22 / 24
19
しおりを挟む
「エトランゼ嬢、今回はあなたのおかけでとても助かりましたが……もう!決して!ひとりで無茶なことはしないでください……!!約束してくれなければ、心配で僕はあなたから1ミリも離れられません!」
そう言って、アーノルド様が私を膝の上に乗せてぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。寝起きなのか慌てていたのかいつもならカッチリと着こなしているシャツが少し乱れていて、さらにはいつもより密着度が上がっているのかアーノルド様の心臓の音がやたら大きく聞こえていた。
「ア、アーノルド様……や、約束しますから、その」
「もしもエトランゼ嬢が危険な目に遭っていたらと思うと僕の心臓は今にも止まりそうです……。出来ることならずっとこの胸の中に閉じ込めておきたいくらいなのに」
いつもより甘く切ない声でそう言って少しだけ体を離すと、アーノルド様の青い瞳がいつもより近くで私を覗き込んでくるのだ。これでは私の心臓の方が保たない気がした。
「アーノルド様……ご心配をおかけしてしまってごめんなさい……」
「エトランゼ嬢……とにかくあなたが無事で良かった」
するとアーノルド様は目を細め、私の額にそっと唇を落とす。その柔らかな感触のせいで熱が一気に頬に集まってしまった。
「ア、アーノルド様……!」
「エトランゼ嬢……」
私の視線とアーノルド様の視線が重なり、お互いの名前を呟いたその時。
「このイチャイチャシーンはいつまで続くわけ?まさかあの若さんが嫁をこんなに溺愛するとは意外だなー」
ズズッと音を立ててお茶を飲んでいたナイジェルが呆れた声を出したのである。
「お兄様ったら、今日も攻めていますわね!少し困りながらも溺愛されるエトランゼ様プライレスですわ!」
「若いって素晴らしいなぁ」
「あらあら、今夜は御赤飯かしらねぇ」
なぜかすっかりくつろぎモードのセノーデン伯爵夫妻とアーシャ様たちもお茶を片手にお菓子まで頬張っている。そして、まだここはギルドの一室でみんなの目の前だと思い出した私は羞恥心で言葉を失いそうになってしまった。
「見世物じゃないんで、あっちを向いててもらえますか。エトランゼ嬢を愛でるのは僕の特権ですので。特にナイジェルはまだ許したわけではないですから」
プシューと湯気を吐きそうになっている私を再び密着度MAXで抱き締めて、さらには私の頭を優しく撫でながらアーノルド様がそう言うとナイジェルが「ふはっ」と笑い声を上げる。
「へぇ~。まぁ、旦那の命令なら聞くけど……若さんにあれこれ言われるのは「今回の件については、セノーデン家の意見は一致しているよ。ナイジェル」……りょーかい。まぁ、若奥さんのおかげで仕事もなんとかなったし……どんな罰でも受けますよ」
セノーデン伯爵の鋭いひと言に、ナイジェルは両手を挙げて「降参でーす」とふざけたように口を開く。しかしふと見えた仮面の奥に光る金色の瞳は笑っていないように思えた。
確かに拉致同然に連れてこられはしたが、それは私をセノーデン伯爵家の一員として認めてくれたからだしアーノルド様の役に立てたのなら私だって本望だ。アーノルド様が私を心配してくれるのは嬉しいが、あまり厳しい罰はやめてあげて欲しい。
少し落ち着いてきたのでチラリと部屋の中を見渡すが、例の3人もすでに部屋の中にはいない。
「あの、アーノルド様。今回の事はあまり大事にしないでくださいね……?出来れば軽い罰にしてあげて欲しいのですが……」
つい上目遣いになりながらそう言うと、アーノルド様はなぜか「ずっキュゥぅぅん!!」と効果音みたいな言葉を口にして天を仰ぐし、アーシャ様は「赤く染まった頬に潤んだ瞳の上目遣いなんて……過剰摂取は致死量ですわ、お兄様!なんならそこを代わって下さいませ!……くっ、鼻の粘膜がぁ!」と興奮気味に声を荒げて鼻を押さえているし、セノーデン伯爵夫妻に至っては「もはやエトランゼちゃんしか勝たん!生きてて良かった……」と拝みだすし……。え、なにごと?
「あーぁ、これはまた家族全員イチコロなのか……。若奥さん、やっぱおもしれー」
ナイジェルがニヤニヤと笑っていたが、結局どんな罰になるのかは教えてもらえないのだった。
そう言って、アーノルド様が私を膝の上に乗せてぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。寝起きなのか慌てていたのかいつもならカッチリと着こなしているシャツが少し乱れていて、さらにはいつもより密着度が上がっているのかアーノルド様の心臓の音がやたら大きく聞こえていた。
「ア、アーノルド様……や、約束しますから、その」
「もしもエトランゼ嬢が危険な目に遭っていたらと思うと僕の心臓は今にも止まりそうです……。出来ることならずっとこの胸の中に閉じ込めておきたいくらいなのに」
いつもより甘く切ない声でそう言って少しだけ体を離すと、アーノルド様の青い瞳がいつもより近くで私を覗き込んでくるのだ。これでは私の心臓の方が保たない気がした。
「アーノルド様……ご心配をおかけしてしまってごめんなさい……」
「エトランゼ嬢……とにかくあなたが無事で良かった」
するとアーノルド様は目を細め、私の額にそっと唇を落とす。その柔らかな感触のせいで熱が一気に頬に集まってしまった。
「ア、アーノルド様……!」
「エトランゼ嬢……」
私の視線とアーノルド様の視線が重なり、お互いの名前を呟いたその時。
「このイチャイチャシーンはいつまで続くわけ?まさかあの若さんが嫁をこんなに溺愛するとは意外だなー」
ズズッと音を立ててお茶を飲んでいたナイジェルが呆れた声を出したのである。
「お兄様ったら、今日も攻めていますわね!少し困りながらも溺愛されるエトランゼ様プライレスですわ!」
「若いって素晴らしいなぁ」
「あらあら、今夜は御赤飯かしらねぇ」
なぜかすっかりくつろぎモードのセノーデン伯爵夫妻とアーシャ様たちもお茶を片手にお菓子まで頬張っている。そして、まだここはギルドの一室でみんなの目の前だと思い出した私は羞恥心で言葉を失いそうになってしまった。
「見世物じゃないんで、あっちを向いててもらえますか。エトランゼ嬢を愛でるのは僕の特権ですので。特にナイジェルはまだ許したわけではないですから」
プシューと湯気を吐きそうになっている私を再び密着度MAXで抱き締めて、さらには私の頭を優しく撫でながらアーノルド様がそう言うとナイジェルが「ふはっ」と笑い声を上げる。
「へぇ~。まぁ、旦那の命令なら聞くけど……若さんにあれこれ言われるのは「今回の件については、セノーデン家の意見は一致しているよ。ナイジェル」……りょーかい。まぁ、若奥さんのおかげで仕事もなんとかなったし……どんな罰でも受けますよ」
セノーデン伯爵の鋭いひと言に、ナイジェルは両手を挙げて「降参でーす」とふざけたように口を開く。しかしふと見えた仮面の奥に光る金色の瞳は笑っていないように思えた。
確かに拉致同然に連れてこられはしたが、それは私をセノーデン伯爵家の一員として認めてくれたからだしアーノルド様の役に立てたのなら私だって本望だ。アーノルド様が私を心配してくれるのは嬉しいが、あまり厳しい罰はやめてあげて欲しい。
少し落ち着いてきたのでチラリと部屋の中を見渡すが、例の3人もすでに部屋の中にはいない。
「あの、アーノルド様。今回の事はあまり大事にしないでくださいね……?出来れば軽い罰にしてあげて欲しいのですが……」
つい上目遣いになりながらそう言うと、アーノルド様はなぜか「ずっキュゥぅぅん!!」と効果音みたいな言葉を口にして天を仰ぐし、アーシャ様は「赤く染まった頬に潤んだ瞳の上目遣いなんて……過剰摂取は致死量ですわ、お兄様!なんならそこを代わって下さいませ!……くっ、鼻の粘膜がぁ!」と興奮気味に声を荒げて鼻を押さえているし、セノーデン伯爵夫妻に至っては「もはやエトランゼちゃんしか勝たん!生きてて良かった……」と拝みだすし……。え、なにごと?
「あーぁ、これはまた家族全員イチコロなのか……。若奥さん、やっぱおもしれー」
ナイジェルがニヤニヤと笑っていたが、結局どんな罰になるのかは教えてもらえないのだった。
41
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる