夢なしアカネ、地球へ行く!

泉蒼

文字の大きさ
上 下
9 / 17
第九章

宇宙へ出発!

しおりを挟む
ゴゴオォ!
翌朝、パパとママとアカネは、空飛ぶ車で地球へとむけて旅立ちました。
家のちかくの高速道路から、宇宙へ飛びたつための道路に乗ったのです。
「シートベルトーっ」
自動車のハンドルをにぎったパパが、気合をいれるようにさけびました。すると、
「はいさーっ」とママもつられるようにさけんだのです。
アカネは二人のいきおいに気おされて、あわてて自分のシートを固定しました。
「ひいぃ」
桜木家の赤い自動車が、グリーンの道路へと車線を変えていきました。
「うわあぁ、ホントにぃ、あそこをのぼる気なのぉ?」
アカネの目の前に、宇宙へとつづく専用道路が見えました。その道路は、白い雲をつきさすようにして、高速道路の分岐点から空へと一直線に、グリーンのレーザー光線となって青い空へと立ちのぼってるのです。
ゴゴゴゴォォォ!
そこを走るとついに、赤い車はずんずんと空をかけのぼっていきました。
「ひさしぶりだから、ワクワクするなあ」運転席でパパが鼻をふくらませています。
「ちょっと、スピード、だしすぎじゃない?」ママは隣で歯を食いしばりました。
 アカネは車の加速にあっとうされて、思わず目をとじてしまいました。
「ひっ、ひいぃぃ」
車はまるでロケットのように空にむかって走っていきました。ガクンと三人の背中は地上に引っぱられ、つぎに膝が天をむいて逆上がりのような体勢になったのです。そんな三人の後頭部は、ピターッとシートにはりついてしまいました。
「それぇい!」パパが鼻息あらくさけびました。
「きゃあー」ママとアカネがどうじに悲鳴をあげました。
するとつぎの瞬間、、三人のおへそが前をむいたのです。
「うわっ」
いきおいあまって、三人はキツツキのように頭をふりました。
そして最後に、三人の肩がストンと落ちていったのでした。
ようやく、桜木家の自動車は宇宙空間へと突入したのです。
「ふいぃ」パパが安堵の息をもらすと、「んもう」とママが胸に手をやりました。
アカネは二人を見て、とたんに涙ぐんでしまいました。
「はひいぃ。い、生きててよかったぁ」

「パパ、ママ。それにしても、すごい数の車だね」
「アカネは宇宙がはじめてだからな。パパとママは、もう慣れっこだよ、ハハハ」
「パパったら、むかしはデートで、ママをよく宇宙にドライブにつれていってくれたのよ」
宇宙は、たくさんの人でにぎわっていました。アカネの目の前には、たくさんの車が浮かんでいます。ほかの星からやってきたカラフルな車や、何十人と人を乗せている巨大な宇宙船が、宇宙空間にもれなくひしめいているのです。
「みんな、どこに行くんだろう?」
アカネは宇宙空間をただよう自動車に、目がくぎ付けになってしまいました。
「みんな、ちがう星に遊びに行くのね」ママがそう答えると、
「車のルーフキャリアに、みんな旅行カバンをつんでるだろう」
とパパがくわしく説明してくれました。
「そっかあ。夏休はみんな宇宙旅行に行くんだね」
しかし、桜木家の車は、宇宙空間でずっとふわふわと浮いているだけでした。
なにやらパパが、車の窓まどからキョロキョロと下のほうをながめています。
「パパ、どうして進まないの?」アカネがたずねました。
「スペースレールが、なかなか空かないんだよなあ」
パパが吐息まじりに答えると、
「地上では、車は道路を走るでしょう。でも宇宙では、車は宇宙道路の上でしか走っちゃいけないのよね」
と今度はママがくわしく説明してくれたのです。
宇宙での運転は、スペースレールと呼ばれる宇宙道路の上でしか、車を走らせることができないようでした。もちろん地球にむかうには、桜木家の車はまず、スペースレールへと降りたつ必要があるのでした。
「うわあ、真っ白なヘビみたいだね」
その宇宙道路は、白いレーザー光線でできていました。
ほかの車たちも時間をかけて、なんとかスペースレールへとちかづいていき、ようやく空いたスペースを見つけると、こんどは空からおはじきを落とすようにして、やっと車を宇宙道路に着地させることができたのでした。
アカネは車の窓から、じっとその様子をながめていました。
色とりどりの車のおかげで、白い宇宙の道路が鮮やかな色にそまっていくのでした。
「わあ、ママ! 道路が虹になったみたいだよ」
興奮するアカネを見て、ママが口もとに笑みを浮かべました。
「アカネ、キレイでしょう? ママもこの光景には、いつ見てもうっとりなの」
いろんな星からやってきた、赤、ダイダイ、黄、緑、青、といったさまざまな色の車たちが、どんどん白いスペースレールを色づけていくのでした。
「パパ、うちの車もはやくぅ」
「そうしたいのは、山々なんだけどなぁ……」
 ポリポリと頭をかくパパは、どこか渋滞にイライラしているようでした。
宇宙道路はたくさんの車がうまっていて、まだしばらく桜木家の車は合流できそうにありません。しかたなく、アカネはしきりに頭上を流れていく、隕石を観察しました。
シュウウーンッ!
すぐに大きな隕石が桜木家の車の上を流れていくと、ちかくの星にちかづいたとたんに、赤い炎をまといました。そしてシュポンッと隕石は、その星の引力によって吸いよせられていったのでした。
「トイレじゃーん」
ヒマを持てあましたアカネは、一人で妄想してニッと笑ったのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

消しゴムくん、旅に出る

泉蒼
児童書・童話
文房具たちが旅に出るワクワクハラハラの冒険ストーリー。 文房具は机から落ちると手足が生えてしゃべることができる。四年三組の教室には消しゴムのゴー、じょうぎのジョー、えんぴつのピン子、という文房具仲よし三人組がいた。  ある日、文房具仲よし三人組は「日向ぼっこをしよう」というピン子の提案で教室の窓に行く。そこで三人は初めて外の世界を見て感動する。 ピン子とジョーは「外の世界に出よう!」とゴーを誘う。三人はカラスの背中に乗って外の世界に飛び出す。ところが夜の校庭で凶暴な野良猫に襲われ、三人は命からがら逃げる。 夜の教室でゴーは、ピン子とジョーのひそひそ話を耳にする。 ゴーの持ち主ケイタくんは、最近になって漫画を描き始めた。ものすごいスピードで消しゴムを使っていると気がつき、ピン子とジョーはこのままだとゴーが危ないと思った。 ふたりが自分を外に連れ出した真相を知るが、ゴーは、ピン子とジョーも本当は持ち主のもとへ帰りたいという想いを知るのだが…。 危険を冒して冒険に出ていると気づいたゴーは、持ち主のもとへ帰ることにするのだろうか。

湖の民

影燈
児童書・童話
 沼無国(ぬまぬこ)の統治下にある、儺楼湖(なろこ)の里。  そこに暮らす令は寺子屋に通う12歳の男の子。  優しい先生や友だちに囲まれ、楽しい日々を送っていた。  だがそんなある日。  里に、伝染病が発生、里は封鎖されてしまい、母も病にかかってしまう。  母を助けるため、幻の薬草を探しにいく令だったが――

魔法使いの弟子カルナック

HAHAH-TeTu
児童書・童話
魔法使いの弟子カルナックの成長記録

ターシャと落ちこぼれのお星さま

黒星★チーコ
児童書・童話
流れ星がなぜ落ちるのか知っていますか? これはどこか遠くの、寒い国の流れ星のお話です。 ※全4話。1話につき1~2枚の挿絵付きです。 ※小説家になろうにも投稿しています。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

真っ白なネコのぬいぐるみププが自分の色を見つけるまでのおはなし

緋島礼桜
児童書・童話
やあみんな、ボクの名前はププ。真っ白色のネコのぬいぐるみさ! ぬいぐるみはおしゃべりなんかしないって? そう、ボクはご主人であるリトルレディ、ピリカの魔法でおしゃべりしたり動けたりできるようになったんだ。すばらしいだろう? だけど、たった一つだけ…ボクにはゆずれないもの、頼みたいことがあったんだ。 それはなんだって? それはね、このボクのお話しを読んでくれればわかるさ。 笑いあり涙ありのステキな冒険譚だからね、楽しめることは間違いなしさ! +++ 此方は小説家になろうにて投稿した小説を修正したものになります。 土・日曜日にて投稿していきます。 6話完結の短めな物語なのでさくっと読んでいただけるかと思います。ヒマつぶし程度でご一読いただければ幸いです。 第1回きずな児童書大賞応募作品です。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

処理中です...