夏の灰から

「夏はシャンデリア、秋は灯籠」と手にしている本の主人公が言う。
 言いたいことはなんとなく分かる。
 だけど僕にとって夏はスポットライト、秋は間接照明だ。
 夏は、強烈に輝き逆に影を色濃く目立たせる。そうして秋は、疲弊した僕を淡く見せる。
 似ているようで少し違う。

「秋は夏の焼け残りさ」
 この文は……その通りだと強く共感する。

 佐倉実は、貴重な高校一年生の夏休みを、毎日無為にしていた。
 そんな最中、祖母の提案により、夏休みの間田舎の町で過ごすことになる。
 そこで出会った女性、園田由那は『みたらし炭酸』なる謎のドリンクを愛飲する変わり者だったが、関わっていくうちに、彼女に隠された哀しい結末を知ることになる。
 そして、彼女の父親である園田聡の憂悶と葛藤。
 すべてが終わる時、実たち三人は夏の灰から、夏の焼け残りへとなる。
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