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第4章 呪われた王子の章

〈41〉男の矜持(異国の王太子視点)

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「ねぇ、お兄様。あの聖女とやらはどんな様子でして?」

「あらそんなの、王太子であるお兄様に取り入ろうとすり寄ってきたのでしょう?」

「あのみっともない桃毛を見まして?それにあんな短い髪で堂々と人前に出てこれる図太い神経の持ち主ですもの!王太子に近付けるチャンスを逃すまいと必死になるに決まってますわ!」

    ゲラゲラと笑い出す妹たちの姿にため息が出る。側室が産んだとはいえ可愛い妹たちだが、どうにも王女としての気品がかけている気がした。淑女教育はしてきたはずなのだがな。と、うんざりもする。

「人の顔を見るなりやかましいな。もう少し静かに出来ないのか」

「お兄様ったらなにをピリピリしてますの?やっと聖女が手に入ったんですから、もっと喜ばなくちゃ!」

「そうですわ、これでやっとあの出来損ないを始末出来るんですもの。これでラスドレード国は安泰ですわ!」

「あぁ、どんな方法がいいかしら?どうせ聖女が殺してくれるのだからわたくしたちは高みの見物といきましょう!」

「あんなみっともない桃毛でもわたくしたちの役に立てるんだから喜んでいるでしょうね!」

「それでお兄様、もちろん聖女はあの出来損ないをすぐ殺してくれるのでしょう?それとも殺して欲しければすぐにお兄様と結婚させろとか騒ぎました?」

「どうせ聖女のお勤め期間が終われば捨てられるのに、みっともない女は必死でしょうね」

    次々と口早に捲し立ててくる妹たちに再びため息が出そうになるのを我慢した。

    さっきから「みっともない桃毛」と聖女を馬鹿にしているが、この妹たちは“聖女”の意味を本当に理解しているのだろうか。確かに今は・・まだ不気味な桃毛かもしれないが、占星術師が「神聖な髪」と言った以上、これからはラスドレード国ではあの桃色の髪は平民たちの羨望の的になるだろう。この国での占星術師の言葉は絶対だ。その「神聖な髪」を持つ聖女を馬鹿にしたなんて誰かに聞かれたらそれこそ王族であれ罰せらてしまうだろうに。

「……残念だが、聖女は僕に興味がないそうだ」

「「「?!」」」

    驚きのあまり言葉を失った妹たちがやっと静かになった。困惑の表情が3つ並ぶが僕が聖女にフラれたのがそれほどショックだったらしい。

    だが、そうだな。

「僕にあんな態度をとった女は初めてだ。その行為がどれほど愚かな事だったかは、思い知らさせてやらねばなるまい。それに傲慢だからこそ心を折ってやるのも楽しそうだ。

    妹たちよ、宰相に伝えてくれないか。明日、出来損ないの処刑と共に聖女と王太子の婚約式を行おうと」

「まぁ、お兄様!なにをなさる気なの?」

    さっき見た聖女の姿が脳裏に浮かぶ。

    力強い瞳と余裕にも見える微笑み。髪の色や長さなど関係ない、まさしく聖女そのものの姿に一瞬だが僕が見惚れてしまったのだ。だからこそ王族に取り込んでやろうとしたのに、まるで僕など眼中にないようなあんな態度など許されるはずがないじゃないか。

    それに聖女を妻に娶れば国民からの支持も上がり、ラスドレード国はさらに発展を遂げるだろう。

    なによりも、僕にあのような態度をとったことを後悔させて泣かせてやりたいと思ったのだ。

「なぁに、聖女として僕に娶って下さいと言いたくなるようにしてやるだけさ。聖女の願いを叶えてやるのは王太子の役目だろう?」

    泣いて謝って、僕の許しを請うためにあの出来損ないを殺させてくれと嘆願する聖女の姿が目に浮かんだ。

    残念だな、聖女よ。この僕にあんな態度をとったせいで自分の運命が変わってしまったのだ。僕に興味を持たずに、出来損ないなんかに会いたいなどと言った事を後悔させてやろうじゃないか。

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