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第2章 バケモノ望遠鏡
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汗だくで町の広場に戻る。
教会前の石畳にたくさんの町の人が集まっている。
祭りなら商店街の人が広場に屋台を出すのが風習。だが、どこにも綿菓子やイカ焼きの屋台は出ていない。それに、いつしか花火も終わってしまっていた。
サリーが残念そうに「屋台が出てない」と言い、おれも「お祭りなんかじゃなかったんだよ」と少しガッカリした。
ただ、普段は見かけない格好の大人に、おれは気を取られる。
「アルダーニャでは見かけない人たち広場にいるね。誰だろう?」
サリーも隊列を作る数十人の集団に気付いてそう聞いてきた。
「兵士かな。みんなそろって赤いシャツを着てる」
「外国からきたのかな?」
「まさか。王様か? わざわざ花火を打ち上げるなんて、クロマグロ以外に考えられるとすれば、それぐらいだぜ」
しかし、サリーは隊列の集団を見て「なんか物騒」とつぶやいた。
彼らは異様な出で立ちで、町の人の注目を嫌な意味で集めている。銃こそ持っていないが、背の高い帽子を被り、槍を地面に突き立て、微動だにせず立っている。
それに比べてアルダーニャの人はみんながちっぽけだ。町の人のほとんどは、麻のシャツに幅広のズボンを履いている。
「演壇だ」
サリーが遠くに演説スペースを見つけた。
おれは演壇の背後に、黒いシートで覆われた、巨大な物体を見つける。
「何だ、あれ? 町のみんなも、気になってるようだ」
町の人が演壇の周りに集まる。広場には熱気が帯び始めた。
そのとき、教会の隣の建物から、派手な格好の男が登場した。
「まさか」
赤のコートにひだ襟のついた白シャツ、クルンとカールした白髪、そしてピザ生地のように丸い顔をした男が神父に招かれて演壇に向かう。
「本当に王様か……」
風船のように突っ張ったお腹を揺らし、その男は登壇した。こっちを振り返って笑う。
「本日はアルダーニャにお招きいただき感謝します」
教会前の石畳にたくさんの町の人が集まっている。
祭りなら商店街の人が広場に屋台を出すのが風習。だが、どこにも綿菓子やイカ焼きの屋台は出ていない。それに、いつしか花火も終わってしまっていた。
サリーが残念そうに「屋台が出てない」と言い、おれも「お祭りなんかじゃなかったんだよ」と少しガッカリした。
ただ、普段は見かけない格好の大人に、おれは気を取られる。
「アルダーニャでは見かけない人たち広場にいるね。誰だろう?」
サリーも隊列を作る数十人の集団に気付いてそう聞いてきた。
「兵士かな。みんなそろって赤いシャツを着てる」
「外国からきたのかな?」
「まさか。王様か? わざわざ花火を打ち上げるなんて、クロマグロ以外に考えられるとすれば、それぐらいだぜ」
しかし、サリーは隊列の集団を見て「なんか物騒」とつぶやいた。
彼らは異様な出で立ちで、町の人の注目を嫌な意味で集めている。銃こそ持っていないが、背の高い帽子を被り、槍を地面に突き立て、微動だにせず立っている。
それに比べてアルダーニャの人はみんながちっぽけだ。町の人のほとんどは、麻のシャツに幅広のズボンを履いている。
「演壇だ」
サリーが遠くに演説スペースを見つけた。
おれは演壇の背後に、黒いシートで覆われた、巨大な物体を見つける。
「何だ、あれ? 町のみんなも、気になってるようだ」
町の人が演壇の周りに集まる。広場には熱気が帯び始めた。
そのとき、教会の隣の建物から、派手な格好の男が登場した。
「まさか」
赤のコートにひだ襟のついた白シャツ、クルンとカールした白髪、そしてピザ生地のように丸い顔をした男が神父に招かれて演壇に向かう。
「本当に王様か……」
風船のように突っ張ったお腹を揺らし、その男は登壇した。こっちを振り返って笑う。
「本日はアルダーニャにお招きいただき感謝します」
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