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第2話 捕われのツインタワー
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結菜は支柱にリードをくくりつけると、今度は、腰に手を当てて勇ましく叫ぶ。
「あんたの気持ちはわかるわ!」
「?」
犯人の男は、昴から頭上の結菜に視線を移す。
「私もバレエで悔しい思いをしてきたもん! だから、自分の技法を盗まれたのがホントなら、絶対に悔しいよね! でもっ! あんたも画家なら、絵で見返しなさいよっ!」
バランスをとりながら支柱の上に立つと、結菜は人差し指をビシッと犯人に向けた。
「……予定変更だ。お嬢さん、さっきも言っただろ――その失礼な態度を許すのは、一度きりだってね。くく、まったく、仕方がないな。望みどおり、ツキの前にお前を殺そうか」
男は静かに笑いながら結菜を脅した。
まるでターゲットのツキを上回る憎き相手を見つけたように。
しかし。
「無駄よ!」
男が起爆装置のボタンに指をかけたその時。支柱に立つ結菜は、くくりつけたリードを手につかみ、ターザンのように降下したのだ。
「もう、やるっきゃないわっ!」
犯人をめがけながら結菜は、グランジュッテ、というバレエで大きく跳躍する時に使う技を頭にイメージする。
「きゃああっ――、あ、あっ、あっ、当ったれ~っ!」
結菜が足を前後に開脚したままの体勢で男に突進した。
「ぐはあっ」
男の右手が弾かれる。結菜の前足が、起爆装置を蹴り上げたのだ。
「く……、くそっ!」
「――よっと!」
男がよろけたその隙に、床に降りた結菜が起爆装置を拾いに走る。
だが。
「いい加減にしろ! ふざけるなっ!」
背中に手を回した男が、鬼の形相で結菜に拳銃を向けたのだった。
「!」
(ぬあ~っ、犯人を超怒らせたら、今度は拳銃が出てきちゃったわ~っ!)
床の起爆装置をつかみ損ねた結菜は、恐怖で口をパクパクさせながらつぶやいた。
「フォロワーを増やそうと調子に乗りすぎると、銃撃されちゃう最悪な状況を引き寄せる場合もあるから気をつけてね………………マル」
銃口を向けられ、絶体絶命のピンチに、天に祈るように目を閉じた結菜。
「俺の悪い癖だ。子どもだからって油断した、くく、フハハハハハ! だが、もう終わりにしようか――死ねぇっ!」
男が銃の引き金を引く。
「ゆ、結菜ちゃんっ」
パア――――ンッ!
しかし。
「? ……はっ、昴っ!」
目を開けた結菜は、ぼう然とした。
結菜の前に飛び出した昴が、目の前で倒れているのだ。
「す、昴……、ねえ、ねえっ、ねえっ!」
「結菜ちゃんには、指一本……触れさせ――」
しゃがんだ結菜が声をかけると、昴は虫の息でそう言った。
「ふ、ふ、ふはは……、お前たちが、お前たちが悪いんだっ」
男は怒鳴ったが、発砲に動揺したように拳銃を手から床にボトッと落とす。
(――絶対にっ)
怒りに震えた結菜は、相手に隙を与えないように、とっさに男に突進した。
そして。
「なっ、何だっ」
男がのけぞったその時、
「絶対にっ、許さないっ!」
結菜は床に手をついて、昴の得意なブレイクダンスを真似て、華麗な足払いを見舞った。
「う、……うあっ」
ダア―――――ンッ!
男は結菜の足払いで後頭部から床に倒れる。
「結菜っ、次はわしに任せろ!」
結菜の背後から、口にロープをくわえたバクさんが飛んで来た。
ふたりの攻防の隙に、警備員の解放に向かっていたバクさんが、
「警備員のおっちゃんが縛られてた、ロープやでっ!」
そのロープを結菜に投げるように首を振って渡した。
「ナイス、バクさんっ!」
「……うぅぅ、な、何をするんだぁ」
床で頭を打ち、意識が朦朧とする男の体を、結菜はローブでぐるぐる巻きにする。
「動くなあっ!」
その時、サーバールームの扉が開かれた。
「犯人がいたぞ!」
数十人の制服警菅が、いっせいに中になだれ込んで来る。
ロープで縛られた男は、
「――くっ、くそおおっ」
抵抗して叫び続けたが、やがて、駆け付けた警察官に逮捕され押し黙るのだった。
「あんたの気持ちはわかるわ!」
「?」
犯人の男は、昴から頭上の結菜に視線を移す。
「私もバレエで悔しい思いをしてきたもん! だから、自分の技法を盗まれたのがホントなら、絶対に悔しいよね! でもっ! あんたも画家なら、絵で見返しなさいよっ!」
バランスをとりながら支柱の上に立つと、結菜は人差し指をビシッと犯人に向けた。
「……予定変更だ。お嬢さん、さっきも言っただろ――その失礼な態度を許すのは、一度きりだってね。くく、まったく、仕方がないな。望みどおり、ツキの前にお前を殺そうか」
男は静かに笑いながら結菜を脅した。
まるでターゲットのツキを上回る憎き相手を見つけたように。
しかし。
「無駄よ!」
男が起爆装置のボタンに指をかけたその時。支柱に立つ結菜は、くくりつけたリードを手につかみ、ターザンのように降下したのだ。
「もう、やるっきゃないわっ!」
犯人をめがけながら結菜は、グランジュッテ、というバレエで大きく跳躍する時に使う技を頭にイメージする。
「きゃああっ――、あ、あっ、あっ、当ったれ~っ!」
結菜が足を前後に開脚したままの体勢で男に突進した。
「ぐはあっ」
男の右手が弾かれる。結菜の前足が、起爆装置を蹴り上げたのだ。
「く……、くそっ!」
「――よっと!」
男がよろけたその隙に、床に降りた結菜が起爆装置を拾いに走る。
だが。
「いい加減にしろ! ふざけるなっ!」
背中に手を回した男が、鬼の形相で結菜に拳銃を向けたのだった。
「!」
(ぬあ~っ、犯人を超怒らせたら、今度は拳銃が出てきちゃったわ~っ!)
床の起爆装置をつかみ損ねた結菜は、恐怖で口をパクパクさせながらつぶやいた。
「フォロワーを増やそうと調子に乗りすぎると、銃撃されちゃう最悪な状況を引き寄せる場合もあるから気をつけてね………………マル」
銃口を向けられ、絶体絶命のピンチに、天に祈るように目を閉じた結菜。
「俺の悪い癖だ。子どもだからって油断した、くく、フハハハハハ! だが、もう終わりにしようか――死ねぇっ!」
男が銃の引き金を引く。
「ゆ、結菜ちゃんっ」
パア――――ンッ!
しかし。
「? ……はっ、昴っ!」
目を開けた結菜は、ぼう然とした。
結菜の前に飛び出した昴が、目の前で倒れているのだ。
「す、昴……、ねえ、ねえっ、ねえっ!」
「結菜ちゃんには、指一本……触れさせ――」
しゃがんだ結菜が声をかけると、昴は虫の息でそう言った。
「ふ、ふ、ふはは……、お前たちが、お前たちが悪いんだっ」
男は怒鳴ったが、発砲に動揺したように拳銃を手から床にボトッと落とす。
(――絶対にっ)
怒りに震えた結菜は、相手に隙を与えないように、とっさに男に突進した。
そして。
「なっ、何だっ」
男がのけぞったその時、
「絶対にっ、許さないっ!」
結菜は床に手をついて、昴の得意なブレイクダンスを真似て、華麗な足払いを見舞った。
「う、……うあっ」
ダア―――――ンッ!
男は結菜の足払いで後頭部から床に倒れる。
「結菜っ、次はわしに任せろ!」
結菜の背後から、口にロープをくわえたバクさんが飛んで来た。
ふたりの攻防の隙に、警備員の解放に向かっていたバクさんが、
「警備員のおっちゃんが縛られてた、ロープやでっ!」
そのロープを結菜に投げるように首を振って渡した。
「ナイス、バクさんっ!」
「……うぅぅ、な、何をするんだぁ」
床で頭を打ち、意識が朦朧とする男の体を、結菜はローブでぐるぐる巻きにする。
「動くなあっ!」
その時、サーバールームの扉が開かれた。
「犯人がいたぞ!」
数十人の制服警菅が、いっせいに中になだれ込んで来る。
ロープで縛られた男は、
「――くっ、くそおおっ」
抵抗して叫び続けたが、やがて、駆け付けた警察官に逮捕され押し黙るのだった。
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