夢なしアカネ、地球へ行く!

泉蒼

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第九章

宇宙へ出発!

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ゴゴオォ!
翌朝、パパとママとアカネは、空飛ぶ車で地球へとむけて旅立ちました。
家のちかくの高速道路から、宇宙へ飛びたつための道路に乗ったのです。
「シートベルトーっ」
自動車のハンドルをにぎったパパが、気合をいれるようにさけびました。すると、
「はいさーっ」とママもつられるようにさけんだのです。
アカネは二人のいきおいに気おされて、あわてて自分のシートを固定しました。
「ひいぃ」
桜木家の赤い自動車が、グリーンの道路へと車線を変えていきました。
「うわあぁ、ホントにぃ、あそこをのぼる気なのぉ?」
アカネの目の前に、宇宙へとつづく専用道路が見えました。その道路は、白い雲をつきさすようにして、高速道路の分岐点から空へと一直線に、グリーンのレーザー光線となって青い空へと立ちのぼってるのです。
ゴゴゴゴォォォ!
そこを走るとついに、赤い車はずんずんと空をかけのぼっていきました。
「ひさしぶりだから、ワクワクするなあ」運転席でパパが鼻をふくらませています。
「ちょっと、スピード、だしすぎじゃない?」ママは隣で歯を食いしばりました。
 アカネは車の加速にあっとうされて、思わず目をとじてしまいました。
「ひっ、ひいぃぃ」
車はまるでロケットのように空にむかって走っていきました。ガクンと三人の背中は地上に引っぱられ、つぎに膝が天をむいて逆上がりのような体勢になったのです。そんな三人の後頭部は、ピターッとシートにはりついてしまいました。
「それぇい!」パパが鼻息あらくさけびました。
「きゃあー」ママとアカネがどうじに悲鳴をあげました。
するとつぎの瞬間、、三人のおへそが前をむいたのです。
「うわっ」
いきおいあまって、三人はキツツキのように頭をふりました。
そして最後に、三人の肩がストンと落ちていったのでした。
ようやく、桜木家の自動車は宇宙空間へと突入したのです。
「ふいぃ」パパが安堵の息をもらすと、「んもう」とママが胸に手をやりました。
アカネは二人を見て、とたんに涙ぐんでしまいました。
「はひいぃ。い、生きててよかったぁ」

「パパ、ママ。それにしても、すごい数の車だね」
「アカネは宇宙がはじめてだからな。パパとママは、もう慣れっこだよ、ハハハ」
「パパったら、むかしはデートで、ママをよく宇宙にドライブにつれていってくれたのよ」
宇宙は、たくさんの人でにぎわっていました。アカネの目の前には、たくさんの車が浮かんでいます。ほかの星からやってきたカラフルな車や、何十人と人を乗せている巨大な宇宙船が、宇宙空間にもれなくひしめいているのです。
「みんな、どこに行くんだろう?」
アカネは宇宙空間をただよう自動車に、目がくぎ付けになってしまいました。
「みんな、ちがう星に遊びに行くのね」ママがそう答えると、
「車のルーフキャリアに、みんな旅行カバンをつんでるだろう」
とパパがくわしく説明してくれました。
「そっかあ。夏休はみんな宇宙旅行に行くんだね」
しかし、桜木家の車は、宇宙空間でずっとふわふわと浮いているだけでした。
なにやらパパが、車の窓まどからキョロキョロと下のほうをながめています。
「パパ、どうして進まないの?」アカネがたずねました。
「スペースレールが、なかなか空かないんだよなあ」
パパが吐息まじりに答えると、
「地上では、車は道路を走るでしょう。でも宇宙では、車は宇宙道路の上でしか走っちゃいけないのよね」
と今度はママがくわしく説明してくれたのです。
宇宙での運転は、スペースレールと呼ばれる宇宙道路の上でしか、車を走らせることができないようでした。もちろん地球にむかうには、桜木家の車はまず、スペースレールへと降りたつ必要があるのでした。
「うわあ、真っ白なヘビみたいだね」
その宇宙道路は、白いレーザー光線でできていました。
ほかの車たちも時間をかけて、なんとかスペースレールへとちかづいていき、ようやく空いたスペースを見つけると、こんどは空からおはじきを落とすようにして、やっと車を宇宙道路に着地させることができたのでした。
アカネは車の窓から、じっとその様子をながめていました。
色とりどりの車のおかげで、白い宇宙の道路が鮮やかな色にそまっていくのでした。
「わあ、ママ! 道路が虹になったみたいだよ」
興奮するアカネを見て、ママが口もとに笑みを浮かべました。
「アカネ、キレイでしょう? ママもこの光景には、いつ見てもうっとりなの」
いろんな星からやってきた、赤、ダイダイ、黄、緑、青、といったさまざまな色の車たちが、どんどん白いスペースレールを色づけていくのでした。
「パパ、うちの車もはやくぅ」
「そうしたいのは、山々なんだけどなぁ……」
 ポリポリと頭をかくパパは、どこか渋滞にイライラしているようでした。
宇宙道路はたくさんの車がうまっていて、まだしばらく桜木家の車は合流できそうにありません。しかたなく、アカネはしきりに頭上を流れていく、隕石を観察しました。
シュウウーンッ!
すぐに大きな隕石が桜木家の車の上を流れていくと、ちかくの星にちかづいたとたんに、赤い炎をまといました。そしてシュポンッと隕石は、その星の引力によって吸いよせられていったのでした。
「トイレじゃーん」
ヒマを持てあましたアカネは、一人で妄想してニッと笑ったのです。
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