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第1章 ずっと忘れていた夢
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ハリスじいちゃんが死んでから、おれは一度も山小屋に行っていない。
おれはそれとなくサリーに聞く。
「荷袋には、何が入ってるんだ?」
目的地が山小屋じゃなければショックで、おれは遠回しにそう質問した。
「中身は、手袋、ぞうきん、スコップ、それにメイさん特製サンドイッチ、以上」
そっけない返事が返ってきた。
だけど、ひょっとしたら……。
荷袋には掃除道具らしきものが入っている。それって山小屋以外で使うか?
だが、山小屋なんて母さんが許すわけない……。
でも、ここは登山道だし……。
やっぱりひょっとするかも。
ひとりぶつぶつつぶやくおれにサリーが振り返る。
「仕方ないわね」
サリーがワンピースのポケットに手を入れた。
「じゃーん。これ、なーんだ?」
「あああっ! 山小屋の鍵だっ」
「着くまで黙っておこうと思ってたんだけどね。実は山小屋が水浸しなの。今朝、登山帰りの人が教えてくれてね。昨夜は雨がすごかったから。で、これから山小屋へ掃除に行くの」
「やっぱりか!」
「でも今回は緊急事態だから。いい、ティム? ハリスさんの望遠鏡と本には絶対に触っちゃダメ。約束破ったら二度と山小屋に行けないようにする。それがメイさんの条件。分かったティム?」
「……お、おう」
おれは素直にうなずく。
でも驚いたな。
じいちゃんの山小屋は二度と行くことができない遠い場所だと思っていた。
行けば母さんが悲しむ場所。
おれにとって山小屋はもうそんな場所になっていた。
ああ、でも。
なんだろう?
胸がわくわくしてきたぞ。
昔もおれはこんな気持ちで山道を登っていた気がする。
そう、思い出した。
はやる気持ちを抑え、こっそり山小屋に忍び込んだんだ。
でも、どうしてだ?
それほどまで、なぜ山小屋に行きたかったのか?
まったく思い出せない。
山小屋には何があった?
おれをわくわくさせる何か――、ああっ、思い出せない。
何度も母さんに注意され、それでも足繁く山小屋に通っていたおれ。
おれはそれとなくサリーに聞く。
「荷袋には、何が入ってるんだ?」
目的地が山小屋じゃなければショックで、おれは遠回しにそう質問した。
「中身は、手袋、ぞうきん、スコップ、それにメイさん特製サンドイッチ、以上」
そっけない返事が返ってきた。
だけど、ひょっとしたら……。
荷袋には掃除道具らしきものが入っている。それって山小屋以外で使うか?
だが、山小屋なんて母さんが許すわけない……。
でも、ここは登山道だし……。
やっぱりひょっとするかも。
ひとりぶつぶつつぶやくおれにサリーが振り返る。
「仕方ないわね」
サリーがワンピースのポケットに手を入れた。
「じゃーん。これ、なーんだ?」
「あああっ! 山小屋の鍵だっ」
「着くまで黙っておこうと思ってたんだけどね。実は山小屋が水浸しなの。今朝、登山帰りの人が教えてくれてね。昨夜は雨がすごかったから。で、これから山小屋へ掃除に行くの」
「やっぱりか!」
「でも今回は緊急事態だから。いい、ティム? ハリスさんの望遠鏡と本には絶対に触っちゃダメ。約束破ったら二度と山小屋に行けないようにする。それがメイさんの条件。分かったティム?」
「……お、おう」
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でも驚いたな。
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ああ、でも。
なんだろう?
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でも、どうしてだ?
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まったく思い出せない。
山小屋には何があった?
おれをわくわくさせる何か――、ああっ、思い出せない。
何度も母さんに注意され、それでも足繁く山小屋に通っていたおれ。
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