12 / 58
願望がただ漏れしてしまった。
しおりを挟む
みなさん、こんにちは!アイリ・ルーベンス、15歳になりました!
今週中に入寮して、来週から学園が始まります。入学式からがゲームのストーリー開始で、ゲームでは初日から攻略対象者たちと顔を会わせたりミニイベントがおきたり悪役令嬢に目をつけられるなどの予定となっておりますが、ルーちゃんとは寮の部屋は絶対隣がいいね!と約束してる親友だし(その時ルーちゃんが「そんなにわたくしの隣がいいなら、そうなるように全権力を使ってそうしてあげても、よくてよ?」と手をもじもじさせながら顔をツンとしつつ、横目で私の反応をチラチラと見ながら言ったのがものすごく可愛かったので全力でお願いした。使えるものは親の権力でも絞って1滴残らず使おう!が私とルーちゃんのモットーである)、攻略対象者たちの変態へのフラグはオープニングムービー時点で全てへし折ったはずなので、私の学園生活は安泰のはずである。
でもここでひとつだけ問題が発生した。それは、攻略対象者たちとのイベントをクリアしないと吸血鬼の呪いが発覚しないことだ。
発覚しないと、吸血鬼はラストまでほぼ出てこない。つまり、このままではゲーム終了時にちょろっと出て来るだけになってしまう可能性があるのだ。
しかし、せっかく関わらないで済む攻略対象者たちとはかかわり合いになりたくない。なので考えた結果……。
直接、吸血鬼様を口説くことにしました☆
ちなみに吸血鬼様の住み処は迷いの森と言われる恐ろしい森の奥にある。え?なんで知ってるかって?
そんなの、もちろん前世の記憶で裏公式設定にある吸血鬼様の情報を暗記して詠唱できるくらいに覚えていたからである。もちろんスリーサイズから性癖までバッチリ思い出した。
ストーカー?上等だ。自分のことよりも吸血鬼様の情報を丸暗記していた前世の私、ぐっじょぶ!
そんなわけで現在、森の中をさ迷い中。でもなんとなく道がわかる(直感)。たぶん吸血鬼の呪いと祝福のおかげだろう。通常ならこの森は散々迷ったあげくに元の道に戻るか、全く違う所に出てしまい森の中心部にはたどり着けないのだ。
木々が揺れ、天候が怪しくなってきた。頭上からパタパタと音がして見上げると、小さなコウモリが数匹飛び回っている。
「わぁ、可愛いー」
私は背中のリュックからいくつか果物を取り出してコウモリたちに見せた。
「おいでー」
コウモリたちはしばらく警戒していたが一匹がフラフラと果物にピトっとくっつくと、残りのコウモリたちも次々とやって来て果物の果汁を啜り始める。裏公式設定ではこの森のコウモリはほとんどがフルーツや樹液を食する種類で危険は無いと書いてあった。
私は吸血鬼ラブになってからは吸血鬼の眷属にあたるコウモリが可愛く見えてしょうがないので全然怖くない。お腹いっぱいになったコウモリ(最初の一匹)が私の頭の上に留まり羽をパタパタと動かした。
「きゅいっきゅいっ」
なにその鳴き声。めっちゃ可愛い。さらにコウモリが好きになった瞬間であった。
私の頭をツンツンとつつき、ある方向を示す。どうやら道を教えてくれてるようだ。
「吸血鬼様の所に連れてってくれるの?」
「きゅいっ」
なんとなくわかる(直感)と進んでいたけどやはり合っていたようだ。そしてしばらく進むと立派なお城が見えた。
飾ってある旗も外壁もボロボロでいかにも廃墟なお城だったが、ここに吸血鬼様がいると思うとまるでシンデレラ城のようだった。私は門の所にいき、ノッカーを使ってコンコンと門を叩く。
「吸血鬼様いらっしゃいますか?」
「きゅいっ」
すると生温い風が吹き、私を包んだ。
『……!!立ち去れ』
風に運ばれてどこからか声が聞こえる。この声は、この超絶イケメンボイスは……!!と、私は感動で身震いした。
『震えるほど恐ろしいのなら今すぐ立ち去れ。どうやってコウモリを手懐けたか知らんが、俺様の眷属に何かしたらお前の命は無いと思え』
はっ!いかん、感動しすぎて気絶するところだった。
「私は吸血鬼様に会いに来たんです。コウモリは餌付けしました!」
「きゅいっ」
私の頭の上でコウモリがどや顔で鳴いた。
『……そうか、空腹でいたところを仲間共々助けられたと……。俺様に会いたがっていたからお礼に連れてきた…と』
え。このコウモリ、あの鳴き声でそんな説明してたの?どこにそんな長いセリフ入ってたの?
『……わかった、では面会を許可しよう』
城の門が古びた音を立てて開いた。中を覗くと長い廊下に手前から順に灯りがつき奥の部屋へと道を示した。
「きゅいっ」
コウモリが、こっちだよ!と言いたげに羽を動かした。うん、これなら私にもわかる。そして奥の部屋の扉を開き、一歩中へと進む。
『……ようこそ、人間の娘よ』
「!!」
そこには、艶やかな黒い髪とルビーのような紅い瞳をした超絶イケメンが超絶イケメンボイスを携えてソファーに座っていた。
……あぁ、本物が、本物が目の前にいる……!
『俺様が怖いか。まぁ、無理もない。それで俺様に会いに来た用件はなんだ?コウモリの恩があるからな、今回だけは殺さずに聞いてやる』
私は両手を握りしめて、思わず願望のままに叫んでしまった。
「私の観賞用になってください!!」
『…………は?』
今週中に入寮して、来週から学園が始まります。入学式からがゲームのストーリー開始で、ゲームでは初日から攻略対象者たちと顔を会わせたりミニイベントがおきたり悪役令嬢に目をつけられるなどの予定となっておりますが、ルーちゃんとは寮の部屋は絶対隣がいいね!と約束してる親友だし(その時ルーちゃんが「そんなにわたくしの隣がいいなら、そうなるように全権力を使ってそうしてあげても、よくてよ?」と手をもじもじさせながら顔をツンとしつつ、横目で私の反応をチラチラと見ながら言ったのがものすごく可愛かったので全力でお願いした。使えるものは親の権力でも絞って1滴残らず使おう!が私とルーちゃんのモットーである)、攻略対象者たちの変態へのフラグはオープニングムービー時点で全てへし折ったはずなので、私の学園生活は安泰のはずである。
でもここでひとつだけ問題が発生した。それは、攻略対象者たちとのイベントをクリアしないと吸血鬼の呪いが発覚しないことだ。
発覚しないと、吸血鬼はラストまでほぼ出てこない。つまり、このままではゲーム終了時にちょろっと出て来るだけになってしまう可能性があるのだ。
しかし、せっかく関わらないで済む攻略対象者たちとはかかわり合いになりたくない。なので考えた結果……。
直接、吸血鬼様を口説くことにしました☆
ちなみに吸血鬼様の住み処は迷いの森と言われる恐ろしい森の奥にある。え?なんで知ってるかって?
そんなの、もちろん前世の記憶で裏公式設定にある吸血鬼様の情報を暗記して詠唱できるくらいに覚えていたからである。もちろんスリーサイズから性癖までバッチリ思い出した。
ストーカー?上等だ。自分のことよりも吸血鬼様の情報を丸暗記していた前世の私、ぐっじょぶ!
そんなわけで現在、森の中をさ迷い中。でもなんとなく道がわかる(直感)。たぶん吸血鬼の呪いと祝福のおかげだろう。通常ならこの森は散々迷ったあげくに元の道に戻るか、全く違う所に出てしまい森の中心部にはたどり着けないのだ。
木々が揺れ、天候が怪しくなってきた。頭上からパタパタと音がして見上げると、小さなコウモリが数匹飛び回っている。
「わぁ、可愛いー」
私は背中のリュックからいくつか果物を取り出してコウモリたちに見せた。
「おいでー」
コウモリたちはしばらく警戒していたが一匹がフラフラと果物にピトっとくっつくと、残りのコウモリたちも次々とやって来て果物の果汁を啜り始める。裏公式設定ではこの森のコウモリはほとんどがフルーツや樹液を食する種類で危険は無いと書いてあった。
私は吸血鬼ラブになってからは吸血鬼の眷属にあたるコウモリが可愛く見えてしょうがないので全然怖くない。お腹いっぱいになったコウモリ(最初の一匹)が私の頭の上に留まり羽をパタパタと動かした。
「きゅいっきゅいっ」
なにその鳴き声。めっちゃ可愛い。さらにコウモリが好きになった瞬間であった。
私の頭をツンツンとつつき、ある方向を示す。どうやら道を教えてくれてるようだ。
「吸血鬼様の所に連れてってくれるの?」
「きゅいっ」
なんとなくわかる(直感)と進んでいたけどやはり合っていたようだ。そしてしばらく進むと立派なお城が見えた。
飾ってある旗も外壁もボロボロでいかにも廃墟なお城だったが、ここに吸血鬼様がいると思うとまるでシンデレラ城のようだった。私は門の所にいき、ノッカーを使ってコンコンと門を叩く。
「吸血鬼様いらっしゃいますか?」
「きゅいっ」
すると生温い風が吹き、私を包んだ。
『……!!立ち去れ』
風に運ばれてどこからか声が聞こえる。この声は、この超絶イケメンボイスは……!!と、私は感動で身震いした。
『震えるほど恐ろしいのなら今すぐ立ち去れ。どうやってコウモリを手懐けたか知らんが、俺様の眷属に何かしたらお前の命は無いと思え』
はっ!いかん、感動しすぎて気絶するところだった。
「私は吸血鬼様に会いに来たんです。コウモリは餌付けしました!」
「きゅいっ」
私の頭の上でコウモリがどや顔で鳴いた。
『……そうか、空腹でいたところを仲間共々助けられたと……。俺様に会いたがっていたからお礼に連れてきた…と』
え。このコウモリ、あの鳴き声でそんな説明してたの?どこにそんな長いセリフ入ってたの?
『……わかった、では面会を許可しよう』
城の門が古びた音を立てて開いた。中を覗くと長い廊下に手前から順に灯りがつき奥の部屋へと道を示した。
「きゅいっ」
コウモリが、こっちだよ!と言いたげに羽を動かした。うん、これなら私にもわかる。そして奥の部屋の扉を開き、一歩中へと進む。
『……ようこそ、人間の娘よ』
「!!」
そこには、艶やかな黒い髪とルビーのような紅い瞳をした超絶イケメンが超絶イケメンボイスを携えてソファーに座っていた。
……あぁ、本物が、本物が目の前にいる……!
『俺様が怖いか。まぁ、無理もない。それで俺様に会いに来た用件はなんだ?コウモリの恩があるからな、今回だけは殺さずに聞いてやる』
私は両手を握りしめて、思わず願望のままに叫んでしまった。
「私の観賞用になってください!!」
『…………は?』
5
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる