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第4章 呪われた王子の章

〈51〉裏切りのきっかけ(異国の王太子視点)

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    その日、聖女を襲った罪という名目でアヴァロン王太子の死刑が決まった。

    異国の民が待ち望んでいた聖女は依然行方不明のままであり、その原因を作ったアヴァロンに全ての怒りが向いたのは言うまでもないだろう。

    町の広場に磔にされたアヴァロンは身をよじり醜い弁明をしたが耳を貸す者はおらず、あまりに耳障りだとその口に石を詰められ上から猿轡をされていた。




    くそっ!くそぉっ!!なぜ僕がこんなに目に遭わなくてはいけないんだ?!誰のせいでこうなった?!

    まずはロティーナだ!あの女が素直に僕の物になっていればこんな騒ぎは起こらなかった!そうだ、あの女が1番悪い!!

    次はジーンルディだ!あの出来損ないが逃げ出したから余計に責められた!なぜ僕が責められなくてはいけないんだ?!そんなの、逃げ出したあいつが悪いんじゃないか!

    そしてなによりもあのクソ女……ルーナだ!!

    たかが愛妾のくせに!不吉な灰眼のくせに!絶対に殺してやる。あの爛れた腹を切り裂いて内臓を引きずり出してやる!!

    1日中磔にされ、国民からは石を投げられ罵倒された。王太子である僕がだ!

    この僕を死刑にするだと?そんなことさせるものか!

    もうすぐ日が暮れる。そうすれば妹たちが僕を助けにくるはずだ。そして奴等に復讐し、父上の目を覚まさせてやらなければ!

    まずはルーナを殺そう。ロティーナだって女ひとりでそんな遠くには逃げられないはずだからすぐに捕まえてやる。そして嬲りものにしてやるんだ。そして身も心も僕に捧げさせ、ジーンルディを殺させよう。

    3人を自分の足元に跪かせる妄想をしてやっと心を落ち着かせることができた。

    そして辺りが暗くなった頃、人の気配が近づいてきたのがわかった。

「お兄様……」

    あぁ、やっと妹たちが来たか。いつもは落ち着きの無いどうしようもない妹たちだが、今だけは心強いと思った。この妹たちは僕を慕っているからなんでも言うことを聞くはずだ。

    まずは猿轡を外してもらおうと顔を上げると、いつもはうるさいくらいの妹たちがまるで葬式かのように静かに青ざめた顔をして並んでいた。その手には鈍く光るナイフを持って。

「お兄様、ごめんなさい」

「でもしょうがないと思うの」

「だって占星術師が、そうしないとわたくしたちが不幸になるって言うんだもの」

    目の前で起こっている出来事が信じられなくて目を見開いた。可愛がってやっていた妹たちが口を揃えてナイフを振り上げたのだ。

「「「全部、聖女を傷付けたお兄様が悪いのよ」」」と。








『聖女を傷付けたことにより運命の流れが変わってしまった。元凶である王太子がその罪を償わなければ王家に不幸が舞い降りるだろう。このままではまずは王女の誰かが王太子のせいで不幸になる』


    アヴァロンは知らなかったのだ。
    自分が磔になった後、占星術師がそんな内容のお告げをしたことを……。








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