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執事と紐の攻防戦
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夏休み直前、私は自室で悩んでいた。
長期休みはもちろん実家に帰って可愛い天使である弟と遊ぼうと思っているが、ルーちゃんとも遊びたいと思っていた。そしたらルーちゃんから「我が家のプライベートビーチの別荘に行きませんか?他に誰もいないから裸で泳いでも大丈夫ですわよ」とお誘いを受けたのだ。
裸で泳ぐのはちょっとアレだが、人目を気にせずルーちゃんと泳いで遊べるのはとても嬉しい。もちろん速攻でオッケーしたが、私は水着を持っていなかった。
そしたらルーちゃんが「予備の水着があるからお揃いで着ませんこと?」と貸してくれたので、ありがたく受け取って、部屋で試着しようとしてるのだが……。
「…………これは、紐だわ」
それは水着と言っていいのかわからないくらいの、小さな布のついた紐だった。いや、でも多分水着だ。
セバスチャンはちょっと用が出来たといってここにいない。私はこれをひとりで試着できるのだろうか?ちょっとでもずれたら大惨事になりそうな気がする。
しかし、これはさすがにちょっと恥ずかし……いや逆にチャンスか?
こんな大人っぽいセクシーダイナマイツな水着を私が着たら、セバスチャンは私の魅力に気付いてペットになっ……結婚してくれる気になるかもしれない。うん、ナイスアイデアだわ!
「ナイト、ちょっと向こうを向いててね」
私はバレッタを外し、テーブルに後ろ向きに置いた。
『きゅいっ』
バレッタのままだが、返事をしたので多分目を閉じてくれているのだろう。ナイトはそのへんはとても紳士なのだ。
ではセバスチャンが帰ってくる前にセクシィーアイリに変身して、驚かしてメロメロのしちゃおう作戦を実行したいと思います!
私はボタンを外してシャツを脱いだ。お気に入りのブルーの下着は透けるからダメだと言われたので最近は白のレースの下着ばかりだ。本当はスポーツブラみたいなのをつけるようにセバスチャンに言われてるが可愛くないからこっちにしている。
ルーちゃんみたいにノー下着みたいなのもちょっと憧れるが、セバスチャンが絶対ダメだって言うので諦めた。
最近のセバスチャンはなにかというと、あれはダメだこれはダメだとちょっと口うるさいのだ。
「もうちょっと、色々融通きかせてくれてもいいのになぁ」
そんな独り言を呟きながらスカートを脱ごうとした時。
「もしかしなかても、この紐を着るおつもりですか?」
両肩を掴まれ、セバスチャンがにっこり執事スマイルで背後から現れた。
「せ、せばっ、いつの間にっ?!」
「そんなことより、この紐を着るおつもりですか?これは、衣服ではなく紐ですよ?」
「え、これはルーちゃんに貸してもらった水着で……」
「いいえ、これは紐です。よく見てください。紐は着るものではなく、縛るものですよ」
「だから、みず」
「ただの紐です」
「み」
「紐です」
……うん?やっぱり紐かな?
セバスチャンがそう断言してくると、なんだかそう思えてくるから不思議である。さっきまで多少なりは水着に見えてたはずなのに今は完全に紐に見えてきてしまった。
「紐を着ますか?」
「……着ません」
またセバスチャンに敗北してしまった。セクシィーアイリなれず。
セバスチャンは紐を回収すると、今度は私が脱ぎ捨てたシャツを拾った。
「では早くお着替え下さい。いつまでそんなはしたない格好をなさってるつもりですか?」
そういわれて、自分が下着姿だったことに気づいた。
「え。あっ!」
急に恥ずかしくなり身を縮めると、チャックを外して脱ぎかけてたスカートが腰からぱさりと下に落ちる。(そしてなぜか反射的に振り向いてしまった)
なんと、セバスチャンの目の前で完全な下着姿になってしまったのだ。
「あわわわ……」
どうしよう。私、今のこの状況をさっきの紐(水着)でしようとしてたのに。でも水着ではなく下着姿を晒してしまったのが無性に恥ずかしくなる。
しかも白のレースだし。どうせならもっと大人っぽい勝負下着でもつけてればよかった!(いや、そんなの持ってないけど)
「…………」
チラリとセバスチャンを見ると、セバスチャンは黙ったまま少し目を見開いて固まっていた。そして数秒たってから片手で頭を抱えて盛大なため息をついたのだ。
「――――アイリ様」
「ふ、ふえっ」
「私、急用を思い出しましたのでしばらく出かけてきます。その間に着替えを済ませておいてください。あと鍵はちゃんとかけておいてください。先程は開いていましたから」
そう言い、拾ったシャツを私に手渡すとそのまま部屋を出ていった。言われた通り鍵を閉めて急いで服を着る。
「……なんか、緊張したぁ」
しかしセバスチャンは何も言わずに行ってしまった。特に反応無しなのも寂しい。
よく考えれば以前にもセバスチャンには下着姿とか見られているし、なんかため息つかれたし。もしかして子供っぽすぎて呆れられたのかしら?
それにしてもさっきも用があるからと出掛けていたのに、また急用ってどうしたんだろう?
後日、なにやら不機嫌な顔でひとり歩いているセバスチャンに文句をいって(執事の分際でアイリに馴れ馴れしくするなとか)絡んだらしい双子王子がロープでぐるぐる巻きにされて木に吊るされていたらしいと風の噂を聞いたが、不機嫌なセバスチャンに絡む方が悪いと思うアイリだった。(しかし、セバスチャンが不機嫌になるようなことって何があったんだろう?)
長期休みはもちろん実家に帰って可愛い天使である弟と遊ぼうと思っているが、ルーちゃんとも遊びたいと思っていた。そしたらルーちゃんから「我が家のプライベートビーチの別荘に行きませんか?他に誰もいないから裸で泳いでも大丈夫ですわよ」とお誘いを受けたのだ。
裸で泳ぐのはちょっとアレだが、人目を気にせずルーちゃんと泳いで遊べるのはとても嬉しい。もちろん速攻でオッケーしたが、私は水着を持っていなかった。
そしたらルーちゃんが「予備の水着があるからお揃いで着ませんこと?」と貸してくれたので、ありがたく受け取って、部屋で試着しようとしてるのだが……。
「…………これは、紐だわ」
それは水着と言っていいのかわからないくらいの、小さな布のついた紐だった。いや、でも多分水着だ。
セバスチャンはちょっと用が出来たといってここにいない。私はこれをひとりで試着できるのだろうか?ちょっとでもずれたら大惨事になりそうな気がする。
しかし、これはさすがにちょっと恥ずかし……いや逆にチャンスか?
こんな大人っぽいセクシーダイナマイツな水着を私が着たら、セバスチャンは私の魅力に気付いてペットになっ……結婚してくれる気になるかもしれない。うん、ナイスアイデアだわ!
「ナイト、ちょっと向こうを向いててね」
私はバレッタを外し、テーブルに後ろ向きに置いた。
『きゅいっ』
バレッタのままだが、返事をしたので多分目を閉じてくれているのだろう。ナイトはそのへんはとても紳士なのだ。
ではセバスチャンが帰ってくる前にセクシィーアイリに変身して、驚かしてメロメロのしちゃおう作戦を実行したいと思います!
私はボタンを外してシャツを脱いだ。お気に入りのブルーの下着は透けるからダメだと言われたので最近は白のレースの下着ばかりだ。本当はスポーツブラみたいなのをつけるようにセバスチャンに言われてるが可愛くないからこっちにしている。
ルーちゃんみたいにノー下着みたいなのもちょっと憧れるが、セバスチャンが絶対ダメだって言うので諦めた。
最近のセバスチャンはなにかというと、あれはダメだこれはダメだとちょっと口うるさいのだ。
「もうちょっと、色々融通きかせてくれてもいいのになぁ」
そんな独り言を呟きながらスカートを脱ごうとした時。
「もしかしなかても、この紐を着るおつもりですか?」
両肩を掴まれ、セバスチャンがにっこり執事スマイルで背後から現れた。
「せ、せばっ、いつの間にっ?!」
「そんなことより、この紐を着るおつもりですか?これは、衣服ではなく紐ですよ?」
「え、これはルーちゃんに貸してもらった水着で……」
「いいえ、これは紐です。よく見てください。紐は着るものではなく、縛るものですよ」
「だから、みず」
「ただの紐です」
「み」
「紐です」
……うん?やっぱり紐かな?
セバスチャンがそう断言してくると、なんだかそう思えてくるから不思議である。さっきまで多少なりは水着に見えてたはずなのに今は完全に紐に見えてきてしまった。
「紐を着ますか?」
「……着ません」
またセバスチャンに敗北してしまった。セクシィーアイリなれず。
セバスチャンは紐を回収すると、今度は私が脱ぎ捨てたシャツを拾った。
「では早くお着替え下さい。いつまでそんなはしたない格好をなさってるつもりですか?」
そういわれて、自分が下着姿だったことに気づいた。
「え。あっ!」
急に恥ずかしくなり身を縮めると、チャックを外して脱ぎかけてたスカートが腰からぱさりと下に落ちる。(そしてなぜか反射的に振り向いてしまった)
なんと、セバスチャンの目の前で完全な下着姿になってしまったのだ。
「あわわわ……」
どうしよう。私、今のこの状況をさっきの紐(水着)でしようとしてたのに。でも水着ではなく下着姿を晒してしまったのが無性に恥ずかしくなる。
しかも白のレースだし。どうせならもっと大人っぽい勝負下着でもつけてればよかった!(いや、そんなの持ってないけど)
「…………」
チラリとセバスチャンを見ると、セバスチャンは黙ったまま少し目を見開いて固まっていた。そして数秒たってから片手で頭を抱えて盛大なため息をついたのだ。
「――――アイリ様」
「ふ、ふえっ」
「私、急用を思い出しましたのでしばらく出かけてきます。その間に着替えを済ませておいてください。あと鍵はちゃんとかけておいてください。先程は開いていましたから」
そう言い、拾ったシャツを私に手渡すとそのまま部屋を出ていった。言われた通り鍵を閉めて急いで服を着る。
「……なんか、緊張したぁ」
しかしセバスチャンは何も言わずに行ってしまった。特に反応無しなのも寂しい。
よく考えれば以前にもセバスチャンには下着姿とか見られているし、なんかため息つかれたし。もしかして子供っぽすぎて呆れられたのかしら?
それにしてもさっきも用があるからと出掛けていたのに、また急用ってどうしたんだろう?
後日、なにやら不機嫌な顔でひとり歩いているセバスチャンに文句をいって(執事の分際でアイリに馴れ馴れしくするなとか)絡んだらしい双子王子がロープでぐるぐる巻きにされて木に吊るされていたらしいと風の噂を聞いたが、不機嫌なセバスチャンに絡む方が悪いと思うアイリだった。(しかし、セバスチャンが不機嫌になるようなことって何があったんだろう?)
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