上 下
39 / 58

遭難とスク水と人魚

しおりを挟む
    皆さん、こんにちは!アイリです☆夏休みも後半となりましたが、どうお過ごしですか?
 私はというと……。



「………………」

「………………」


 なぜか遭難して、これまたなぜか人魚に絡まれてます。







******



 夏休み前半は平和そのものだった。
 ウィリーと遊んだり。ナイトと遊んだり。セバスチャンのシャワーシーンを覗こうとして失敗したり。
 ウィリーと遊んだり。セバスチャンの寝床に忍び込もうとして失敗したり。

 お父様とお母様が私とセバスチャンを部屋に一晩閉じ込めて既成事実を作らせようとして失敗したり。お父様がセバスチャンを私の婿にするために色々ムチャぶりしたせいでセバスチャンがちょっぴりお怒りになり、お父様にお仕置きしてたり。
 それでもお父様が「諦めないぞ~っ」と叫んでいたり……。

 ええ、通常運転です。問題ありません。

 そして夏休み後半はお楽しみにしていたルーちゃんとプライベートビーチにバカンスに行く予定だった。今頃はルーちゃんと海で楽しく遊んでいたはずなのに、その直前での出来事。
 その日の朝、やたら暑くて寝汗が酷かったのでセバスチャンが起こしに来る前にこっそりお風呂に入ったのだ。シャワーだけでも良かったんだが、どうせならほんのりいい香りとかした方が女の子らしいじゃない?と思って秘蔵の入浴剤を使った。香水はセバスチャンが許してくれないからだ。

 以前フェロモン香水なるものの存在を知って、“これで気になる異性もイチコロ☆”というフレーズに心引かれたのだが、私が興味を持っているとわかった途端セバスチャンが「香水などで補う前に自身のフェロモンを1ミクロンでも出してから寝言でおっしゃってください」と執事スマイルで断固却下された。
 なんてことだ、私はまだフェロモンを1ミクロンも出していないらしい。
 しかも寝言で言えって、起きてる状態では口にするのもダメだと言うことではないか。というわけですべての香水が却下される事態となり、入浴剤とシャンプーの香りのみが許された。
 そしたらお母様が「この入浴剤はとても魅力的な香りがするらしいのよ」と珍しい入浴剤(なんでも極秘で入手したとか。怪しいです、お母様☆)をくれたのだ。
 少しぬるめの湯船に入浴剤を溶かす。お湯がマリンブルーに染まった。

 んー?なんの香りだろう?フローラルのような、スパイシーのような……。
 いい香りなんだけど、なんの香りかわからない。そんなことを考えながら体を沈める。

「……不思議な香りだなぁ~」

 目を閉じてぶくぶくと息を吐きながら顔を半分沈めると、なんだか太陽の下の少し温まった海水にでも浸かっているような、海水の上で浮かんでいるような、そんな不思議な感覚がした。
 あぁ、もうすぐセバスチャンが起こしにくる時間だ。早く出ないとふやけちゃう…………。


「アイリ様……!!」


 遠くでセバスチャンの慌てた声が聞こえた。セバスチャンが慌てるなんて珍しい。
 すると何かをボチャン!と投げ込まれたのだ。私は無意識にそれを掴んで、そのまま泡となった。




******



 気が付くと、裸で海辺の砂浜にいました。そして手には紺色のスクール水着がしっかりと掴まれていた。

 それはもう、パニックだ。

 でも最後の記憶の中で、セバスチャンが「アイリ様、コレを着ていなさい!!」と言っていた気がするので半身を海に浸りながら急いでスクール水着を着た。裸よりは絶対いい。

 でもなんでスクール水着なの、セバスチャン?!

 辺りを見回すが誰もいない。海と砂浜、それに鬱蒼としたジャングルみたいな森が目の前に広がっていた。

「ここはどこ……?」

 私は確かに家でお風呂に入っていたはずなのに、なぜ海?ジャングル?とりあえず砂浜にあがり、木陰を探す。太陽の陽射しがやたらと熱かった。
 その時、背後……海の方から声が聞こえたのだ。

「……ねぇ、あなた人間?」

「え?」

 振り向くとそこにはものすごい美女がいた。マリンブルーの長い豊かな髪、小顔で白い肌、サファイアのような瞳とふっくらとしたセクシーな唇。
 上半身ははち切れんばかりの胸を貝殻のみで隠していて、ある意味ルーちゃんの紐水着よりも際どかった。
 そして海に浸かっている下半身。ぴちゃんと水飛沫をあげたそれは2本の足ではなく、魚の尾ヒレだったのだ。

「ねぇ、あなた人間?」

 同じ質問が繰り返された。

「…………」

「…………」

 私は返事をすることができず、ただただそのサファイアの瞳を見つめ返すことしか出来ずにいた……。


 なんか知らないキャラが現れたんですけど?!なんで人魚――――?!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

処理中です...