ)
児童書・童話
昔々ある所に お爺さんと お婆さんが住んでいました お婆さんは川に洗濯物へ お爺さんは山へ竹取りへ 竹取り? お婆さんが川で 洗濯物をしていると 巨大な亀が泳いで来ました ??? ━━━━━━━━━━━━━━━ 貴方の知っている日本昔話とは 異なる話 ミステリーコメディ小説

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

児童小説をどうぞ

小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。

灰色のねこっち

ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」 気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。 そして一匹と一人の共同生活が始まった。 そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。 最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。 ※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。

処理中です...