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EPILOGUE

E-1

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気がつくと暑さは和らぎ、いつしかセミの声も聞こえなくなっていた。とっくに夏はすぎ去って、色々あった九月も終わろとしている。
 ふと、甘い匂いが鼻をついた。
「あ、キンモクセイ」
 校門前に咲く、赤子の手のひらのような黄色い花に、足が吸い寄せられる――ガンッ。
 そのとき、足もとのレンガにつまづいてこけそうになった。なんとか踏んばってこらえたが、腰に、じんと痛みが走る。
(ハハ……やっぱり、忍びと部活のかけもちはキツイな……)
「そこのおバカさん!」
「え?」
 声に振りかえると、龍宮学園の中庭に、細身のスーツを着た明星が。
「ぼんやりしてると、危ないよ。服部さん、聞いてる?」
「あ、はいっ」
 晴子は、背すじをのばした。ポケットに両手を入れた明星が、こっちに歩いてくる。
「この前、ちょっとおもしろい話を聞いたんだ。イタリアにいる母から電話があってね。かつて龍宮学園は、まだ中学と高校だけの私立校だった。ちょうど、二十三年まえかな」
 目の前で、明星が流れる金髪をかきあげる。
「そのころは、ぼくの母が龍宮学園の理事長をしていてね。母は学園内で起きる問題を、忍びを使って解決しようとしていたんだ。今の五忍衆のようにね。そのときのメンバーの中に、服部剛、という方がいたそうだ」
「服部剛……お父さんっ?」
 明星が、声を殺しながら笑う。
「運命というのは、とてもおもしろいものだ。そうだ、今からみんなで焼き肉でもどう?」
 そのとき、明星の背後から、六人の男女が走ってくるのが見えた。晴子は、うなずいた。
「押忍! もっと話を聞かせてください! ちょうどお腹がペコペコだったんですっ!」
(了)
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