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第4章 呪われた王子の章
〈44〉親子の会話
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「はじめまして……ふぇ?!」
「まぁぁぁぁ!なんて可愛らしいお嬢さんなの!」
ジルさんの過去の話を聞きながら抜け道を通って無事に離れの屋敷についたのですが……挨拶をして顔をあげた瞬間、同時にぷにっと柔らかいなにかを顔を押し付けられ身動きをとれなくされてしまいました。い、息が苦しいです……!
「ちょっ……母上!ロティーナを離してください!」
「だって、可愛らしいんですもの!とってもとっても可愛らしいんですもの!」
「あまり興奮するとまた倒れますよ!」
「あらあら、それはいけないわ。せっかく可愛い息子がこんなに可愛いお嬢さんを連れてきてくれたのに、倒れてはいられないわ」
「ぷはっ」
やっと顔を覆う柔らかいふたつの塊から解放されました。あまりの弾力に息が出来ませんでしたよ。
「あ、あの……」
「あらあら、ごめんなさい。嬉しくてつい」
そう言って私を解放してくれた人が、ジルさんそっくりのにんまり顔を見せたのでした。
長くてサラサラの綺麗な銀髪に、灰色の瞳。なによりこのにんまり顔。間違いなくこの人はジルさんのお母様だと確信したのです!
「ジルさんのお母様ですよね?あの、ご病気だとお聞きしましたけどお加減は……」
「あらあら、ありがとう。でも今日は調子がいいのよ。やっぱり可愛い我が子がこんなに可愛らしいお嫁さんを連れて来てくれたからだわ」
「お、お嫁さん?いえ、私はーーーー」
「母上!この子は聖女様だから!ほら桃色の髪!よく見て!」
「……」
ジルさんがなぜか顔を赤くしながら慌てて説明をすると、ジルさんのお母様はじーっと私を見て「はっ!」と驚きの表情を見せました。
そして「本当だわ!聖女様だわ!」とワタワタし出したのです。
なんか、ちょっと……聞いてたイメージと違いますが。お元気そうでなによりです?
***
どうしましょう。ジルさんのお母様がジルさんにお説教されています……。
「前から言ってますよね?調子がいいからって無理をするとすぐ悪化するんだからおとなしくしてるようにって」
「だって、ジーンルディが帰ってきたって使用人さんたちが噂していたから。てっきりお嫁さんを連れてきてくれたんだと思ったんだもの」
「まったく……オレが嫁を連れてこれる立場かどうかなんて、母上が1番よく知っているでしょう?」
「あら、人生なんてどこでどう変わるかわからないのよ?例えば聖女様をお嫁さ「今はそれはいいですから!」えー……」
ジルさんのお叱りを受けてぷくっと頬を膨らませるジルさんのお母様。どうしましょう、止めた方がいいのでしょうか。
「大丈夫ですよ、聖女様。自分も昔から知っていますがあの方はいつもこんな感じです。まぁ、あの国王たちの前では毅然としておられるので他の者は知らないと思いますが、ジルに会えて喜んでいるんですよ。ちょっとはしゃいでいるようですけどね」
「そうなんですね……」
ターイズさんがそう教えてくれていると、ジルさんが私の方へやって来ました。
「ロティーナ、改めて紹介するよ。こちらがオレの母上だ」
「先ほどは失礼致しました、聖女様。わたしはジーンルディの母であるルーナと申します。お目にかかれて光栄でございますわ」
ジルさんのお母様は元踊り子さんだと伺っていましたが、その美しい所作はあの王女たちよりもよっぽど気品があるように見えます。国王から酷い扱いを受けて息子すらも“呪われた王子”と呼ばれているのに、この方の心はあの王族の誰よりも誇り高くあるように見えました。
「ロティーナと申します。こちらこそお会い出来て嬉しいです、ルーナ様」
「あああ……やっぱり可愛らしいわ!抱き締めたいわ!」
「母上、手をわきわきしない!」
両方の手のひらを広げて指を器用に動かすルーナ様から私を隠すように立ち、ジルさんが怒っているのですが……ターイズさん曰く「この親子はだいたいこんな感じ」だそうです。
「まぁぁぁぁ!なんて可愛らしいお嬢さんなの!」
ジルさんの過去の話を聞きながら抜け道を通って無事に離れの屋敷についたのですが……挨拶をして顔をあげた瞬間、同時にぷにっと柔らかいなにかを顔を押し付けられ身動きをとれなくされてしまいました。い、息が苦しいです……!
「ちょっ……母上!ロティーナを離してください!」
「だって、可愛らしいんですもの!とってもとっても可愛らしいんですもの!」
「あまり興奮するとまた倒れますよ!」
「あらあら、それはいけないわ。せっかく可愛い息子がこんなに可愛いお嬢さんを連れてきてくれたのに、倒れてはいられないわ」
「ぷはっ」
やっと顔を覆う柔らかいふたつの塊から解放されました。あまりの弾力に息が出来ませんでしたよ。
「あ、あの……」
「あらあら、ごめんなさい。嬉しくてつい」
そう言って私を解放してくれた人が、ジルさんそっくりのにんまり顔を見せたのでした。
長くてサラサラの綺麗な銀髪に、灰色の瞳。なによりこのにんまり顔。間違いなくこの人はジルさんのお母様だと確信したのです!
「ジルさんのお母様ですよね?あの、ご病気だとお聞きしましたけどお加減は……」
「あらあら、ありがとう。でも今日は調子がいいのよ。やっぱり可愛い我が子がこんなに可愛らしいお嫁さんを連れて来てくれたからだわ」
「お、お嫁さん?いえ、私はーーーー」
「母上!この子は聖女様だから!ほら桃色の髪!よく見て!」
「……」
ジルさんがなぜか顔を赤くしながら慌てて説明をすると、ジルさんのお母様はじーっと私を見て「はっ!」と驚きの表情を見せました。
そして「本当だわ!聖女様だわ!」とワタワタし出したのです。
なんか、ちょっと……聞いてたイメージと違いますが。お元気そうでなによりです?
***
どうしましょう。ジルさんのお母様がジルさんにお説教されています……。
「前から言ってますよね?調子がいいからって無理をするとすぐ悪化するんだからおとなしくしてるようにって」
「だって、ジーンルディが帰ってきたって使用人さんたちが噂していたから。てっきりお嫁さんを連れてきてくれたんだと思ったんだもの」
「まったく……オレが嫁を連れてこれる立場かどうかなんて、母上が1番よく知っているでしょう?」
「あら、人生なんてどこでどう変わるかわからないのよ?例えば聖女様をお嫁さ「今はそれはいいですから!」えー……」
ジルさんのお叱りを受けてぷくっと頬を膨らませるジルさんのお母様。どうしましょう、止めた方がいいのでしょうか。
「大丈夫ですよ、聖女様。自分も昔から知っていますがあの方はいつもこんな感じです。まぁ、あの国王たちの前では毅然としておられるので他の者は知らないと思いますが、ジルに会えて喜んでいるんですよ。ちょっとはしゃいでいるようですけどね」
「そうなんですね……」
ターイズさんがそう教えてくれていると、ジルさんが私の方へやって来ました。
「ロティーナ、改めて紹介するよ。こちらがオレの母上だ」
「先ほどは失礼致しました、聖女様。わたしはジーンルディの母であるルーナと申します。お目にかかれて光栄でございますわ」
ジルさんのお母様は元踊り子さんだと伺っていましたが、その美しい所作はあの王女たちよりもよっぽど気品があるように見えます。国王から酷い扱いを受けて息子すらも“呪われた王子”と呼ばれているのに、この方の心はあの王族の誰よりも誇り高くあるように見えました。
「ロティーナと申します。こちらこそお会い出来て嬉しいです、ルーナ様」
「あああ……やっぱり可愛らしいわ!抱き締めたいわ!」
「母上、手をわきわきしない!」
両方の手のひらを広げて指を器用に動かすルーナ様から私を隠すように立ち、ジルさんが怒っているのですが……ターイズさん曰く「この親子はだいたいこんな感じ」だそうです。
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