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PROLOGUE
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ピカピカッ、ゴロゴロッ!
「うわっ」
そのとき突然、夜空に稲妻が走る。
雷雨が激しく窓を打ちつけ始めた。
「大丈夫だ、山の天気は変わりやすい。ティム、雨がやんだら家に帰るんだ」
じいちゃんは、温かいスープを手渡してくれた。
……まさか。
雨が降ると分かって、観測部屋に入れてくれた?
もしそうなら、また夢が遠のく――。
「こっ、怖くねえし。もう小学生だし……おりゃっ! 薪だって簡単に折っちゃうし」
ぼくは焦って、なんとかじいちゃんに認めてもらおうと、必死にアピールした。
「ふふ、春がくれば小学生か。じゃあ、その可哀相な薪を、暖炉に入れてやってくれ」
ぼくは、ささくれだった薪を、自慢げに暖炉に放り投げる。
炎が上がって部屋がいっそう明るくなった。
これで認めてもらえた?
ぼくはまったく手応えを感じない。
「こいつが、好きか?」
じいちゃんは窓のそばに行き、望遠鏡に手を置いた。
「あたりまえさ」
「だがな、宇宙は楽しいことばかりじゃない。遠くから見れば美しい星も、中をのぞけばゾッとする世界もあるんだ。ティム、それでもこいつで宇宙を見たいか?」
ゾッとする世界。
ぼくはじいちゃんが、冗談を言っているのかと思った。
けれどもし、じいちゃんの言葉が本当だったとしたら。
「うわっ」
そのとき突然、夜空に稲妻が走る。
雷雨が激しく窓を打ちつけ始めた。
「大丈夫だ、山の天気は変わりやすい。ティム、雨がやんだら家に帰るんだ」
じいちゃんは、温かいスープを手渡してくれた。
……まさか。
雨が降ると分かって、観測部屋に入れてくれた?
もしそうなら、また夢が遠のく――。
「こっ、怖くねえし。もう小学生だし……おりゃっ! 薪だって簡単に折っちゃうし」
ぼくは焦って、なんとかじいちゃんに認めてもらおうと、必死にアピールした。
「ふふ、春がくれば小学生か。じゃあ、その可哀相な薪を、暖炉に入れてやってくれ」
ぼくは、ささくれだった薪を、自慢げに暖炉に放り投げる。
炎が上がって部屋がいっそう明るくなった。
これで認めてもらえた?
ぼくはまったく手応えを感じない。
「こいつが、好きか?」
じいちゃんは窓のそばに行き、望遠鏡に手を置いた。
「あたりまえさ」
「だがな、宇宙は楽しいことばかりじゃない。遠くから見れば美しい星も、中をのぞけばゾッとする世界もあるんだ。ティム、それでもこいつで宇宙を見たいか?」
ゾッとする世界。
ぼくはじいちゃんが、冗談を言っているのかと思った。
けれどもし、じいちゃんの言葉が本当だったとしたら。
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