スター☆ウォッチャー

泉蒼

文字の大きさ
上 下
5 / 64
第1章 ずっと忘れていた夢

1-2

しおりを挟む
「こらーっ、ティム!」

 思わぬ邪魔が入った。

 幼馴染みのサリーが、山道からこっちを目がけて走ってくる。

 ……マズい。

 サリーはけんかをする度に目ざとく見つけ、母さんに言いつける。

 どういうわけか、おれが悪いことをするといつもサリーに見つかるんだ。

 まさか……。

 母さんから「ティムを監視して」、とでもお願いされているんだろうか。

 だったら、毎度このタイミングであらわれるのにも、うなずけるな。
 
 とにかく、絶対に二人は、陰で何かしらの秘め事を交わしているはず。

 そう考えると、ちょっと怖いぜ。

 二人が、おれのいないところで、おれについて話をしているんだもんな……。

 ――すると。

「痛ってえっ」

 マグマのように、顔を真っ赤にしたサリーが、おれに体当たりしてきた。

「またけんかっ? 何度言えば分かるのよ!」

「こいつらが葡萄畑の息子を馬鹿にするから……あっ、待て!」

 サリーと言い合う隙に、三人組が走り出す。

「ちっ……」

 サリーのせいで逃げたじゃねえか。

 サリーは、走って行った三人組を見て、フンと鼻を鳴らす。

 そして、またおれに向き直ると、

「あんな人たちは放っておけばいいのよ!」

 鼻にしわを寄せたサリーが、肩に担いだ大きな荷袋を地べたに放る。

 ――ドサッ!


「ああ、重かった。でも、ちょうどよかったわ、ティムが見つかって」

 は? 
 
 それ、どういう意味だ?

 嫌な予感がするおれに、腕を組んだサリーがきっぱりと言う。

「けんか、メイさんに告げ口されたくないでしょ。なら黙って、その荷袋を担いでついてきて」

「??」

 ちっ……。

 そういうことかよ。

 だが、おれを文句を言おうとした瞬間、

「告げ口しよっかなー、メイさんに。どう?」

 サリーがすました顔でつぶやいた。

「もちます! 荷袋でもなんでも持ちまーす!」

 おれは、母さんに告げ口されるのが嫌で、満面の笑みをつくって言った。

 ……くそっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

世にも奇妙な日本昔話

佐野絹恵(サノキヌエ)
児童書・童話
昔々ある所に お爺さんと お婆さんが住んでいました お婆さんは川に洗濯物へ お爺さんは山へ竹取りへ 竹取り? お婆さんが川で 洗濯物をしていると 巨大な亀が泳いで来ました ??? ━━━━━━━━━━━━━━━ 貴方の知っている日本昔話とは 異なる話 ミステリーコメディ小説

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

R:メルヘンなおばけやしき

stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。 雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。 ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

参上! 怪盗イタッチ

ピラフドリア
児童書・童話
参上! 怪盗イタッチ  イタチの怪盗イタッチが、あらゆるお宝を狙って大冒険!? 折り紙を使った怪盗テクニックで、どんなお宝も盗み出す!! ⭐︎詳細⭐︎ 以下のサイトでも投稿してます。 ・小説家になろう ・エブリスタ ・カクヨム ・ハーメルン ・pixiv ・ノベルアップ+ ・アルファポリス ・note ・ノベリズム ・魔法ランド ・ノベルピア ・YouTube

処理中です...