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第5章 ピンチの後のビッグチャンス?
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おれは深呼吸し、再びレンズの中央に星を捉えにいく。
けれどそのとき、
――宇宙は、危険だ!
突然、フィッチの叫び声が、おれの頭の中を駆け巡り始めたのだ。
――惑星フェニックスは、呪われているぞ!
その声は、どんどん頭の中で大きくなっていく。
「ダメだっ……、ヘンリ、手が震えて……、ピントが合わせられねえ」
さっきまで調子が良かったのに、頭の声のせいで、とたんに望遠鏡の操作が上手くいかなくなる。それが、またおれを焦らせた。そして今度は、嫌なシーンが次々と頭に浮かんできたんだ――インモビリアール社の望遠鏡を覗いて怖がる船乗り、――腕にケガをした母さん、――ボロボロにされたじいちゃんの本。
おれは、急に怖くなって目をぎゅっとつぶった。
「ティム、慌てなくていいなり! さあ、もういちどっ」
「わ、分かってるんだ……でも、手の震えが止まらねえ」
「大丈夫なり! おいらがついてるなり。安心するなりっ」
(そ、そうだ、安心しろ……おれには、ヘンリがついてるじゃねえか!)
フィッチの野郎なんて気にするな、おれはそう思い、もういちど、落ち着いてレンズの中央に惑星フェニックスを捉えにかかった。
――ええ、ええ、そんなちっぽけな望遠鏡で、本当に観測なんて出来るんですか?
ところが、また頭の中でフィッチが、何度もしつこくおれにたずねてくるのだ。
「……う、うるせえ」
――ええ、ええ、ええ、なんてなんて小さな望遠鏡なんでしょう、くっくっくっく!
「だから、うるせえって……」
「ティムっ、集中するなりよ」
「分かってる……、けど、頭の声が、いっこうに鳴り止まねえんだっ!」
ヘンリの声はさらに小さくなり、代わりにフィッチの声がどんどん大きくなっていく。
――アルダーニャ国もおまえの望遠鏡も、ええ、ええ、ええ、なんてなんてちっぽけなんでしょう!
「ちっぽけ……くそ。本当に、ちっぽけだ。バケモノ望遠鏡とは……比べ物になんねえ」
おれがふとつぶやくと、ヘンリの焦った声がかすかに聞こえた。
「ティム、どうしたんですっ? さあ、もういちどっ、ピントを合わせるなりっ」
「ヘンリ……本当にこんな望遠鏡で大丈夫なのか? だって、小さすぎるよ……それにおれは、本当にスターウォッチャーになれるのか……経験なんて、ねえんだぜ」
「ティム! もっともっと気持ちを強く持つなり!」
ヘンリが必死に勇気づけてくれるが、おれの中で疑いが止まらなくなっていく。
「分かってるよ、そんなこと! けど、こんな望遠鏡じゃ―――――、ああっ!」
けれどそのとき、
――宇宙は、危険だ!
突然、フィッチの叫び声が、おれの頭の中を駆け巡り始めたのだ。
――惑星フェニックスは、呪われているぞ!
その声は、どんどん頭の中で大きくなっていく。
「ダメだっ……、ヘンリ、手が震えて……、ピントが合わせられねえ」
さっきまで調子が良かったのに、頭の声のせいで、とたんに望遠鏡の操作が上手くいかなくなる。それが、またおれを焦らせた。そして今度は、嫌なシーンが次々と頭に浮かんできたんだ――インモビリアール社の望遠鏡を覗いて怖がる船乗り、――腕にケガをした母さん、――ボロボロにされたじいちゃんの本。
おれは、急に怖くなって目をぎゅっとつぶった。
「ティム、慌てなくていいなり! さあ、もういちどっ」
「わ、分かってるんだ……でも、手の震えが止まらねえ」
「大丈夫なり! おいらがついてるなり。安心するなりっ」
(そ、そうだ、安心しろ……おれには、ヘンリがついてるじゃねえか!)
フィッチの野郎なんて気にするな、おれはそう思い、もういちど、落ち着いてレンズの中央に惑星フェニックスを捉えにかかった。
――ええ、ええ、そんなちっぽけな望遠鏡で、本当に観測なんて出来るんですか?
ところが、また頭の中でフィッチが、何度もしつこくおれにたずねてくるのだ。
「……う、うるせえ」
――ええ、ええ、ええ、なんてなんて小さな望遠鏡なんでしょう、くっくっくっく!
「だから、うるせえって……」
「ティムっ、集中するなりよ」
「分かってる……、けど、頭の声が、いっこうに鳴り止まねえんだっ!」
ヘンリの声はさらに小さくなり、代わりにフィッチの声がどんどん大きくなっていく。
――アルダーニャ国もおまえの望遠鏡も、ええ、ええ、ええ、なんてなんてちっぽけなんでしょう!
「ちっぽけ……くそ。本当に、ちっぽけだ。バケモノ望遠鏡とは……比べ物になんねえ」
おれがふとつぶやくと、ヘンリの焦った声がかすかに聞こえた。
「ティム、どうしたんですっ? さあ、もういちどっ、ピントを合わせるなりっ」
「ヘンリ……本当にこんな望遠鏡で大丈夫なのか? だって、小さすぎるよ……それにおれは、本当にスターウォッチャーになれるのか……経験なんて、ねえんだぜ」
「ティム! もっともっと気持ちを強く持つなり!」
ヘンリが必死に勇気づけてくれるが、おれの中で疑いが止まらなくなっていく。
「分かってるよ、そんなこと! けど、こんな望遠鏡じゃ―――――、ああっ!」
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