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その5
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あれから数ヶ月後……。
私とヴァーマナはアレックス様主催のパーティーに招待された。きっとこの場で私と婚約破棄してヴァーマナを新たな婚約者とすることを宣言して下さるのだろうと思ったらホッとした。全然連絡をくださらないからヤキモキしていたのだ。
「やっとね……」
実はすぐにでも婚約破棄の書類でも送ってくださるかもと期待していたのに全く音沙汰無しだっものでイライラしっぱなしだったのだ。でも、冷静になって考えればそんなに簡単な問題ではないとはわかっている。きっとアレックス様も知恵を絞って下さったのだろう(と信じたい)。だが、あれほど義姉として私を頼って欲しいと言ったのに全然頼ってくれないことに不満を感じてしまうのだ。この人に可愛い妹を任せて大丈夫なのだろうか、本当にヴァーマナを大切にしてくれるのだろうか。私との婚約破棄もそれなりの理由が無ければヴァーマナが責められる可能性だってある。なぜちゃんと私と口裏を合わせる為の打ち合わせをしてくれないのか……。
なんだか不信感が募るが、勢い良く頭を振ってその不信感を外へ追いやる事にした。
だって、なによりも優先するべきはヴァーマナの気持ちなのだ。私の苛立ちなど、不安な状況で揺れ動くヴァーマナの気持ちに比べたら些細なことである。
実はあの日、アレックス様と例の話を終えて帰宅するとヴァーマナが玄関で仁王立ちで待っていて「お姉様、まさかアレックス様とお会いになっていたんですか?!」と詰め寄られてしまった。内緒で出掛けたのに、なぜバレてしまったのかしら……と慌てたが、それだけヴァーマナがアレックス様の行動に敏感な証拠だろうと逆に納得してしまう。ヴァーマナはきっと、私がヴァーマナとアレックス様の関係に気付いていることを知らないはずだ。もしも私が全てを知っているとわかったら、ヴァーマナの事だからそれを恥だと思って身を引くに決まっている。ヴァーマナはそういう子なのだ。
だから、私は何も知らないフリをした。私が妹の気持ちを蔑ろにするとんでもなく酷い姉であることがヴァーマナの幸せに繋がるはずだから。
「アレックス様は婚約者様ですもの。婚約者同士が逢瀬を重ねることになんの問題があるの?」
「お姉様……だって、そんな……」
私のハッキリとした物言いにヴァーマナが戸惑いの表情を浮かべる。いつもならボーッとしながらぼんやりとした返事しかしない私の言葉にヴァーマナはショックを隠し切れなかったようだ。
「ご、ごめんなさい……。つい……(お姉様が心配で)」
しょんぼりとするヴァーマナの姿にズキッと心が痛む。あぁ……しょんぼりしてるヴァーマナも可愛いわ。って、そうじゃない!私の言葉がヴァーマナを傷付けてしまったのね……!ごめんね、ヴァーマナ、今だけだから!
「いいのよ。ヴァーマナも婚約者が出来ればわかるわ(もうすぐアレックス様と思いっきり逢瀬を重ねられるからごめんね!)」
そんな会話をしたその夜、ヴァーマナに申し訳なさすぎてベッドで涙したのも今ではいい思い出だ。……ヴァーマナに嫌われるのは辛いが、今は我慢するしかないのだから……!
きっと、このパーティーの後からはアレックス様がヴァーマナを幸せにしてくださる。その為にも、私は責められるべき酷い悪女でいなければ……。
それにしても、アレックス様はどんな理由で私を断罪する気なのかしら?
私とヴァーマナはアレックス様主催のパーティーに招待された。きっとこの場で私と婚約破棄してヴァーマナを新たな婚約者とすることを宣言して下さるのだろうと思ったらホッとした。全然連絡をくださらないからヤキモキしていたのだ。
「やっとね……」
実はすぐにでも婚約破棄の書類でも送ってくださるかもと期待していたのに全く音沙汰無しだっものでイライラしっぱなしだったのだ。でも、冷静になって考えればそんなに簡単な問題ではないとはわかっている。きっとアレックス様も知恵を絞って下さったのだろう(と信じたい)。だが、あれほど義姉として私を頼って欲しいと言ったのに全然頼ってくれないことに不満を感じてしまうのだ。この人に可愛い妹を任せて大丈夫なのだろうか、本当にヴァーマナを大切にしてくれるのだろうか。私との婚約破棄もそれなりの理由が無ければヴァーマナが責められる可能性だってある。なぜちゃんと私と口裏を合わせる為の打ち合わせをしてくれないのか……。
なんだか不信感が募るが、勢い良く頭を振ってその不信感を外へ追いやる事にした。
だって、なによりも優先するべきはヴァーマナの気持ちなのだ。私の苛立ちなど、不安な状況で揺れ動くヴァーマナの気持ちに比べたら些細なことである。
実はあの日、アレックス様と例の話を終えて帰宅するとヴァーマナが玄関で仁王立ちで待っていて「お姉様、まさかアレックス様とお会いになっていたんですか?!」と詰め寄られてしまった。内緒で出掛けたのに、なぜバレてしまったのかしら……と慌てたが、それだけヴァーマナがアレックス様の行動に敏感な証拠だろうと逆に納得してしまう。ヴァーマナはきっと、私がヴァーマナとアレックス様の関係に気付いていることを知らないはずだ。もしも私が全てを知っているとわかったら、ヴァーマナの事だからそれを恥だと思って身を引くに決まっている。ヴァーマナはそういう子なのだ。
だから、私は何も知らないフリをした。私が妹の気持ちを蔑ろにするとんでもなく酷い姉であることがヴァーマナの幸せに繋がるはずだから。
「アレックス様は婚約者様ですもの。婚約者同士が逢瀬を重ねることになんの問題があるの?」
「お姉様……だって、そんな……」
私のハッキリとした物言いにヴァーマナが戸惑いの表情を浮かべる。いつもならボーッとしながらぼんやりとした返事しかしない私の言葉にヴァーマナはショックを隠し切れなかったようだ。
「ご、ごめんなさい……。つい……(お姉様が心配で)」
しょんぼりとするヴァーマナの姿にズキッと心が痛む。あぁ……しょんぼりしてるヴァーマナも可愛いわ。って、そうじゃない!私の言葉がヴァーマナを傷付けてしまったのね……!ごめんね、ヴァーマナ、今だけだから!
「いいのよ。ヴァーマナも婚約者が出来ればわかるわ(もうすぐアレックス様と思いっきり逢瀬を重ねられるからごめんね!)」
そんな会話をしたその夜、ヴァーマナに申し訳なさすぎてベッドで涙したのも今ではいい思い出だ。……ヴァーマナに嫌われるのは辛いが、今は我慢するしかないのだから……!
きっと、このパーティーの後からはアレックス様がヴァーマナを幸せにしてくださる。その為にも、私は責められるべき酷い悪女でいなければ……。
それにしても、アレックス様はどんな理由で私を断罪する気なのかしら?
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