渡辺と彼女

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これから

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男性は終始優しい眼差しを持ってわたしの話に耳を傾けてくれていた。こんな人が世の中には居るのかとわたしは呆気にとられると同時に今まで会ってきた人達は怪訝そうな顔して何も言ってこなかったのに何でこんなにも優しくしてくれるのか、もしかして怪しい人なんじゃないかという疑問が次々と頭の中に浮かんでくる

男性はわたしの思っている事が分かったのかは分からないが急に可笑しそうにははっと笑い出した

「君、考えすぎですよ。僕は君を取って食ったりなんてしませんから安心してください...くっふふっ」

男性の目尻には涙が浮かんでいる

「そんなに笑う所ですか?」

わたしは男性を睨みつけるようにして言う

「や、これは失礼。君があまりにも怯えていたからつい、ね」

男性はわざとらしい咳を一つしてわたしの方に顔を向けた

「君は記憶がないんですよね?これからどうするつもりなんですか?」

「それは...」

二人の間に長い沈黙が流れる

「良かったら、このまま僕と一緒に暮らしませんか?」

沈黙を破ったのは男性の方だった。しかも一緒に住まないかなんてどれだけお人好しなんだこの人は

「丁度一人分の部屋もありますし、経済的にも少しは蓄えてありますからそこの辺りは気にしなくても大丈夫ですよ」

「...本当に良いんですか?」

おずおずと聞いてみると男性は微笑み頷いた

「ええ、僕一人じゃ少し寂しかったので一緒に住んでくれると嬉しいです」

「えと、その...不束ながらよろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくお願いしますね」

こうして心優しい渡辺と記憶を無くした少女の日常生活が始まるのであった
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