スター☆ウォッチャー

泉蒼

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第1章 ずっと忘れていた夢

1-3

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 二人で山道を歩く。

 おれがかつぐ荷袋は肩で変な音を立てていた。

 中にはいったい何が入っているのか? 

 母さんにけんかの告げ口をされるのが嫌でついてきたのだが、これからどこで何をするのか、まるで見当がつかなかった。

 前を歩くサリーが母さんのような口調でぼやく。

「どうしてティムは、けんかばっかりするのかな」

 髪を三つ編みにし、お気に入りの黄色いワンピースを着たサリーは、おれと同じ十一歳だ。

 この世には、腐れ縁というのがあって、サリーがそう。

 学校では、五年連続同じクラスだ。

 まだ理解に苦しむが、口うるさいサリーは、クラスで意外と人気があったりする。

「あのさ。農家の息子でしかも父さんがいない、そうくれば普通は馬鹿にされるってことぐらい分かるだろ。とくに漁師の息子にな」

「たしかにメイさんはワインに使用する葡萄を作っている。そして母がひとりで息子を育てている。それは事実よ。でも分からない。それのどこが馬鹿なの?」

 また母さんのような口調でサリーに言われ、おれは口ごもる。

 母さんはサリーの家が経営する葡萄畑で働いている。

 おれが漁師の息子とよくけんかをするから、口には出さないが、母さんは腹が立っているのかもしれない。

「やっぱり」

 サリーが足を止めた。思わず頭からぶつかりそうになる。

「ちっ、急に止まるなって」

「やっぱり、ティムがおかしいわ」

 サリーが振り向き、ルリ色の瞳を細めた。

「葡萄畑の息子と言われて怒る――それってティムがメイさんに育てられて恥ずかしいと、自分が思ってる証拠でしょう」

「うう」

 言い返せない。

「!」

 サリーがプイと顔をそむけた。

 踵を返して歩き出すサリーをおれは追いかける。

「うちの畑は最高なの。そんなことも分からないなんて、ティムは本当に馬鹿なんだと思う。あながち漁師の息子は間違ってないわ」

 今度は、母さんが怒ったときに淡々と早口でつぶやく、そんな口調でサリーが言った。

「……」

 おれは無言で歩く。

 やがて登山口に差し掛かっておれはひらめいた。

「ひょっとしてハリスじいちゃんの山小屋に行くつもりか?」

「ティムがすぐにカッとなるクセを直したら教えてあげるわ」

 ……まだ怒ってるのか。

 まさかとは思うが、もし目的地が山小屋なら、おれにとっては大事件。

 五年ぶりの山小屋だもんな……。

 まあ、でもそれはないか。
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