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64 離れる決意をしました
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……なんてことでしょう。
ジルさんと今後の話をしようと彼の執務室にやってきたらーーーー今まさにアニーがジルさんにモップを振り下ろして戦いを挑んでいました。
扉が開けっ放しになってるから何かあったのかと思ったけれど、まさか私の侍女が国王に襲いかかるなんて不敬どころの話ではありません。急いで止めなくては!
「ア……」
「わぁ~っ!?ちょっ、たんま!」
「問答無用!」
ガシィッ!と激しくぶつかる音が響きました。ジルさんは近くにあった分厚い本でアニーのモップを受け止めたようです。早く止めなくてはいけないのに、私はとっさに声が出ませんでした。
だって、アニーは泣いていたんです。
「よくも!お嬢様を!悲しませましたね?!」
ブンブンとモップを振り回しながら、大粒の涙を溢れされて泣いていたのです。……普段から思ったことをすぐ口にする困った癖がある私の侍女。私についてくるために母国を離れ、この3年間一緒にラスドレード国のために奮闘してくれた大切な侍女が……私のために泣いてジルさんに訴えてくれていることを知ってしまったから。
それはつまり、あの噂のせいで私が悲しんでいるとアニーにはバレているのですね。心配かけないようと黙っていたのに、やはりアニーにはお見通しのようでした。
「ここに来てからの間、お嬢様がどれだけ自分を犠牲にして頑張ってこられたか知らないとは言わせません!あまりの激務に何度お止めしようとしたか……それでもお嬢様は身を粉にして、この国の為あなたの為にとやってこられたのにーーーーお嬢様の気持ちを知りながらこんな残酷な結末を押し付けるなんて許せない!せめて、お嬢様を聖女の任から解放してから勝手に結婚すればいいじゃないですか?!女心をなんだと思っているんですかぁ?!」
「え?!お、女心って……?!いや、残酷とか、なんのことだかさっぱりーーーー」
「ですから問答無用です!!」
興奮しているのかアニーはジルさんの言葉など聞く耳を持たないとばかりに再びモップを振り下ろそうとしました。
アニーったら、私が悩んでいたことや気付かないフリをしていたことを全部代わりに言ってしまうんですからやはり困った侍女ですね。
しかし、これ以上それを許すわけにはいきません。
「アニー!今すぐにやめなさい!!」
私はできるだけ平静を装い、ふたりの前に姿を現しました。だって私が戸惑っているなんてわかったら、余計にアニーを悲しませてしまいます。
「お嬢様……!」
「アニー、いくら私の為にとはいえ度が過ぎています。ジルさんは国王……そんな彼に敵意を向けるなんて処刑されても仕方ないようなことをしたんですよ?」
「ですが、お嬢様……っ」
「いいから、下がりなさい!」
そして、しゅんと俯くアニーの前に立ってジルさんに頭を下げました。
「申し訳ありません、ジルさん。いいえ、ジーンルディ陛下。全ては私が侍女の管理が不十分なせいです。今後はこのようなことがないようにしっかりと言い聞かせますので今回だけはお許し願えませんか」
「えっ、いや、それはいいけど……なんでいまさら陛下呼びとか」
「それと、アニーが言っていたことはちょうど私もお話しようと思っていました。そろそろお約束の3年です。場合によっては契約の延長も考えましたがこの国の復興はほぼ終わっておりますし、陛下の個人的な要件には私はいらないですよね?申し訳ありませんが……陛下への祝福は占星術師様にお願いしてください。ーーーー私は、心から祝福できないかもしれませんので」
「ちょ、ちょっと待ってロティーナ……?!」
ジルさんが焦ったように私に手を伸ばしてきました。やはりお相手に聖女の祝福を求められていたのでしょう。でも、アニーの訴えを聞いて私は自分の心がわかってしまったのです。
やっぱり、ジルさんが誰かと結婚する姿を見るのは辛いとーーーー。
ジルさんはきっと私の気持ちを知らないと思います。だってあの姫様に夢中のようなんですもの。しかも婚約どころかもうウェディングドレスのデザインまで決めているとか……。せめて使用人たちから聞くのではなくジルさん本人から聞きたかったのですが、こんな大切なことを話してくれないなんて……それってもはや聖女は必要ないということでしょう?
「私は、聖女のお役目を終えて国へ帰ります」
だからせめて、私からあなたの元を離れたいと思ったんです。
ジルさんと今後の話をしようと彼の執務室にやってきたらーーーー今まさにアニーがジルさんにモップを振り下ろして戦いを挑んでいました。
扉が開けっ放しになってるから何かあったのかと思ったけれど、まさか私の侍女が国王に襲いかかるなんて不敬どころの話ではありません。急いで止めなくては!
「ア……」
「わぁ~っ!?ちょっ、たんま!」
「問答無用!」
ガシィッ!と激しくぶつかる音が響きました。ジルさんは近くにあった分厚い本でアニーのモップを受け止めたようです。早く止めなくてはいけないのに、私はとっさに声が出ませんでした。
だって、アニーは泣いていたんです。
「よくも!お嬢様を!悲しませましたね?!」
ブンブンとモップを振り回しながら、大粒の涙を溢れされて泣いていたのです。……普段から思ったことをすぐ口にする困った癖がある私の侍女。私についてくるために母国を離れ、この3年間一緒にラスドレード国のために奮闘してくれた大切な侍女が……私のために泣いてジルさんに訴えてくれていることを知ってしまったから。
それはつまり、あの噂のせいで私が悲しんでいるとアニーにはバレているのですね。心配かけないようと黙っていたのに、やはりアニーにはお見通しのようでした。
「ここに来てからの間、お嬢様がどれだけ自分を犠牲にして頑張ってこられたか知らないとは言わせません!あまりの激務に何度お止めしようとしたか……それでもお嬢様は身を粉にして、この国の為あなたの為にとやってこられたのにーーーーお嬢様の気持ちを知りながらこんな残酷な結末を押し付けるなんて許せない!せめて、お嬢様を聖女の任から解放してから勝手に結婚すればいいじゃないですか?!女心をなんだと思っているんですかぁ?!」
「え?!お、女心って……?!いや、残酷とか、なんのことだかさっぱりーーーー」
「ですから問答無用です!!」
興奮しているのかアニーはジルさんの言葉など聞く耳を持たないとばかりに再びモップを振り下ろそうとしました。
アニーったら、私が悩んでいたことや気付かないフリをしていたことを全部代わりに言ってしまうんですからやはり困った侍女ですね。
しかし、これ以上それを許すわけにはいきません。
「アニー!今すぐにやめなさい!!」
私はできるだけ平静を装い、ふたりの前に姿を現しました。だって私が戸惑っているなんてわかったら、余計にアニーを悲しませてしまいます。
「お嬢様……!」
「アニー、いくら私の為にとはいえ度が過ぎています。ジルさんは国王……そんな彼に敵意を向けるなんて処刑されても仕方ないようなことをしたんですよ?」
「ですが、お嬢様……っ」
「いいから、下がりなさい!」
そして、しゅんと俯くアニーの前に立ってジルさんに頭を下げました。
「申し訳ありません、ジルさん。いいえ、ジーンルディ陛下。全ては私が侍女の管理が不十分なせいです。今後はこのようなことがないようにしっかりと言い聞かせますので今回だけはお許し願えませんか」
「えっ、いや、それはいいけど……なんでいまさら陛下呼びとか」
「それと、アニーが言っていたことはちょうど私もお話しようと思っていました。そろそろお約束の3年です。場合によっては契約の延長も考えましたがこの国の復興はほぼ終わっておりますし、陛下の個人的な要件には私はいらないですよね?申し訳ありませんが……陛下への祝福は占星術師様にお願いしてください。ーーーー私は、心から祝福できないかもしれませんので」
「ちょ、ちょっと待ってロティーナ……?!」
ジルさんが焦ったように私に手を伸ばしてきました。やはりお相手に聖女の祝福を求められていたのでしょう。でも、アニーの訴えを聞いて私は自分の心がわかってしまったのです。
やっぱり、ジルさんが誰かと結婚する姿を見るのは辛いとーーーー。
ジルさんはきっと私の気持ちを知らないと思います。だってあの姫様に夢中のようなんですもの。しかも婚約どころかもうウェディングドレスのデザインまで決めているとか……。せめて使用人たちから聞くのではなくジルさん本人から聞きたかったのですが、こんな大切なことを話してくれないなんて……それってもはや聖女は必要ないということでしょう?
「私は、聖女のお役目を終えて国へ帰ります」
だからせめて、私からあなたの元を離れたいと思ったんです。
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