上 下
1 / 12

1.騎士はやり逃げされる。※

しおりを挟む
***

「あ、やぁ……っ、ん」
「うわすっげ……なんだこれ、くっそ……」
「んんっ」
「は、まだ、絡み付いてくる……最っ高」
「あっ」

どちゅ、と大きく穿たれてそれは悲鳴に変わる。

「きゃ、あ……んんっ」
「オマエも気持ちよさそうだな」
「あ、あっ、は、あん」
「やらかくて、あったかい……いいな……」

律動に合わせて漏れる吐息と涙に、快感を追う事しかできない。最初で最後だと思いながら、彼に縋り付いてしまいそうだった。

***

ふ、と自分が寝入っていたことに彼女は気づいた。背後から聞こえる寝息にほっとして、そうっとベッドから降りる。彼は身じろぎをしたが、まだ起きる気配はない。
急いで身支度をして、朝の近い、薄明るくなりつつある宿の部屋をそっと抜け出す。

「はぁ、これで終わりだわ」

白んでくる空を見上げ、ため息をつく。早くここを離れなくてはと、急ぎ足で人目につかないように、朝の街に逃げ込んだ。

***

「……あぁ?なんでいねーんだよ、もう」

彼女がベッドを抜け出して数時間後、明るくなってきた部屋でようやくリカルドは目を覚ました。一緒に寝た痕跡はあるものの、彼女の姿も気配もどこにも無い。床には自分が脱ぎ散らかした騎士服だけが落ちている。

「ちぇっ、朝もやりたかったのになぁ。あー、まさかあいつが、あんなの持ってたとはな……」

ガシガシと頭をかきながら、昨夜を思い出す。初めて抱いたのに、その具合の良さが忘れられなくてニヤニヤとしてしまう。彼女が初めてじゃなければ、きっと抱き潰していただろう。

ベッドに広がった特徴的な赤茶の髪や、自身に纏わりつくような温かな胎の中と白い身体を思い出し、その昂りを見れば、既にパンパンに膨らんでいる。

「しょーがねぇ、起きるか……あいつは後で説教だな」

彼女は3つ歳下の幼馴染だ。先日、切羽詰まったように話があると言われ、相談に乗ったら『一度だけでいい、純潔をもらって欲しい』と懇願されてしまった。

正直、妹を抱くようで気乗りはしなかったのだが、始まってしまえばお互い大人だ、驚くほど素直にその行為を楽しめた。何より、経験した事のないほど良い具合だったのだ。

「それにしても、なんで一回だけなんだ?」

終わってから考える事ではないが、基本的に肉欲優先のリカルドには、心配が後からやってくる事はよくある。もっと話を聞く必要があるな、と浴室でアレを抜きながらようやく考えていた。もちろん昨夜のことを思い出し、今夜のことを夢想しながら。

昼から騎士団の演習だけ参加して、それから彼女の寮へと向かった。彼女は王城でお針子として働いている。しかし会えると思っていたその期待は、裏切られた。

「彼女は昨日で退職し、そのまま退寮されましたよ?」
「は?」
「あら、ご存じないですか?なんでも、自領へ戻られるとかで……」
「そ、うですか……。ありがとう、ございます……」

退職?自領?子爵家の自領って、国境近くのあそこ?え、なんで?帰らないんじゃなかったのか?昨日何も言ってなかったよな?
ぐるぐると巡る考えに混乱しながら、礼を言ってそこを離れる。

彼女は忽然と、彼の前から姿を消した。

「シルヴィア、あいつ……やり逃げとかマジか?!」

***
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

脱衣令嬢と外面騎士の怠惰な秘密。

玉菜
恋愛
平凡な子爵令嬢のティアナは王宮で念願の侍女として働くことになった。しかし、彼女には人には言えない秘密がある。 一足先に近衛騎士として城に務めている幼馴染のジークにも内緒のその秘密が暴かれる時……長年抑えてきた思いが、決壊する。 ※←R回です。性描写の苦手な方、18歳以下の方はご遠慮ください。

やがて恋に変わるもの。

玉菜
恋愛
伯爵令嬢パウラ・ガリオンは、その魔力の可能性をもって王太子妃候補として教育を受けていた。しかし彼女の野望は王太子妃とは全く別のところにある。 密かな夢を叶えるべく邁進する彼女に訪れる転機。そこにいたのはかつての恩師であった。 念願の日々が始まり、研究所での下働きのような仕事にも不平を言わず、それどころか有能さを発揮する彼女の目の前に、再び人生の岐路が訪れる。彼女の選びとる道は、果たして。 ※←タイトルにマークがあるものはR回です。苦手な方はご遠慮ください。 【4/14〜23 完結】

第二王子の婚約者候補になりましたが、専属護衛騎士が好みのタイプで困ります!

春浦ディスコ
恋愛
王城でのガーデンパーティーに参加した伯爵令嬢のシャルロットは第二王子の婚約者候補に選ばれる。 それが気に食わないもう一人の婚約者候補にビンタされると、騎士が助けてくれて……。 第二王子の婚約者候補になったシャルロットが堅物な専属護衛騎士のアランと両片思いを経たのちに溺愛されるお話。 前作「婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました」と同じ世界観ですが、単品でお読みいただけます。

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

我慢できない王弟殿下の悦楽授業。

玉菜
恋愛
侯爵令嬢で王太子妃候補筆頭、アデリーゼ・バルドウィンには魔力がない。しかしそれはこの世界では個性のようなものであり、その立場を揺るがすものでもない。それよりも、目の前に迫る閨教育の方が問題だった。 王室から遣わされた教師はなんと、王弟殿下のレオナルド・フェラー公爵だったのである。妙齢ながら未婚で、夜の騎士などとの噂も実しやかに流されている。その彼の別邸で、濃密な10日間の閨教育が始まろうとしていた。 ※「Lesson」:※ ←R回です。苦手な方及び18歳以下の方はご遠慮ください

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。 そんな彼に見事に捕まる主人公。 そんなお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~

如月あこ
恋愛
 宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。  ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。  懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。  メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。    騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)  ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。 ※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)

処理中です...