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第5章 ピンチの後のビッグチャンス?
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「サリー、こっちへ来なさい! ティムも!」
すぐに母さんがサリーをたぐり寄せる。そして、そのままテーブルの下に身を潜めた。
おれもテーブルの下で、ドキドキしながら辺りを見回す。ガラスの破片が、あちこちに飛び散っているのだ。
(なんで、ガラスが割れたんだっ?)
すると、台所の下に拳ほどの大きさの石を発見。それで、ピーンときた。
(誰かが、家に石を投げやがったんだ……)
そう思い、おれは犯人を突き止めようと、走って外へ飛び出した。「ティムっ」と母さんの声がしたが、それでもおれは「誰だっ!」と家の周りを駆け回った。
「……なんだよ、これ?」
そのとき、おれは家の石壁を見て、思わず目が点になる。壁の前に本が山積みにされているのだ。どれもボロボロにされたじいちゃんの本だ。さらに、表紙にはまた「嘘つき」と落書きまでされていた。
(ひどい……ひどすぎる)
おれが悔しさで拳を握ると、今度は「ティムっ」と、家の中からサリーの声がした。いそいでリビングに戻ると、母さんが腕から血を流していた。
「ティム、メイさんが!」
テーブルの下に隠れたサリーが、真っ青な顔をしている。けど、母さんは微笑んだ。
「こんなの、大丈夫よ。ガラスの破片が、ちょっとかすっただけ」
「でも!」
おれが叫ぶと、母さんが真面目な顔で言った。
「ティム、怒っちゃダメよ。誰が犯人かは分からないけど、本当はこんなこと、したくてやっているわけじゃないのよ」
「どうしてかばうんだよっ!」
「ティムっ」
また母さんに怖い顔で見つめられ、おれは思わず口ごもってしまう。
すると、サリーがテーブルの下から、四つん這いになって出てきた。
「メイさんを病院へ連れて行く。メイさん、病院へ行こうっ、ねっ!」
そんなサリーの言葉に、母さんは少し迷った顔をしてから答えた。
「分かったわ、サリー」
「おれも、行くよ」
「ダメ。ティムは家で、静かにしていなさい。それと犯人探しなんて、絶対にしないこと。いい?」
「で、でも……」
「いいわね?」
おれはうなずこうとしたが、やっぱり無理だった。
(母さんはケガまでしたのに、どうして犯人をかばうんだ? 家に石を投げられ、本をボロボロにされ、ケガまでしたのに……そんなの、絶対におかしいよっ!)
まったく文句を言わない母さんを見ていると、おれは悔しくてしかたがなかった。けれど、母さんの腕からは血がポタポタと流れている。だから、おれは「犯人探しなんてしないから早く病院へ行って」と言い、サリーに母さんを病院へ連れて行ってもらった。
すぐに母さんがサリーをたぐり寄せる。そして、そのままテーブルの下に身を潜めた。
おれもテーブルの下で、ドキドキしながら辺りを見回す。ガラスの破片が、あちこちに飛び散っているのだ。
(なんで、ガラスが割れたんだっ?)
すると、台所の下に拳ほどの大きさの石を発見。それで、ピーンときた。
(誰かが、家に石を投げやがったんだ……)
そう思い、おれは犯人を突き止めようと、走って外へ飛び出した。「ティムっ」と母さんの声がしたが、それでもおれは「誰だっ!」と家の周りを駆け回った。
「……なんだよ、これ?」
そのとき、おれは家の石壁を見て、思わず目が点になる。壁の前に本が山積みにされているのだ。どれもボロボロにされたじいちゃんの本だ。さらに、表紙にはまた「嘘つき」と落書きまでされていた。
(ひどい……ひどすぎる)
おれが悔しさで拳を握ると、今度は「ティムっ」と、家の中からサリーの声がした。いそいでリビングに戻ると、母さんが腕から血を流していた。
「ティム、メイさんが!」
テーブルの下に隠れたサリーが、真っ青な顔をしている。けど、母さんは微笑んだ。
「こんなの、大丈夫よ。ガラスの破片が、ちょっとかすっただけ」
「でも!」
おれが叫ぶと、母さんが真面目な顔で言った。
「ティム、怒っちゃダメよ。誰が犯人かは分からないけど、本当はこんなこと、したくてやっているわけじゃないのよ」
「どうしてかばうんだよっ!」
「ティムっ」
また母さんに怖い顔で見つめられ、おれは思わず口ごもってしまう。
すると、サリーがテーブルの下から、四つん這いになって出てきた。
「メイさんを病院へ連れて行く。メイさん、病院へ行こうっ、ねっ!」
そんなサリーの言葉に、母さんは少し迷った顔をしてから答えた。
「分かったわ、サリー」
「おれも、行くよ」
「ダメ。ティムは家で、静かにしていなさい。それと犯人探しなんて、絶対にしないこと。いい?」
「で、でも……」
「いいわね?」
おれはうなずこうとしたが、やっぱり無理だった。
(母さんはケガまでしたのに、どうして犯人をかばうんだ? 家に石を投げられ、本をボロボロにされ、ケガまでしたのに……そんなの、絶対におかしいよっ!)
まったく文句を言わない母さんを見ていると、おれは悔しくてしかたがなかった。けれど、母さんの腕からは血がポタポタと流れている。だから、おれは「犯人探しなんてしないから早く病院へ行って」と言い、サリーに母さんを病院へ連れて行ってもらった。
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