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第4章 陽気なパートナー
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あれから、ふたりで手分けして広場の本を持って帰った。家につくと、空はもう暗くなり始めていた。雨も降りそうだった。
「手紙よ」
さきに家に入ったサリーが、リビングから呼ぶ。
「どうしてサリーが、さきにおれの家に入ってるんだよ」
七冊本を抱えてリビングに行くとテーブルに一枚、羊皮紙が置いてあった。見ると、母さんからだ。
「どれどれ」
ティムへ
今朝は怒鳴ってしまってごめんなさい。
あのあと、町の人からお父さんを見かけた
という知らせがあって、迷ったものの、母
さんは隣町に探しに行くことにしました。
なるべく今夜中には帰りたいけど、どうや
ら海が荒れるようで、むずかしいかもしれ
ません。トマトソースがあるので、サリー
と、パスタでも茹でて食べてください。
メイ
父さんを、見かけた?
手紙を読み、仰天しそうになる。
……本当か?
正直、戸惑った。おれには父さんの記憶がない。小さいとき突然、行方不明になったのだ。
「いきなり言われても……」
ゆっくり言われても心の準備はできない。
とにかく、手紙の内容はサリーに伝えず。
父さんが見つかったなんて言えば、絶対にサリーは「家族再会パーティをしよう」と大騒ぎする。町の人に言い触らすだろうし、みんなを巻き込み、盛大なお祭りを始めるかもしれなかった。
そんなの、恥ずかしすぎる。
まだ、情報が本当かも分からない。
ただ、本当に帰ってきたらどうする?
「手紙よ」
さきに家に入ったサリーが、リビングから呼ぶ。
「どうしてサリーが、さきにおれの家に入ってるんだよ」
七冊本を抱えてリビングに行くとテーブルに一枚、羊皮紙が置いてあった。見ると、母さんからだ。
「どれどれ」
ティムへ
今朝は怒鳴ってしまってごめんなさい。
あのあと、町の人からお父さんを見かけた
という知らせがあって、迷ったものの、母
さんは隣町に探しに行くことにしました。
なるべく今夜中には帰りたいけど、どうや
ら海が荒れるようで、むずかしいかもしれ
ません。トマトソースがあるので、サリー
と、パスタでも茹でて食べてください。
メイ
父さんを、見かけた?
手紙を読み、仰天しそうになる。
……本当か?
正直、戸惑った。おれには父さんの記憶がない。小さいとき突然、行方不明になったのだ。
「いきなり言われても……」
ゆっくり言われても心の準備はできない。
とにかく、手紙の内容はサリーに伝えず。
父さんが見つかったなんて言えば、絶対にサリーは「家族再会パーティをしよう」と大騒ぎする。町の人に言い触らすだろうし、みんなを巻き込み、盛大なお祭りを始めるかもしれなかった。
そんなの、恥ずかしすぎる。
まだ、情報が本当かも分からない。
ただ、本当に帰ってきたらどうする?
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