15 / 24
13,5 その裏側で
しおりを挟む
「だから!異国の第三皇女だと言っているだろう?!名前はライア嬢だ!何度同じことを言わせれば気が済むんだ、この無能共!!」
「……ですから、異国の第三皇女様は王子のことなど知らないと言っておられます。というか、第三皇女様はまだ3歳になられたばかりですよ?自国から出られた事もないのに、どうやってあなたと運命の出会いとやらをするんです?」
「さ、3歳だとぉ?!一体どこの皇女と間違えているんだ?!俺が言っているのはピンクゴールドの髪と海色の瞳をしたライアという名前の……」
「ですから、確かに異国の第三皇女のライア姫はピンクゴールドの髪と青い瞳をしておられますが、まだ3歳で運命の相手どころか婚約者や異性のお友達もおられません。というか、ご自分の立場をわかっていますか?異国の皇帝はライア姫を政略の道具に利用しようとした王子を決して許さないと怒り心頭で、陛下がなんとか許してもらえるように頭を下げているんですよ?!男爵令嬢なんかに現を抜かしているかと思えば今度は国際問題……とにかく、しばらくは謹慎しているようにと陛下からの命令です。部屋で大人しくしていて下さい!」
「そ、そんな……」
バタン!と扉が閉まると同時に扉には鍵がかけられた音がする。どうやら王子は自室に軟禁されるようである。兵士が王子に対してあれほど感情をあらわにするってことは、異国の皇帝の怒りは凄まじいことになっているようだった。
「ふふふ……うまくいきましたわ」
状況の確認と覗き見のために忍び込んだ王城の天井裏からそっと抜け出し人気のない場所に移動をすると、王子の探し求めていたピンクゴールドの長い髪に手をかけ……ズルリと頭から脱ぎ取った。そして濡れタオルで顔をゴシゴシと擦ると……その顔は王子の想い人ライアではなく、アーシャのものへと変貌したのだ。
「ふぅ~、ずっとウィッグをつけていると蒸れちゃいますわ。それにしてもお母様直伝のメイク術はやっぱり凄いですわ、まるで別人でしたもの。というか、もはや特殊メイクですわね」
アーシャは「あの様子ならわたくしの変装だとは気付いてないですわね」と笑いを堪えながら少し蒸れてしまった髪を風にあてふわりと靡かす。そして数回瞬きをして両目からポロッと鱗のようなものを落とした。メイク術もだが、カラコンの開発に成功していなかったら完璧には変装出来なかっただろう。王子の顔をずっと見つめるのは拷問だったけれど、上手く引っかかってくれてよかったと瞳を細めた。
「さぁ、ミッション終了ですわ。無事に王子の意識をエトランゼ様から反らせましたし、これで王子の身動きも制限されますわね。
もう、エトランゼ様成分が不足してしまいましたわ!これだけ頑張ったのですから、エトランゼ様と一緒にお風呂に入ったり一緒に就寝したりして補給しなくては!」
それまで着ていたドレスも脱ぎ、ウィッグやカラコンと共に穴に埋める。これは特別な繊維で出来ていてしばらく埋めておけば土に還る仕様なのだ。ただし一回限りの使い切りなので再利用は不可である。だから一般には出せないのだが……その代わり証拠隠滅は完璧だ。その他にも、封蝋印の模造品を作ってくれる職人を買収したり、王子のサインを完コピして色んな国に手紙を送ったり……結構な重労働である。
アーシャは準備していた新たな平民の服を身につけると帽子を深く被り、下町へと繰り出した。
「さてと、エトランゼ様にお土産を買っていかなくちゃ♪これからしばらくは嗜好品が不足しそうですものね」
こうしてアーシャは、軽やかな足取りで伯爵家へと帰路したのだった。
「……ですから、異国の第三皇女様は王子のことなど知らないと言っておられます。というか、第三皇女様はまだ3歳になられたばかりですよ?自国から出られた事もないのに、どうやってあなたと運命の出会いとやらをするんです?」
「さ、3歳だとぉ?!一体どこの皇女と間違えているんだ?!俺が言っているのはピンクゴールドの髪と海色の瞳をしたライアという名前の……」
「ですから、確かに異国の第三皇女のライア姫はピンクゴールドの髪と青い瞳をしておられますが、まだ3歳で運命の相手どころか婚約者や異性のお友達もおられません。というか、ご自分の立場をわかっていますか?異国の皇帝はライア姫を政略の道具に利用しようとした王子を決して許さないと怒り心頭で、陛下がなんとか許してもらえるように頭を下げているんですよ?!男爵令嬢なんかに現を抜かしているかと思えば今度は国際問題……とにかく、しばらくは謹慎しているようにと陛下からの命令です。部屋で大人しくしていて下さい!」
「そ、そんな……」
バタン!と扉が閉まると同時に扉には鍵がかけられた音がする。どうやら王子は自室に軟禁されるようである。兵士が王子に対してあれほど感情をあらわにするってことは、異国の皇帝の怒りは凄まじいことになっているようだった。
「ふふふ……うまくいきましたわ」
状況の確認と覗き見のために忍び込んだ王城の天井裏からそっと抜け出し人気のない場所に移動をすると、王子の探し求めていたピンクゴールドの長い髪に手をかけ……ズルリと頭から脱ぎ取った。そして濡れタオルで顔をゴシゴシと擦ると……その顔は王子の想い人ライアではなく、アーシャのものへと変貌したのだ。
「ふぅ~、ずっとウィッグをつけていると蒸れちゃいますわ。それにしてもお母様直伝のメイク術はやっぱり凄いですわ、まるで別人でしたもの。というか、もはや特殊メイクですわね」
アーシャは「あの様子ならわたくしの変装だとは気付いてないですわね」と笑いを堪えながら少し蒸れてしまった髪を風にあてふわりと靡かす。そして数回瞬きをして両目からポロッと鱗のようなものを落とした。メイク術もだが、カラコンの開発に成功していなかったら完璧には変装出来なかっただろう。王子の顔をずっと見つめるのは拷問だったけれど、上手く引っかかってくれてよかったと瞳を細めた。
「さぁ、ミッション終了ですわ。無事に王子の意識をエトランゼ様から反らせましたし、これで王子の身動きも制限されますわね。
もう、エトランゼ様成分が不足してしまいましたわ!これだけ頑張ったのですから、エトランゼ様と一緒にお風呂に入ったり一緒に就寝したりして補給しなくては!」
それまで着ていたドレスも脱ぎ、ウィッグやカラコンと共に穴に埋める。これは特別な繊維で出来ていてしばらく埋めておけば土に還る仕様なのだ。ただし一回限りの使い切りなので再利用は不可である。だから一般には出せないのだが……その代わり証拠隠滅は完璧だ。その他にも、封蝋印の模造品を作ってくれる職人を買収したり、王子のサインを完コピして色んな国に手紙を送ったり……結構な重労働である。
アーシャは準備していた新たな平民の服を身につけると帽子を深く被り、下町へと繰り出した。
「さてと、エトランゼ様にお土産を買っていかなくちゃ♪これからしばらくは嗜好品が不足しそうですものね」
こうしてアーシャは、軽やかな足取りで伯爵家へと帰路したのだった。
45
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる