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貴腐人の嗜み(ロゼリア視点)
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※1回細かく書いたら、どうにも18禁ペナルティーになりそうになってしまったので軽い感じに書き直しました。そのため遅くなりすみません。
*********************
神よ、今日この瞬間を感謝します。
この日わたしたちは貴腐人としての真理を心に感じ取ったのでした……。
***
ジークにい様とフレデリック殿下が部屋に消えたのを確認し、わたしたちも早速行動に取りかかることにしました。
まずハイヒールを脱ぎ捨て、そしてそれぞれフラットな靴(歩く音が出にくい加工済み)に履き替えます。
「貴腐人様」
小声で近寄ってきたのは先ほどジークにい様といちゃいちゃしていた見習い執事の少年です。
ふふふ、実はこの見習い執事はわたしとジークにい様の仕込みなのです!ジークにい様の仲間(お友達)である彼に王宮の間取りを調べてもらうために巻き込みました!
「ふふっ、先ほどの演技は素晴らしかったですね。1年前にデビュタントしたばかりのあなたならフレデリック殿下に顔も知られてないので助かりました。このお礼は後程たっぷりいたしますね、クロス様」
わたしが含みを込めてそう言えば、彼……クロス様は栗色の髪をかきあげニヤリと笑った。
「フッ。ジークハルトの奴、本気出すらしいぜ?まぁ俺様はあんな王子なんざ趣味じゃねぇから羨ましいとは思わねぇけどな。貴腐人様なら、わかるだろ?」
「それはもちろん……クロス様は枯れ専ですものね!」
そう、このクロス様はこんなに美少年なのに枯れ専の攻めなんです!年上のロマンスグレーを籠絡する美少年……なんて素晴らしいのでしょう。おじ様キラーとして名高いクロス様と美少年キラーであるジークにい様は戦友のようなものらしいのですわ。まぁ、このおふたりが仲良く談笑(攻めの美徳について)している姿を見て勘違いなさってた腐女子も多数いたようですが、あえて訂正はいたしません。そこを見極められるようになってこそですから!
「では交渉成立ってことで、特別室へご案内いたしますよ」
クロス様が可愛らしいウインクをして、王宮にある王家専用の隠し通路へとわたしたちを誘いました――――。
『……んっ、ふぁ……』
『……可愛らしいですね、フレデリック』
『あっ』
暗くて狭いこの通路は、なんと各部屋へと通じている隠し通路なのである。部屋の中の様子をこっそり覗き……ゲフンゲフン。確認するには最適ですね!
「「「……」」」
少し響くように聞こえる部屋の中の声に真剣な顔つきになる腐女子の3人。瞬きもせずにずっと見開いているので少々目が血走っていますけれど、声も鼻血も出さずにひと言も聞き漏らすまいとして鬼気迫る様子はさすがです。
そっと覗き穴から中の様子を伺えば、そこはまさに薔薇の花びらが舞っていそうなドリームワールド☆が広がっていました。腐女子にとっての夢の世界がここに……!
衣擦れの音がまさに最高のBGMと化し、わずかに粘着質な響きがする度につい壁に耳を張り付けてしまいました。
『あっあっ……あ――――!』
おおっと!やったね、殿下!おめでとう!
フレデリック殿下が新しい扉を開いた瞬間に立ち会えた事を光栄に思います!
感激していると、ジークにい様がちらっと目配せをしてきました。おっと、これはまたもや合図です。退散するとしましょうか。
わたしが手で外を指すと、皆様も静かにこくりと頷きそっとその場を後にするのでした。
***
誰にも見つからずにガゼボに戻ったわたしたちは靴を元のハイヒールに履き替え、しばらく誰も口を開きませんでした。しかしひとりが突然立ちあがり清らかな涙を一滴溢したのです。
「……申し訳ございません、ロゼリア貴腐人様。本当なら最後までここにいるお約束だったのですがわたくしは一刻も早く帰らねばならなくなりましたわ……!」
その言葉に「「同じく!」」と残りおふたりも立ちあがり、いまだ気絶してらっしゃるマデリン様を担がれました。
「わたくし、とても感動したのです!この感動が薄れぬうちに薄い本にしたためねばなりませんわ……!もう感動し過ぎて涙が止まりません!」
「わかりますわ!今なら……今ならなんでも書ける気がします!身分差を乗り越えた真実の愛に下克上!ノンケが堕ちる瞬間なんて、ごちそうさまです!」
「あたくしも!もちろんジークハルト様とのお約束は守りますが……フレデリック殿下については無礼講なんですよね?」
「ふふふ。今日のことに関してはそうゆうお約束ですわ。でも、王家に対して不敬にならないようにだけお気をつけて下さいね?」
「「「サー!イエッサー!」」」
皆様軍隊顔負けの敬礼をして、ハイヒールで優雅に物凄い早さで帰られていきました。あ、気絶したままのマデリン様はちゃんと屋敷に送っていって下さるそうです。
あぁ、皆様とても良い顔をしていたわ。まるで水を得た魚のようにピチピチと輝いて……次の新刊が楽しみですね!
「貴腐人様、お茶をどうぞ」
「あら、ありがとうございます。クロス様ったら、ちゃんと執事っぽいことできるんですね」
「そりゃあ、手ずから入れたお茶を飲んで欲しいとおねだりした方が懐に入りやすいもんでな」
ニヤリと笑うクロス様。クロス様はかなりの腹黒ですが、ちゃんと報酬を用意すればたいがいのことはやってくれる頼れる腹黒なのです。なんといってもこの短期間で隠し通路を発見しちゃうんですからすごいですわ。
今回の報酬は、クロス様好みのロマンスグレーを紹介することですわ。ただお相手はノーマルな方なので籠絡できるかどうかはクロス様次第ですけれどね。そして、出会いの演出から堕ちるまでの工程を詳しく聞かせてもらう予定です!
わたしはお茶をひと口飲み、思わず溢れる笑みを扇子で隠した。この為にあの殿下の名前をなんとか覚えたのだ。忘れないようにするのが本当に大変だった(油断すると忘れそうになるけど)。この苦労が報われる時のことを思うとついニヤニヤしてしまいます。
さぁ、仕上げといきましょうか。
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神よ、今日この瞬間を感謝します。
この日わたしたちは貴腐人としての真理を心に感じ取ったのでした……。
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ジークにい様とフレデリック殿下が部屋に消えたのを確認し、わたしたちも早速行動に取りかかることにしました。
まずハイヒールを脱ぎ捨て、そしてそれぞれフラットな靴(歩く音が出にくい加工済み)に履き替えます。
「貴腐人様」
小声で近寄ってきたのは先ほどジークにい様といちゃいちゃしていた見習い執事の少年です。
ふふふ、実はこの見習い執事はわたしとジークにい様の仕込みなのです!ジークにい様の仲間(お友達)である彼に王宮の間取りを調べてもらうために巻き込みました!
「ふふっ、先ほどの演技は素晴らしかったですね。1年前にデビュタントしたばかりのあなたならフレデリック殿下に顔も知られてないので助かりました。このお礼は後程たっぷりいたしますね、クロス様」
わたしが含みを込めてそう言えば、彼……クロス様は栗色の髪をかきあげニヤリと笑った。
「フッ。ジークハルトの奴、本気出すらしいぜ?まぁ俺様はあんな王子なんざ趣味じゃねぇから羨ましいとは思わねぇけどな。貴腐人様なら、わかるだろ?」
「それはもちろん……クロス様は枯れ専ですものね!」
そう、このクロス様はこんなに美少年なのに枯れ専の攻めなんです!年上のロマンスグレーを籠絡する美少年……なんて素晴らしいのでしょう。おじ様キラーとして名高いクロス様と美少年キラーであるジークにい様は戦友のようなものらしいのですわ。まぁ、このおふたりが仲良く談笑(攻めの美徳について)している姿を見て勘違いなさってた腐女子も多数いたようですが、あえて訂正はいたしません。そこを見極められるようになってこそですから!
「では交渉成立ってことで、特別室へご案内いたしますよ」
クロス様が可愛らしいウインクをして、王宮にある王家専用の隠し通路へとわたしたちを誘いました――――。
『……んっ、ふぁ……』
『……可愛らしいですね、フレデリック』
『あっ』
暗くて狭いこの通路は、なんと各部屋へと通じている隠し通路なのである。部屋の中の様子をこっそり覗き……ゲフンゲフン。確認するには最適ですね!
「「「……」」」
少し響くように聞こえる部屋の中の声に真剣な顔つきになる腐女子の3人。瞬きもせずにずっと見開いているので少々目が血走っていますけれど、声も鼻血も出さずにひと言も聞き漏らすまいとして鬼気迫る様子はさすがです。
そっと覗き穴から中の様子を伺えば、そこはまさに薔薇の花びらが舞っていそうなドリームワールド☆が広がっていました。腐女子にとっての夢の世界がここに……!
衣擦れの音がまさに最高のBGMと化し、わずかに粘着質な響きがする度につい壁に耳を張り付けてしまいました。
『あっあっ……あ――――!』
おおっと!やったね、殿下!おめでとう!
フレデリック殿下が新しい扉を開いた瞬間に立ち会えた事を光栄に思います!
感激していると、ジークにい様がちらっと目配せをしてきました。おっと、これはまたもや合図です。退散するとしましょうか。
わたしが手で外を指すと、皆様も静かにこくりと頷きそっとその場を後にするのでした。
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誰にも見つからずにガゼボに戻ったわたしたちは靴を元のハイヒールに履き替え、しばらく誰も口を開きませんでした。しかしひとりが突然立ちあがり清らかな涙を一滴溢したのです。
「……申し訳ございません、ロゼリア貴腐人様。本当なら最後までここにいるお約束だったのですがわたくしは一刻も早く帰らねばならなくなりましたわ……!」
その言葉に「「同じく!」」と残りおふたりも立ちあがり、いまだ気絶してらっしゃるマデリン様を担がれました。
「わたくし、とても感動したのです!この感動が薄れぬうちに薄い本にしたためねばなりませんわ……!もう感動し過ぎて涙が止まりません!」
「わかりますわ!今なら……今ならなんでも書ける気がします!身分差を乗り越えた真実の愛に下克上!ノンケが堕ちる瞬間なんて、ごちそうさまです!」
「あたくしも!もちろんジークハルト様とのお約束は守りますが……フレデリック殿下については無礼講なんですよね?」
「ふふふ。今日のことに関してはそうゆうお約束ですわ。でも、王家に対して不敬にならないようにだけお気をつけて下さいね?」
「「「サー!イエッサー!」」」
皆様軍隊顔負けの敬礼をして、ハイヒールで優雅に物凄い早さで帰られていきました。あ、気絶したままのマデリン様はちゃんと屋敷に送っていって下さるそうです。
あぁ、皆様とても良い顔をしていたわ。まるで水を得た魚のようにピチピチと輝いて……次の新刊が楽しみですね!
「貴腐人様、お茶をどうぞ」
「あら、ありがとうございます。クロス様ったら、ちゃんと執事っぽいことできるんですね」
「そりゃあ、手ずから入れたお茶を飲んで欲しいとおねだりした方が懐に入りやすいもんでな」
ニヤリと笑うクロス様。クロス様はかなりの腹黒ですが、ちゃんと報酬を用意すればたいがいのことはやってくれる頼れる腹黒なのです。なんといってもこの短期間で隠し通路を発見しちゃうんですからすごいですわ。
今回の報酬は、クロス様好みのロマンスグレーを紹介することですわ。ただお相手はノーマルな方なので籠絡できるかどうかはクロス様次第ですけれどね。そして、出会いの演出から堕ちるまでの工程を詳しく聞かせてもらう予定です!
わたしはお茶をひと口飲み、思わず溢れる笑みを扇子で隠した。この為にあの殿下の名前をなんとか覚えたのだ。忘れないようにするのが本当に大変だった(油断すると忘れそうになるけど)。この苦労が報われる時のことを思うとついニヤニヤしてしまいます。
さぁ、仕上げといきましょうか。
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