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9 動き出すなら今しかないじゃないですか
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あれから数日。トーマスに泣きついた手前、しばらくは部屋で大人しくしていた私ですがその間もあの失礼な銀髪男の事を考えていました。
あの洞察力と威圧感……ふざけた態度を見せていてもやはりスパイとは恐ろしい存在なのだと改めて感じたのもあります。
確かにあの銀髪の男は「エドガーの浮気調査」と「婚約破棄」を止めるように言ってきました。ですが正当な理由も教えてくれずにただ“女には無理だから”止めろなんて言われてもやはり納得がいきません。
あと少し……エドガーとアミィ嬢が言い逃れ出来ないような決定的な証拠さえあれば、エドガーとは婚約破棄が出来るしアミィ嬢にだってそれなりのダメージを与えられるはずなのに。
後から思えば私も意地になっていたのかもしれません。今まで何も出来ずにいたのが悔しかったからこそ復讐できるチャンスを掴んだ気がしていたのです。
どのみち調査はすでに頼んだ後ですし、報告書と証拠さえ受け取れれば……!と。だからこそ、屋敷でおとなしくしていられたのですから。
ですが、私の思惑などすでにあのスパイの手の上で転がされていたのだと思い知りました。
内密に調査を頼んでいた者から「もう手を貸す事は出来ない」と連絡があったのです。
理由などの詳しい事を何ひとつ教えてもらえなかったどころかそのまま音信不通となってしまい、揃えて貰っていたはずの証拠もこの手に掴むことはできませんでした。
「そんな……」
何でこんなことになったのかはなんとなく察しました。私が忠告を守らないとわかっていて、たぶんあのスパイが裏から手を回したのでしょう。
あのスパイがにんまり顔で「ここまでされたら普通は諦めるでしょ?」と言っているような気がしました。
ーーーーこんなことで諦めると思ったら大間違いです!なによりも、このままエドガーと結婚するのだけは絶対に嫌ですもの!
私はドレスを脱ぎ捨て動きやすい男物の服に着替えるとロイのウィッグを被りました。こんなところもあの銀髪男からしたら「普通の令嬢なら侍女に着替えさせてもらうもんじゃないの?」と言われそうですけれど、今更ですわ。
「確かに、普通の令嬢ならこんなことをしようとなんてしないわね……」
ですが、もう大人しくなんてしていられません。そっちが邪魔をしてくるのなら動くまでのこと。あんな怪しい男の忠告など素直に聞いていられませんもの。
ーーーー こうなったら、自分の手で証拠を掴むまでの事。エドガーとアミィ嬢の密会の場を暴いてやります!!
こうして意気込んだ私は外が暗くなるのを待ち、トーマスたちに見つからないように屋敷を出るため、そっと部屋の外の様子を伺おうとしたのですが……。
「……お嬢様、もしかしなくてもお出かけなさるおつもりですか?」
扉をそっと開けた隙間から、にーっこりと笑顔のアニーが顔を覗かせてきたのです。しかもなぜか、まるでお忍びで出かける準備をすっかり済ませたかのような格好でです。
「ア、アニー……。いつの間にそこに……」
「まさかとは思いますけれど、このアニーを置いて行こうだなんてお考えではないですよね?もしそうなら大声を出して今すぐ執事長様をお呼びしなくてはーーーー」
「ま、待ってアニー!」
その後、なんとかアニーを説得しようとしたのですが、奮闘するだけ無駄だったのでした……。
あの洞察力と威圧感……ふざけた態度を見せていてもやはりスパイとは恐ろしい存在なのだと改めて感じたのもあります。
確かにあの銀髪の男は「エドガーの浮気調査」と「婚約破棄」を止めるように言ってきました。ですが正当な理由も教えてくれずにただ“女には無理だから”止めろなんて言われてもやはり納得がいきません。
あと少し……エドガーとアミィ嬢が言い逃れ出来ないような決定的な証拠さえあれば、エドガーとは婚約破棄が出来るしアミィ嬢にだってそれなりのダメージを与えられるはずなのに。
後から思えば私も意地になっていたのかもしれません。今まで何も出来ずにいたのが悔しかったからこそ復讐できるチャンスを掴んだ気がしていたのです。
どのみち調査はすでに頼んだ後ですし、報告書と証拠さえ受け取れれば……!と。だからこそ、屋敷でおとなしくしていられたのですから。
ですが、私の思惑などすでにあのスパイの手の上で転がされていたのだと思い知りました。
内密に調査を頼んでいた者から「もう手を貸す事は出来ない」と連絡があったのです。
理由などの詳しい事を何ひとつ教えてもらえなかったどころかそのまま音信不通となってしまい、揃えて貰っていたはずの証拠もこの手に掴むことはできませんでした。
「そんな……」
何でこんなことになったのかはなんとなく察しました。私が忠告を守らないとわかっていて、たぶんあのスパイが裏から手を回したのでしょう。
あのスパイがにんまり顔で「ここまでされたら普通は諦めるでしょ?」と言っているような気がしました。
ーーーーこんなことで諦めると思ったら大間違いです!なによりも、このままエドガーと結婚するのだけは絶対に嫌ですもの!
私はドレスを脱ぎ捨て動きやすい男物の服に着替えるとロイのウィッグを被りました。こんなところもあの銀髪男からしたら「普通の令嬢なら侍女に着替えさせてもらうもんじゃないの?」と言われそうですけれど、今更ですわ。
「確かに、普通の令嬢ならこんなことをしようとなんてしないわね……」
ですが、もう大人しくなんてしていられません。そっちが邪魔をしてくるのなら動くまでのこと。あんな怪しい男の忠告など素直に聞いていられませんもの。
ーーーー こうなったら、自分の手で証拠を掴むまでの事。エドガーとアミィ嬢の密会の場を暴いてやります!!
こうして意気込んだ私は外が暗くなるのを待ち、トーマスたちに見つからないように屋敷を出るため、そっと部屋の外の様子を伺おうとしたのですが……。
「……お嬢様、もしかしなくてもお出かけなさるおつもりですか?」
扉をそっと開けた隙間から、にーっこりと笑顔のアニーが顔を覗かせてきたのです。しかもなぜか、まるでお忍びで出かける準備をすっかり済ませたかのような格好でです。
「ア、アニー……。いつの間にそこに……」
「まさかとは思いますけれど、このアニーを置いて行こうだなんてお考えではないですよね?もしそうなら大声を出して今すぐ執事長様をお呼びしなくてはーーーー」
「ま、待ってアニー!」
その後、なんとかアニーを説得しようとしたのですが、奮闘するだけ無駄だったのでした……。
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